おすすめ読書・書評・感想・ブックレビューブログ

年間100冊前後の読書を楽しんでいます。推理小説・恋愛小説・歴史小説・ビジネス書・ラノベなんでもあり。

『島はぼくらと』辻村深月

「――そこは、あなたの故郷じゃないのにって、言われたよ」 本を読んだにも関わらず、ブログを書けない日々が続いています。 今回ご紹介するのは辻村深月『島はぼくらと』。 三月に読んだ『ぼくのメジャースプーン』以来の辻村作品ですが、これまでに当ブログ…

『しょうがの味は熱い』綿矢りさ

同棲は結婚に続いていないみたいだ。一緒に生活して、お互いの素顔を見せることで家族同然になり、その安らぎをもっと本格的にしたくて結婚するものだと思っていたけれど、家族同然になったからといって、家族になれるわけではないのだ。 しばらくぶりの更新…

『青空の卵』坂木司

鳥井を一人にすることは、どうしてもできないのだ。だって鳥井には、僕しかいないのだから。 坂木司『青空の卵』を読みました。 坂木司といえば『和菓子のアン』が有名で、北村薫や米澤穂信にも並ぶ”日常の謎”を題材としたミステリ作家としても知られていま…

『ラメルノエリキサ』渡辺優

わたしにとって、復讐とはどこまでも自分だけのために行うものだ。自分がすっきりするためのもの。すっきりするっていうのは、人が生きていく上でとても大切で重要な事だと私は思う。 渡辺優『ラメルノエリキサ』を読みました。 ご存じでしょうか? 第28回小…

『竜宮ホテル』村山早紀

その娘の左の目は、魔法の瞳であり、異界への鍵だった。 その娘はただの村娘であったのだけれど、年を経た妖精をその手ですくったことから、左の目に魔法の祝福をうけた。 その瞳は、この世のものならぬものを見ることができ、その存在を知ることができ、そ…

『田舎の紳士服店のモデルの妻』宮下奈都

何の変哲もないこんな町は至るところにあって、そこには家も部屋も数えきれないほどあり、そこで暮らす家族も掃いて捨てるほどある。どんなに自分が特別だと思いたくなって無理がある。私たちが大多数なのだ。そう思ったら、腑に落ちた。じたばたしてあたり…

『妖精作戦』笹本祐一

「問題はいかに騒ぎを起こさずにあれをかっぱらうか、だ」 笹本祐一『妖精作戦』を読みました。 1984年の発売ながら、現在でも様々なキュレーションサイト等で「絶対に読むべきライトノベル〇選!」的なまとめには時々混ざっている稀有な作品です。 そこに書…

『天と地と』海音寺潮五郎

「小僧! くらえ!」 という呶声は、斬りつけてから出た。 あまりの急なことに、信玄は立ち上がるすきがない。まして刀をぬくひまはない。床几にかけたまま、軍配うちわで受けた。うちわは薄金づくりだが、鋭い切っ先は半ばまで切り裂いた。 「しぶとい!」 …

『黄泉がえり』梶尾真治

「実は、死んだ主人が帰ってきまして。今朝がたですよ。気がついたら帰ってきてて」 っっっっっ!!!!! 思いがけず、二日続けての更新となってしまいました。 どれだけ怠けていたことか。 前置きはさておき、読んだのは梶尾真治『黄泉がえり』。 2003年に…

『小説立花宗重』童門冬二

「知ってのとおり、おれはおまえたちとともに徳川殿に歯向かい、石田三成に味方をした。しかし結果はわれわれの負け戦となった。にもかかわらず、徳川殿はかつての敵将に対し、昵懇な扱いをしてくれ、おれをお相伴衆に取り立てたのちに、たとえ一万石とはい…

『ツ、イ、ラ、ク』姫野カオルコ

「過去は削除していかないと。さっさと捨てなきゃ。荷物が多いのはごめんです、ってイアンもうたってたじゃない。済んだことは消えたこと」 姫野カオルコ『ツ、イ、ラ、ク』を読みました。 姫野カオルコさんはなんとなく著者名は見聞きした覚えがあるものの…

『ナラタージュ』島本理生

なにもいらないと思っていた。そんなふうに一緒にいるだけで手に余るほどだったのにいつの間にか欲望が現実の距離を追い越して、期待したり要求したりするようになっていた。どんどん贅沢になっていたんだな、と思った。 島本理生の『ナラタージュ』を読みま…

『疾風ガール』誉田哲也

「分かんないかな……力だよ、力。そうやってあんたは、あんたの才能は、周りを潰してるんだって話だよ。殺してるんだって話よ。分かるんだからあたしには。あんたにいっぺん殺されてっから」 しばらく本格推理小説ものが続いていましたが、ちょっと趣向を変え…

『七回死んだ男』西澤保彦

おわかりだろうか。つまり同じ日が何度も繰り返されるのである。しかしそれを認識しているのはどうやら僕独りで周囲の誰もそのことに気がついていない。 西澤保彦『七回死んだ男』を読みました。 彼の作品はだいぶ前に『人格転移の殺人』を読んで以来なので…

『殺戮にいたる病』我孫子武丸

稔が試験のために大学へ出かけたのが昼食を終えてからだったので、雅子は二時頃になって息子の部屋へ入った。 我孫子武丸『殺戮にいたる病』を読みました。 我孫子武丸といえば綾辻行人・歌野晶午・法月綸太郎に続く「講談社新本格ミステリブーム」の四男坊…

『出版禁止』長江俊和

一体なぜ、この作品が、“掲載禁止”となったのか? それは先ほど紹介したどのケースにも当てはまらない、極めて特異な理由からでした。 連日更新は実に久しぶりの事ではないでしょうか? 今回一日で一気読みしたのは長江俊和『出版禁止』でした。 こちらも「…

『星降り山荘の殺人』倉知淳

和夫は早速新しい仕事に出かける そこで本編の探偵役が登場する 探偵役が事件に介入するのは無論偶然であり 事件の犯人では有り得ない 『星降り山荘の殺人』を読みました。 初、倉知淳作品です。 これまでに何度か僕は新本格推理ブームの話に触れてきました…

『ぼくのメジャースプーン』辻村深月

口の中が、ものすごく、ものすごく、甘い。ぼくは、多分一生それを忘れない。 辻村深月『ぼくのメジャースプーン』を読みました。 辻村深月作品は『ツナグ』から始まり、『凍りのくじら』、2018本屋大賞を受賞した『かがみの孤城』、『青空と逃げる』、『ス…

『放蕩記』村山由佳

それはつまり、夏帆の側のこじれた感情が、どれだけ飽和状態に達しているかという証でもある。あの母を、どうしてもうまく赦すことができない。いったい母の何を、どこを、これほど疎ましく思うのかすらよくわからない。それでも、母と父は日に日に老いてい…

『春から夏、やがて冬』歌野晶午

私はわかった。二人は今も私の家族であり、私の一番大切なものなのだ。しかし、二人は今も私の家族でありながら、私のそばにはいない。この世のどこにも存在しない。 歌野晶午『春から夏、やがて冬』を読みました。 単行本の発行が2011年10月。 『葉桜の季節…

『無双の花』葉室麟

「立花の義とは、裏切らぬということでございます」 前回の更新からまだ5日しか経っていませんから、ここ数ヶ月の中ではだいぶ早い更新になりました。 ずっと「読書に対するモチベーションが落ち気味」と言い続けてきましたが、ここにきてようやく快方に向か…

『暗黒童話』乙一

「そこの御嬢さん、ごきげんはいかがですか?」 鴉は気取った聲で言いました。 「だれ?だれかいるの?」 「大丈夫、あやしいものではないのです。ただ、あなたとお話がしたいだけなのですよ」 乙一の『暗黒動画』を読みました。 乙一は僕にとって第一印象が…

『君の名残を』浅倉卓弥

――行けども悲しや行きやらぬ君の名残をいかにせん 新年初にして、久しぶりの記事です。 浅倉卓弥『君に名残を』。 映画『君の名は。』以後、一時タイムリープものに嵌まり、筒井康孝の『時をかける少女』や半村良『戦国自衛隊』、古典名作と言われる広瀬正『…

『小さな会社★儲けのルール』竹田洋一・栢野克己

なにはともあれエンドユーザーにできるだけ近づき、接近戦を目ざそう。 しばらくぶりですが、今回読んだのは『小さな会社★儲けのルール』。 以前読んだ『小さな会社の稼ぐ技術』と同様、栢野克己氏の著書であり、中小零細企業がとるべきランチェスター戦略を…

『炎の経営者』高杉良

しばしば「私は損をしてでもこの仕事はやります」というふうな表現をする人の話を聞くが、損を続けて事業が成り立つわけのものでなく、現在損をしていても、将来その欠損を補って大きく利潤をもたらす目標があってこそ事業が成り立つことは、いまさら私が言…

『雪月花黙示録』恩田陸

「行くわよ、フランシス」 「ええ、ジュヌヴィエーヴ」 「一回、こういうのやってみたかったのよね」 「月に代わっておしおきよ(二人でハモる)」 のっけから妙な会話を引用してしまいましたが。 映画公開でも話題になった『蜜蜂と遠雷』でお馴染み恩田陸さ…

『一瞬の光』白石一文

白石一文『一瞬の光』を読みました。 通常当ブログの最上部にはその本の特徴的・印象的な一文を引用するという形を取っているのですが、本書に関しては何度も何度も見返して探したのですが、結局どうしても該当しそうなところが見当たらないので省く事にしま…

『ネジ式ザゼツキー』島田荘司

「すっかり全部さ。大きな地震が起こり、ルネスのネジ式のクビがゆるゆると回って、マーカットさんの目の前で、実際にころりと落ちたということになる。そう考えるしかないんだ」 ものすごく久しぶりに島田荘司を読みました。 僕は元々講談社が打ち出した“新…

『ひらいて』綿矢りさ

無駄に生きてるんだ、もう無駄にしか生きられないんだ。 長い長い『新・平家物語』の読書を終えた後、本棚にたくさんある積読本から選んだのは綿矢りさの『ひらいて』でした。 綿矢りさで読んだ事があるのは2001年に当時17歳という最年少タイ記録で第38回文…

『新・平家物語』吉川英治

栄枯盛衰は天地のならい、栄々盛々はあり得ないこと。勝つは負ける日の初め、負けるはやがて勝つ日の初め―― ようやく終わりました。 長らくブログの更新も途絶えていましたが、その原因であった吉川英治『新・平家物語』を読み終える事ができました。 読み始…