「ただパンのために働くのはよせ。理想の光をかかげてやれ」
第5代国鉄総裁となった石田礼助が国鉄職員に向けていった言葉。
1963年頃の話ですからこれだけでも先進的な考えをしていたとわかります。
『粗にして野だが卑ではない』は三井物産に35年勤めた後、国鉄総裁となった石田礼助について書いた本です。
……誰?
まあそうですよね。
僕も知りませんでした。
簡単に言うと切れ者で強直で大胆で恐れ知らずな性格で、偉い人にもズバズバっと遠慮会釈なく意見を言う剛の者であったようです。いかにも昭和、という匂いがします。
「おれはマンキー(山猿)だよ。マンキーが勲章下げた姿見られるか。見られやせんよ」
と勲一等を固辞し、
「接待ゴルフはやめなさい」
と国鉄幹部を叱責。
「国鉄が今日の様な状態になったのは、諸君たちにも責任がある」
と政治家にすら強烈に批判します。
『官僚たちの夏』の佐橋滋もそうですが、こういった昭和な人物を取り上げるのが城山三郎は好きだったのかもしれません。
淡々と、新聞記事を書くように記していく文体は相変わらず。
非常にシンプルなだけにすっと頭に入っていってしまいます。
手に汗握り、ページをめくる手が止まらないといった作風ではありませんが、個人的には大好きな作家の一人です。