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年間100冊前後の読書を楽しんでいます。推理小説・恋愛小説・歴史小説・ビジネス書・ラノベなんでもあり。

『究極のV字回復シナリオ どこまで墜ちた企業を救えるのか』柴田昌治・大川康治

 

 

「変革拒絶体質を温存しているそれらの企業は、潜在的な「破綻懸念先企業」なのである」

 

『究極のV字回復シナリオ』はバス事業を主軸とする地方の名門企業を舞台にした再生物語。

いわば小説仕立て、ドラマ仕立てのビジネス書とでも言うべきか。

こういう本、結構好きです。

登場する企業はびっくりするぐらい腐敗したバス会社。

でも読んでいると実際に共感できてしまうんです。

こんな人も、こういう会社も。

あるあるネタで喜んでいる自分が嫌になるぐらい。

 

他人事としてほくそ笑むのではなく、仮に自分の会社に同じような例があるのだとすれば、しっかりと本に書かれているような改善策を講じて対策していかなければならないのだと思います。

例によって読書ノートはいっぱいになってしまいました。

以下、抜粋です。

 

「社員は、上から指示された仕事を指示されたとおりやることに慣れきっている」

 

「しかし、郷田は、そういうことに思いが至らない。「なんとかしないといけない」とは思うのだが、どうしていいか分からない。まわりの幹部社員たちとは主従の関係ができあがっているから、「どうしたいいか」と意見を求めることもできない。孤独なのだが、助けを求めることもできないのである」

 

コンサルタントを雇って意見をもらわないと何をやればいいか分からない経営者を、コンサルタントたちが揶揄して「シャブ中」と呼んでいる」

 

「会社全体によけいな仕事が増えて疲弊感が増していることは、担当している多くの人が感じている。モグラたたきのようなコンプライアンスの強化がかえって経営に対する不信を招く、という逆効果になっているケースが少なくないのである」

 

「長年同じ問題が問題点として掲げられているのが、もう1つの特徴だ。つまり、問題が認識されてはいても、いっこうに解決していく力が働いていないのだ。冷静に考えれば、まさに末期症状ともいいうる状態なのである」

 

優れた経営者(リーダーシップがあると思われている経営者)のタイプ

 

①自分一人で十分だと決め込んで、後の社員には自分の手足として命じることをひたすらやりぬかせることをよしとするタイプ。

 →社員は問題に真剣に向き合う当事者にはなっていない。育ってもいない。

  物事を深く考え抜くことをやめてしまう。

 

 市場が拡大傾向があるうちは良いが、縮小傾向に入るととたんに立ちいかなくなる。

                   ↓

               変化に対応できない

 

②まわりの力を上手に発揮させることで会社を成功に導いていくタイプ

 →社員が考えることのできる環境、考えざるをえない環境を準備して、ある意味では

  厳しく鍛える。

 

「こういう会社では「事実に即し、現地現物で物事が進む」ということがなくなり、「事を荒立てない」という思惑が、事実を把握することより常に先行している」

 

<新生組織のマネジメント5原則>

 ①あるがままの現実を直視する。

 ②再生の方向性、シナリオを示す。

 ③情報(事実・背景)をオープンにする。

 ④改革の思いと推進力を持つ人材を顕在化する。

 ⑤意味や目的を考え抜く対話の場をつくる。

 

「ここで決めたことの背景情報をきちんと社員に伝えてください。ただ決定事項を伝えるだけじゃなくて、なぜそう決まったのか、なぜそれが必要なのかを、小池さんの言葉で、社員に伝えてほしいのです。そして、社員の反応を再生チームにフィードバックしてもらうことで、私たちの打ち手が独りよがりになるのを防ぎます。今までは、情報が上から下へと、通達や指示命令というかたちで、一方通行するだけだったのではないかと思います。それを、『情報が下からも上からも流れる組織へと変えなくてはならないのです」

 

「事業の選択と集中で、会社の規模を小さくする。そして経費削減をすると同時に、本業に絞って営業利益を黒字化する。経費が減って営業利益が出るということは、そこから税金や借金の利息を払った残りは、自己資本になる」

 

「痛烈な批判や不満を口にするたいていの人は、いい仕事をしたい、自分が成長したいと願っている」

 

「自分はこうしたいのだが、ほかの部署の人たちがそれを望んでいないし、協力も得られないと感じている。しかし、それは自分のためだけでなく、実際はほかの部署の人たちにとっても有益なものである」

 

「現場に行って、現場を見て、現場に触れていなくてはいけないよ。会議で聞いた誰かの意見や、本で読んで得た知識だけを使って、頭の中で考えているだけでは、間違える。現場で何がどう動いているかをつぶさに見て知れば、どういう対応をすればよいのかが、おのずとわかる。何か分からないことがあれば、すぐに現場に行って確認する。それが経営の、いやむしろ仕事の基本だよね」

 

「『余計なことをせずに真っ向勝負』と私はよくいうんだが、本業が赤字になっても、他で取り戻そうとしてはいけない。本業の不振には、本業の立て直ししかない」

 

「この「処理能力」――常に目の前にある問題を表面的に処理することで事足れりとし、根源的な解決には決して至らない――というのが、この人たちに見られる特性である」

 

「小池は新社長に取り入った。あいつは意外と世渡りがうまい」

 

「説得するのではなく、説得してもらう」

 

「真の再生とは、会社の社員みずからが、さまざまな問題に関心を持ち、問題を発見し、自分たちの手で解決していくことができるような環境や条件を、自分たちでつくりあげていくことなのである。「問題解決機能」を会社に内包されることが必要なのだ」

 

「多くの場合、社員は、会社の中で起こる問題が、自分にも解決の責任がある問題だとは思っていない。会社もしくは経営が解決すべきなのであって、自分がどうこういうような話ではない、と考えている。自分も会社の当事者の一員であるという自覚がそもそもないし、求められてもこなかったのだ」

 

いやはや、タイピングするのも疲れました。

でも改めて振り返ると、やっぱりなかなか良い本ですね。