『ホーンテッド・キャンパス』櫛木理宇
「アネゴ肌で男前な性格」
上記引用は本作『ホーンテッド・キャンパス』に登場するとあるキャラクターの人物描写です。
この一文に拒否反応が出る場合には、読むのを辞めた方が良いでしょう。
……ちなみに僕は、完全に拒絶してしまいました。
本作は第19回日本ホラー小説大賞・読者賞を受賞した作品。
ホラー小説大賞といえばその昔『パラサイト・イヴ』を排出して一躍有名になった章です。
さらに『リング』シリーズ等が加わり、角川ホラー文庫も一気にメジャーレーベルにのし上がりました。
でもその後、どうにも小粒感が否めなかったんですよね。
以降の話題作としては『黒い家』ぐらいでしょうか。あとは『バトル・ロワイヤル』が候補に挙がったりとか。
角川ホラー文庫も上記のような大作以外はちょっと期待外れのものも多く、徐々に沈下していってしまったような覚えがあります。吉村達也とか本当に消費される為だけの作品を次々出しまくってたり。
そんな中、久しぶりに話題作になった本作。
ですが簡単にぶった切ってしまうと……
オカルトラノベ
です。
冒頭に人物描写の例を挙げましたが、表紙を開いた扉にはカラーイラスト付で主要登場人物の紹介が描かれています。同じように「草食系男子」とか簡単に説明されているんですが、実はこれ、本文中でも全く同じような描写となっています。文字数の都合上短くまとめられているわけではないんです。
まさに“記号化”“テンプレ化”
ラノベ界隈では結構前から問題視されている話です。
“記号化”には文章や物語を簡略化できるというメリットもありますので一概に否定するわけではありませんが、そういう物語が苦手という人にはオススメできません。
僕の場合、ホラー小説大賞=『パラサイト・イヴ』『リング』『らせん』というイメージが先行してしまったが為の先入観による誤りがあったと言えます。最初からもっと軽めの小説だと認識していればまた受け取り方は違ったのでしょうが。
尚、物語の内容的には霊をよく見てしまう草食系の主人公と霊に狙われやすいヒロインを軸に、壁の顔・禁忌の夢・格安物件・背中・自殺少女と五つの短編が収録されている。形式的には『ビブリア』に近いかな? オカルトを軸にした謎を暴くような。
色々と書きましたが、上に書いたような前提を受け止めた上でお手に取る事をおすすめします。僕もほとぼり冷めた頃にもう一度読んでみるつもりです。
先入観、怖い。