「10日間ほど留守にします。必ず帰ってきます。心配しないでください。直人」
「一週間ほど留守にします。必ず帰ってきます。心配しないでください。舞子」
家出をした旦那に対抗する妻。
これが「可愛い」「面白い」「そんな夫婦に憧れる」と思えるかどうか。
それが本作品『夏休み』を読む上での分岐点な気がします。
中村航といえば以前僕は『100泣くこと』を読んで酷評しました。
そんな僕がどうして同じ作者によるこの本を手にとってしまったか。
その理由はただひとつ……
ジャケ買いです。
このノスタルジックな夏を感じさせる表紙と題名に、内容も作者名もろくに確認せずに衝動買いしてしまいました。
ちょうど当時、 DAOKO × 米津玄師の『打上花火』が流行っていた事もあってそういう気分だったんですね。
映画『打ち上げ花火、上から見るか、横から見るか』は駄作でしたけど、
主題歌は最高でした。
さて、話を元に戻し、この際だからはっきり言います。
表紙詐欺です。
浴衣も夏祭りも金魚すくいの金魚を氷嚢代わりにしてイチャイチャ、なんてシーンは一切ありません。
イラスト描いた人も題名だけで描かされたのかな? と疑わしいぐらい内容と表紙に全く関連性がありません。
ちなみに内容をざっくり紹介しますと……
倍率30倍の都民住宅の抽選に当選した勢いで結婚したというマモルとユキの元に、友人の舞子さんと結婚相手の吉田くんが遊びに来る。夏、吉田くんが家出。マモルを残して女二人は旅行に出かけてしまい、戻ってきた吉田君とマモルの夏が始まる。
旅行先を追いかけるにも宿泊先に二人はいなかったり、電報が届いたり、女二人にすっかり振り回されてしまう。これがまた、本気で怒ってる様子でもなく、かといって悪戯とも言えず、児戯っぽいノリ。男二人も「困ったなー」頭ポリポリな感じで本気で怒ったり焦れたりする様子もない。
そして最後に男対女の大一番が待っているわけだけど……ネタバレしてもいいかな? 『スマッシュブラザーズ』とかいうゲームなわけです。ゲームで勝負して、おしまい。僕の場合は名前とゲームのイメージぐらいしかわからず、プレイした経験なんてありませんから、さっぱりちんぷんかんぷんでした。
せめて『サマーウォーズ』みたいな描写ならプレイしたことの無い人でも楽しめるんですけどねー。
読み口はあっさりしていて軽く読めてしまうんですが、どうにも感情移入ができずないまま終わってしまいました。
やっぱりこの作者は合わないな。