「これを機会に、新たに外の世界にチャレンジされるのも一考かと思われますが、いかがでしょう?」
さて、現在進行形の読書ブログです。
今日は東京で21℃とかいう3月とは思えない陽気だったせいで、物凄く花粉が飛んでる感覚がありました。
数日前に通院して薬を処方してもらってたので平気でしたけど。
それでも目がしょぼしょぼしたり、鼻が詰まるような症状が感じられます。
ブログのアクセス数を伸ばすためには「花粉症予防に役立つ読書」とかの記事が書ければ良いのかもしれませんけど、僕に出来るのは読んだ本を紹介する事ぐらい。
花粉症予防には出来るだけ外出を控えて、屋内で読書を楽しむのが一番良いのかもしれません。
現在進行形とあってTwitterでも度々触れていたんですが、
やばいこれメッチャ面白い#俺たちに明日はない #垣根涼介 pic.twitter.com/yJ4EQ1Wynj
— ライナスの毛布@読書垢 (@s_b_linus) 2018年3月1日
第18回(2005年) 山本周五郎賞受賞作である 『君たちに明日はない』はだいぶ気持ちを入れて没頭できた本でした。
リストラ請負会社に勤める主人公が、怒り狂う女、オモチャの男、旧友、八方塞がりの女、去り行く者という5章5つのリストラに関わる連作短編となっています。毎度の面談で主人公の口から繰り返されるのが、冒頭の台詞という訳です。
建材メーカーのキャリアウーマン、玩具会社の研究者、主人公と同級生の銀行員、自動車メーカー子会社のPR担当、音楽プロデューサーがそれぞれの対象ですが、一人ひとりに様々な人間性や物語が生まれます。
というのも主人公は頼まれたからといってただリストラを宣告するわけではなく、相手の経歴や考え方、バッグボーン等を詳細に調べ上げてから面談へ向かうという特異な手法を用いています。その為、相手の人となりも如実に浮かび上がらせられてしまう、といった格好。本当によく出来ています。
また、第一章である怒り狂う女に出てきた陽子だけは主人公のヒロイン役として、最後まで関わり続けますが、一般的に言われるヒロインではありません。自らがリストラ対象者として主人公と出会うという時点でまず大きく違っています。都内にマンションを買い、一生独り身で生きていくと決めた40女。主人公とヒロインは章を経る毎に距離を狭め、やがてヒロイン自身についての進退も動きを見せます。
どろどろした企業の内部事情や人間模様が描かれ、一歩間違えれば重く、暗くなりがちなところに、ひょうひょうとした主人公と勝気なヒロインの恋愛によって全体的に明るいムードに転換されているようにも感じられます。
眉間に皺を寄せて読むような小説ではないかもしれませんが、全体を通して非常にテンポ良く、面白く読む事ができました。
どうやらシリーズものとして既に5作まで展開されているようなので、いずれ続編にも手を出したいと思います。
尚、同じ山本周五郎賞の受賞作品には以前ご紹介した『ふがいない僕は空を見た』があります。
同じ受賞作品でもここまで作風が違うと、ちょっと驚きですね。
第18回から第24回の間に一体何があったのでしょう?
それでは皆さん、花粉症にはくれぐれも気をつけて。