日本生産のう競争力回復、すなわち「日本のモノづくり復活」である。在庫、設備投資、人員の三つの過剰をそぎ落とした日本の工場は確実に復活を遂げている。さらに日本企業の競争力を支える製品開発と生産のふたつの技術、知的財産を守る動きが生産拠点の日本回帰を加速している。「日本で勝つモノづくり」の形が今、確かなものになりつつある。
あな空しや。
技術大国日本の在りし日を思わせます。
出版は2005年。
本書『勝つ工場』はまだまだ日本の製造業が元気だった時代に書かれた本です。
シャープに東芝……当時は華々しかった企業の数々
本書は日本経済新聞夕刊での連載を経て2005年に刊行された『強い工場』に続く位置づけで出版されました。
『強い工場』、ブログには書いていませんでしたが日本津々浦々の様々な工場が紹介されていて、なかなか勉強になる本でした。それもまた過去の話なので、紹介されている中には既に閉鎖されたりと悲しい末路を辿ったものも少なくありませんが。
本書にもまた、キャノンやスズキ、松下電器産業、シャープ、富士通、東芝、トヨタなどの有名企業が名を連ねます。
シャープをはじめ、上記の企業の多くが現在どんな状況にあるかは言うまでもないかと思います。
登場する企業の一つ、エルピーダメモリに至っては既に消滅しています。
また、『強い工場』を読んだ期待値からするとちょっと残念なラインナップとも言えます。『強い工場』はもっとマニアックな工場まで踏み込んでいたんですよね。
今回の『勝つ工場』では改めて紹介する必要もないぐらい有名どころ過ぎませんか? という感想です。
しかも紹介されているのはシャープのプラズマクラスターや液晶テレビ等、今となっては哀愁漂うものばかり。
「世界の亀山モデル」と絶賛する作者の文章に、空しさを禁じえません。
でも、十数年前までは確かにそうだったんですよ。
購入した際、テレビの上部に貼られた「世界の亀山モデル」というシールを剥がさずにそのままつかい続ける家庭も多かったのです。加えて当時は、台湾や韓国製のテレビは貧乏人が買う恥ずかしい粗悪品と思われていたものでした。
確かに当時は、日本の製造現場は強かった。
既に始まる少子化の波
日本では失業が大きな問題だった1990年代と打って変わって、若年層の人手不足が目立ち始めている。しかもこれは日本がこれから抱える労働力不足の前奏曲にすぎない。日本の働き手(労働生産人口=15歳から64歳まで)は2015年までに600万人以上も経るからだ。
1992年に成人を迎えた若者は210万人いたが、2005年には152万人に減った。2010年にはさらに120万人まで落ち込む。
2005年出版の本書で、既に少子化による労働力の減少が危惧されています。
十年以上経ちますが、未だに同じような事言い続けている人、多いですよね。
むしろ最近になって「人手不足」と言い出した企業や人の方が多いようにも感じます。
2005年といえば就職氷河期が終わるか終わらないか。企業も派遣や期間雇用、契約社員といった準職員での雇用ばかりで正社員への登用は高いハードルと化していました。当時から考えれば先見の明があったというべきかもしれません。
すでに『ライフシフト』や『未来の年表』といったベストセラーでもさんざん言われていますが、人口減少がさらに加速度を増すのはこれからです。
未だにあぐらをかき続けている企業は一体どうなってしまうのでしょう?
当時を懐かしむ本
さっくり書いてしまいましたが、「こういう時代もあった」と参考までに読むべき本かもしれません。
個人的に製造業・工場について調べたくて『強い工場』とセットで購入した本だったんですけどね。
もう少し具体性のある本を探したいと思います。
最近僕を知った方にとっては文芸書ではない事に驚かれた方もいるかもしれませんが、基本的に僕は雑食ですのでどんな本でも読みます。時々こういったビジネス書的なものも混じったりしますので、ご了承下さい。