『小さな会社★儲けのルール』竹田洋一・栢野克己
なにはともあれエンドユーザーにできるだけ近づき、接近戦を目ざそう。
しばらくぶりですが、今回読んだのは『小さな会社★儲けのルール』。
以前読んだ『小さな会社の稼ぐ技術』と同様、栢野克己氏の著書であり、中小零細企業がとるべきランチェスター戦略を生かした経営手法について書かれた本です。
まぁあんまりブログウケはしそうになり本ではありますが、出版不況が叫ばれる昨今において2002年の初版以降増刷に増刷を重ね、新版として2016年に刷新した後もさらに増刷、増刷。
実は実は、その界隈ではベストセラーにもなるバイブルとして知られています。
言うまでもない事ですが、世の中に会社と呼ばれるものが数多くあります。それと同じ数だけ、社長や経営者と呼ばれる人たちも沢山います。
割合で言えば、中小零細企業の経営者の方が圧倒的大多数となるのです。
その中で順風満帆・わが社はうまく行きすぎて何の悩みも苦しみもないという会社になるとほんの一握り。
どこの中小零細企業も、必死で目の前の仕事を消化しつつ、日々将来の不安に怯えているのが現状でしょう。
そんな経営者に向けられた沢山の指針が、この本には書かれているのです。
ランチェスター戦略とは
詳しく書いてあるサイトや本はたくさんあるのでそちらをご覧いただくとして、当ブログを読んでくださっている方の為に簡単に言うと、“弱者の兵法”。
元々は戦争における数・道具・距離等の要素が及ぼす勝敗への影響を数字化した考え方なのですが、ビジネスへと転換されて以後はほぼ上記のような意味で使われています。
同じ人数でも相手よりも兵器が優れている場合、損害は小さくて済む。人数が多ければさらに存在は小さくなる。大人数かつ優れた兵器で、相手から離れた位置から攻撃できればこれは一方的な虐殺ですが、戦果としては快勝・大勝利と言えるでしょう。
これを小規模事業者と大企業の構図に当て嵌めるとどうなるか。
莫大な人数で高品質低価格な商品を、ありとあらゆるメディアに広告を投下して絨毯爆撃のように、日本全国・世界規模で攻め進んで行く大企業に、小規模事業者が立ち向かう術はあるのか。
あります。
簡単に言うと、“一対一の局地戦に持ち込む”という事ですね。
漫画やドラマで見た事があるでしょう。大量の敵に追われている主人公が密林や袋小路の奥にあえて逃げ込み、一対一に持ち込むシーン。まさにあれがそうです。
ビジネスで言えば、“営業エリアを極限まで絞り込む”という事に該当するでしょうか。
全国的な知名度や情報量では太刀打ちできないかもしれませんが、自分の住んでいる町では大企業に匹敵する知名度を確保する事は可能です。情報量においても、絞り込まれたエリア内においては、インターネットや大企業の抱えるビッグデータにはないような微細なものまで精通する事ができます。
さらに重要なのは、“武器を絞り込む”という点。
局地的な一対一の白兵戦に持ち込んだところで、あれもこれもと道具を抱えていてもどれも使いこなせないのでは意味がありません。
刀ならば刀、鎗ならば鎗と、自分が自信を持って戦いに臨める武器に絞り込んで、戦いに出るのです。
事業も同様で、あれもできます、これもできます、なんでもありますでは大企業やインターネットに太刀打ちできるはずがありません。
なんでもありますをウリにしてきた大手百貨店ですら、閉店・廃業が続く時代です。
エリア同様、販売する商品(技術)はできるだけ絞り込んで営業する。
本書の中では障碍者に特化した旅行代理店や、すそ上げ専門に特化した洋服リフォーム店、短髪専門の理髪店などが挙げられています。
さらに客層を絞り、営業戦略にも小規模事業者ならではのアナログ的手法があったり……と様々なアイディアが紹介されています。
侮るなかれ
本書に書いてある事は、一消費者としてみればごくごく当たり前の事ばかりです。
商品を絞り、エリアを絞り、対象を絞り、大手がやりたがらないアナログ的な手法で営業する。
一見しただけだと、こんな事すらわからないような会社はつぶれた方が良い、なんて思ってしまうかもしれません。
でも、そうとも言い切れないのです。
なぜかと言えば、実際には真逆な経営をしている会社の方が圧倒的に多いからです。
地方からわざわざ首都圏・大都市圏に向けて人手と手間を掛けて営業しているような中小零細企業はゴマンとあります。
商品を絞る=売るものが少なくなる=客が減ると恐怖から、逆に商品を増やしていってしまう会社の方が多いのも事実です。
間違いなくこの商品に絞った方が良い、と実績や経験、社内外からの情報からわかりきっているにも関わらず、既存の商品に携わる人々や思い出といったしがらみに縛られ、動き出せない企業ばかりなのです。
もしかしたら大手企業の方がそういった傾向は強いかもしれませんね。明らかに不採算事業にも関わらずストップする事ができず、最終的に会社の社運を左右するほどの巨額損失を計上してしまうケースはここ最近でも枚挙に暇がありません。
いち消費者として見れば一目瞭然なのですが。
自分が当事者になってみると、眼が曇ってしまうというのが実情なのかもしれません。
自分が現在置かれた立場、とっている行動が、傍目に見ても間違いのないものなのかどうか。
そういった客観的な観点を維持するためにも、本書のような本を読む事は必要なのかもしれませんね。