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年間100冊前後の読書を楽しんでいます。推理小説・恋愛小説・歴史小説・ビジネス書・ラノベなんでもあり。

『疾風ガール』誉田哲也

「分かんないかな……力だよ、力。そうやってあんたは、あんたの才能は、周りを潰してるんだって話だよ。殺してるんだって話よ。分かるんだからあたしには。あんたにいっぺん殺されてっから」

しばらく本格推理小説ものが続いていましたが、ちょっと趣向を変えまして、今回読んだのは誉田哲也『疾風ガール』です。

誉田哲也作品としては2018年7月の『ヒトリシズカ』以来です。


ヒトリシズカ』が正直微妙だったので、本作『疾風ガール』は同時期に購入しつつも、すっかり積読化していてようやく今になって着手する事になりました。

 

ヒトリシズカ』の記事にも書きましたが、僕にとって誉田哲也といえばなによりも〈武士道〉シリーズ。

 

初代『ふたりはプリキュア』の生き写しとも思える香織と早苗という相反する性格の女の子二人を主人公にした青春活劇は、シリーズを一気読みする程楽しく読んでしまいました。

 

そこから期待して手にしてみた『ヒトリシズカ』だったのですが、残念ながら期待外れ……。

やはり誉田哲也は十代の女の子を主人公にした青春モノの方が面白いのではないかと思い、チョイスしたのが本作『疾風ガール』なのです。

 

芸能事務所の下っ端とバンドガール

本作の主人公は、元バンドマンで現在は芸能事務所で働く祐司と、そんな祐司に見初められたバンドガール柏木夏美。

誉田作品の特徴と言っても良いのかもしれませんが、そんな二人の視点が交互に入れ替わり、それぞれが一人称の語り手となりながら物語は進んで行きます。

 

祐司は過去に担当した女の子の売り出しに失敗し、彼女の華々しい十代の数年間を無駄に終わらせてしまったという負い目を背負っています。

そんな彼が見初めたのが、バンド「ペルソナ・パラノイア」のギタリストとして活躍する柏木夏美。

祐司の勤める芸能事務所は主にロリ顔で巨乳という女性を主に扱っているのですが、事務所や上司の意向に反しても、祐司は夏美を芸能界に引き入れようと熱心に勧誘します。

しかしながら夏美は「ペルソナ・パラノイア」のヴォーカルである城戸薫に対する憧れが強く、祐司の勧誘に耳を貸そうとはしません。

 

当初は自由奔放で活発な夏美に振り回される祐司といったコミカルな描写が続きますが、物語が大きく転換するのは中盤以降。

ヴォーカル薫が、謎の自殺を遂げてしまうのです。

それをきっかけに、彼の名が本名ではないと判明します。

 

薫は一体誰なのか。彼の死は本当に自殺なのか。どうして自殺したのか。

 

夏美は祐司とともに、手がかりを探る旅へと出発します。

 

光と影の関係を光から描いた作品

ミステリではないのでネタバレ承知で書いてしまいますが、本書を簡単にまとめえると光と影の関係を光から描いた作品と言えるかと思います。

 

どこの世界にもありますが、強烈な光を放つ人物が加わる事で全体が明るくなったように感じる事があります。

その実、まぶしく見えるのは照らしている本人から見ているからであって、照らされている人々の背中にはどんどんどす黒い闇が深まっている、という構図。

 

本人にその気はないのに、その人が実力や才能を発揮する事によって、知らず知らずの内に周囲は打ちのめされ、傷ついて疲弊していく。

 

本書の主人公の一人である柏木夏美はそんな強烈な光を持つ人物。

哀しいかな、夏美の光は彼女自身の憧れである薫をどんどん闇堕ちさせてしまっていました。

薫は素晴らしい、薫は眩しい、と夏美が彼を照らせば照らす程、薫はどんどん闇を深めてしまっていました。

 

物語全体のちぐはぐさ

題材としては面白いと思うんですけどねー。

全体としてはちょっとちぐはぐさを感じてしまいました。

 

1つ目の要因としては、題材に対して夏美というキャラクター設定を誤ったかな、と。

 

明るく奔放で才能に溢れたキャラクターという意味では、まさしくアニメの主人公のようで愛嬌のある人物ではあるのですが、そのコミカルさ故に作品で描きたかった“闇”がいまいち稀薄だったように感じられます。

夏美は〈武士道〉シリーズでいう香織、柔と剛でいえば剛、動と静でいえば動、といった活発なキャラなのですが、むしろ逆の人物設定の方が良かったんじゃないかな、と。

〈武士道〉シリーズの早苗のように、穏やかで物静か、なのに才能には溢れていて……といったキャラクターの方が、無自覚に周囲を打ちのめしていく主人公としては相応しかったように思います。

 

もう1点は、光側から書いてしまったのがやはり失敗だったかな、と。闇側から書いた方が共感も呼びやすかったし、物語としても膨らんだんじゃないかな、と思います。

強烈な個性と才能に溢れているにも関わらず、自分を同等以上の存在として過大評価する太陽のような女の子に無自覚に追い詰められていく男の苦しみ、葛藤なんかを朝井リョウあたりが書いたら全然違う作品になるのだろうな、と思ってしまいました。

 

ヴォーカルの薫、なんか可哀想なんですよね。

遺書が残っていない以上死んだ理由は周囲が推察するものでしかありませんし、そこに至るまでの彼の孤独や苦しみはいまいち伝わって来ないまま、太陽に照らされて闇堕ちしたイケメンというアイコンで終わってしまっています。

繰り返しになってしまいますが、物語の素材としては薫の方が圧倒的に可能性を持っていたはずなので、惜しい事したな、と。

 

駄目押しで付け加えるとすれば、柏木夏美のようなキャラクターはやっぱり高校生ぐらいまでかなぁ。

〈武士道〉シリーズでは素直に読めたキャラクター設定も、いい加減二十歳近い年齢になるとイタく感じちゃいます。

まだyoutubeも確立しておらず、バンドマンがスターダムに上り詰めるには芸能事務所のスカウト必須、みたいな古い時代なので仕方ないかもしれませんが。

才能に溢れたバンド少女という柏木夏美のイメージが、令和を迎えた現代においてはちょっと古すぎるような気がします。2000年代初頭にはこういう感じの子、いたかもしれませんが……。

一応〈柏木夏美〉シリーズとして続編も刊行されているようですが、今のところちょっと食指は伸びません。

 

https://www.instagram.com/p/B90RfCtlIm4/

#疾風ガール #誉田哲也 読了#武士道シリーズ がとにかく大好きな誉田哲也作品。本書は元バンドマンで芸能事務所で働く祐司と天才的な才能を持つバンドガール夏美の二人が主人公の作品。誉田哲也はやっぱり少女を主人公にした青春ものが良いのかと思い手にしたのですが。。。 ちょっと夏美のキャラクター設定、古過ぎませんかね?天真爛漫で言動は粗雑だけど見目麗しく音楽センスは最高……ってどこの昭和漫画かと(武士道シリーズでは主人公たちが十代半ばという事で目を瞑れてた部分も、主人公が二十歳前後になってくるとちょっと違和感が出てきますね。また、本書は光と影を光の側から描いた構図になってるんですが、どちらかというと影の方から描いた方が面白かったんじゃないかな、と。強烈過ぎる光が無自覚に相手に影を作り、落ち詰めていくのだとしたら、やっぱり追い詰められる側の方が物語として語るものは多そうな気がします。大筋としては面白い作品なんですけど、ちょっと色々勿体ない作品でした。 ※ブログ更新しました。プロフィールのリンクよりご確認ください。..#本が好き #活字中毒 #本がある暮らし #本のある生活 #読了 #どくしょ #読書好きな人と繋がりたい #本好きな人と繋がりたい