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年間100冊前後の読書を楽しんでいます。推理小説・恋愛小説・歴史小説・ビジネス書・ラノベなんでもあり。

『千年戦争アイギス 白の帝国編』むらさきゆきや

 「我は、幸福だ」

 

 今回もライトノベルです。

 しかも今回からはDMMから提供されているブラウザ・アプリ用タワーディフェンスゲーム『千年戦争アイギス』のノベライズ版。

 非常に読む人が限られそうな記事になりそうですが、読書ブログって一発のバズりよりも細く長くアクセスが積み上っていくロングテールの方が独自性があって面白いのかなぁと思いますので、とりあえず書く事にします。

 

 そのための前提条件として、まずは『千年戦争アイギス』のご紹介。

 


 上記が大元のゲームでして、押し寄せる敵に対し様々な能力を持ったユニットを配置し、撃退するというタワーディフェンス型のゲームとなっています。

 以前書いた『御城プロジェクト:Re』とよく似た……というか、運営元も同じDMMから提供される姉妹のようなゲームです。

 

 

 ただし、アイギスの歴史は『城プロ』に比べるとさらに古く、つい先日七周年イベントが開催されるという長寿ゲームとなっています。

 ブラウザゲームで七年って、かなり長い方ですよね。

 さらに『城プロ』とは違う点がもう一つ。

 『千年戦争アイギス』に関してはR18版が存在するアダルトゲームだったりもします。

 好感度を上げると女の子とイヤらしい事ができたりするんですね。

 もちろんDMMのアプリ版やブラウザ版に限っての話であり、applegoogleといったスマホ版に関してはエロはなしなんですけど。

 

 この点が『千年戦争アイギス』の良い点でもあり、悪い点でもあります。

 国産タワーディフェンスゲームの代名詞と呼べる存在でありながら、エロゲーとして忌避されてしまう悲しみ。

 意外と面白いゲームなんだけどなぁ。

 ちなみに僕もプレイはもっぱらスマホ版ばかり。

 なのでエロシーンは全てカット。その分キャラのエピソードが掘り下げられていたりして、エロ抜きの方が世界観がわかりやすかったりしますし。

 

 話を小説の方に戻すと、『白の帝国』というのは、実はゲームの主人公とはライバルにあたる立場だったりします。主人公は「亡国の王子」「英雄王の子孫」と呼ばれる人物であり、そこに集まる仲間たちなんですが、白の帝国は基本的には敵国。当初は互いに争う間柄でした。

 ゲーム上ではやがて悪魔や天使といった共通の敵を倒すための共闘関係に入り、帝国のキャラクターも仲間として入手できたり、帝国キャラクターのみでのパーティを編成したりする事もできたりします。

 むしろ「帝国編成」「帝国縛り」と呼ばれる言葉が出る程、ユーザーの中では人気を集める集団なのです。

 

 そんな『白の帝国』のボスである白の皇帝を主人公として描かれたのが、本作『千年戦争アイギス 白の帝国編』シリーズなのです。

 

 

白の皇帝のバックストーリー

 物語はとある滅びた国の天馬騎士団団長イザベルから始まります。

 危機に陥ったところ、白い鎧の一団をそれを指揮する大剣の騎士に救われ、帝国へと誘われる。

 彼らこそが『白の帝国』の一団であり、騎士こそが白の皇帝です。

 

 現在の皇帝は第十三代目。

 国是として”力こそ全て”をかかげる『白の帝国』の帝位は、強い者に受け継がれます。

 皇帝も元々はただの流浪の傭兵でしたが、前皇帝に拾われ、戦いの中で頭角を現していきました。

そんなある日、前皇帝は事もあろうか配下であるゾーグの謀叛により暗殺されてしまい ます。

 ゾーグは自ら皇帝を名乗り、一時は周囲もそれを認めるようにも見えましたが、現在の『白の皇帝』がゾーグを討った事により、なし崩し的に『白の皇帝』は皇帝の座へと着いてしまいました。

 

 ……こういうゲームにはなかった話が語られるあたり、ファンとしてはなかなか楽しいです。

 

 イザベルは『白の帝国』に合流し、皇帝から一人の女性のお側役を命じられる事に。

 彼女は皇帝の妹リィーリ。

皇帝とは父親違いの兄妹であり、周囲にもひた隠しにする存在なのです。

 

リィーリをイザベルに任せ、白の皇帝は領内の村を襲うという古代炎竜の征伐へと旅立ちます。

そこへ現れたのが、竜とは思えない可愛らしい少女シャルムでした。

 

炎の竜皇シャルム

「ふっふっふっ……我こそは古代炎竜のシャルム! おそれおおくも、この空と大地の支配者であるぞ!」

 つっよいんだぞう! とシャルムと名乗った女の子が薄い胸を張った。

 俺は肩をすくめる。

  ……とまぁこういう感じで、どう見たってそんな風には見えない女の子が古代炎竜とかいう強大な生き物で、尊大ぶる割に子どもっぽい愛らしさが隠せないというラノベらしいキャラクター造形だったりします。

 襲ってきた赤竜を一太刀で仕留めた皇帝の実力を称賛し、返す言葉で

「あたし、決めた! あんたを旦那にするね!」

 と言い出すというまさにラノベ展開(

 

 このシャルムが一応、本書におけるヒロイン役という事になるのでしょう。

 というのも本書にはゲームで使えるシリアルナンバーというものが付録でついておりまして、それにより手に入るキャラクターというのがこのシャルムなのです。

 小説版でたっぷりシャルムのキャラクターとお話を楽しんだ後は、実際のゲームでもシャルムを使えるよ、という趣向。

 そんなわけで本書では皇帝とシャルムを軸に話が展開していきます。

 

 

異世界ハーレム

 ところが実は、白の皇帝に言い寄る女性はシャルムだけではありません。

 冒頭に登場したイザベルは皇帝の一挙手一投足に過剰に反応してドキドキしまくり、軍師であるレオナも皇帝への恋慕を隠せません。天真爛漫に皇帝にじゃれ付くシャルムの行動に、周囲の女性陣の方がやきもきしたりします。

 これぞラノベ用語でいうハーレムもの、という展開ですね。

 

 一方で皇帝はというと、それぞれの気持ちを知ってか知らずか、あまり興味を示そうとはしません。

 

 その他、女性同士ではありますがちょっとした微エロシーンもあったり。

 この『白の帝国編』、全四巻と続くのですがこの最初の一巻だけやたらとハーレム・エロ展開が強いんですよね。

 

 ラノベだから、なのか元がR18要素もあるゲームだから、なのか知りませんが、二巻・三巻と続くに連れて少しずつそういった要素が減っていくのは、やはりちょっとやり過ぎ観があったのかもしれません。

 

意外とまともなストーリー

 ここまで書いたところだと「ゲームを元にしたしょうもないノベライズ」感が否めないと思うのですが、意外にもストーリー自体はなかなかにまともだったりします。

 本書の最大の敵である古代炎竜はシャルムの父親なのですが、シャルムの父と母の出会いや出生の秘密、後に起こった悲劇などなど、小説としてはしっかり読み応えのある内容に仕上がっています。

 娘でありながら、シャルムが皇帝に父親を討つよう求める理由などは、なかなか考えられていると言えるのではないでしょうか。

 また、白の帝国内の文官と武官のぎくしゃくした間柄など、組織的ないざこざも上手く描かれています。どうも一枚岩ではないな、内部からいつ造反者が生まれてもおかしくはないな、という緊張感が物語に厚みを持たせてくれます。

 

 エロやハーレムなど読んでいて鼻白む部分も少なくないのですが、意外や意外、全体としては本当によくまとまっている印象です。むしろよくこれらの要素を一つにまとめあげたな、と感嘆してしまいます。お陰で最後まで楽しく読んでしまいました。

 

 もちろん普段から文学や歴史小説のような硬めの作品を読んでいる方にはオススメしませんけどね。ゲームのファンの方が世界観を楽しむために手にしたり、シリアルコードのキャラクター目当てに購入する分には十分すぎる仕上がりなのではないでしょうか?

 正直ゲームのノベライズってちょっと残念な作品が多いですからね。

 その昔読んだ『小説ドラゴンクエスト』は未だに胸に残るバイブルだったりしますけど。

 

 本作もあと三作、続きます。

 『千年戦争アイギス』ファンの方は、もう少しだけお付き合いください。

 

 

 
 
 
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