おすすめ読書・書評・感想・ブックレビューブログ

年間100冊前後の読書を楽しんでいます。推理小説・恋愛小説・歴史小説・ビジネス書・ラノベなんでもあり。

『千年戦争アイギス 白の帝国編Ⅳ』むらさきゆきや

 ルチアが、この魔界で、魔物たちに囲まれ、いたぶられながら殺されるのは――女神の指示なのか。

 帝国に見捨てられ。

 女神に死を望まれ。

 ――だとすれば、私は何のために戦う? 何のために生きる?

 戦意が消える。

 ルチアは顔面をデーモンに殴られた。 

 

むらさきゆきや『千年戦争アイギス 白の帝国編Ⅳ』。

長々続いていた『千年戦争アイギス』ノベライズも遂に最終巻を迎えました。

前巻までで色々と張り巡らせられていた伏線がこの一冊で回収されると思うといささか短すぎる気がしないでもありませんが、一気に最後まで読み切っていきましょう。 

ちなみに過去三巻の記事はこちらとなっています↓↓↓




 

 

強すぎる王子軍

これまでのあらすじを経て、いきなり始まる本編では王子軍の様子からスタート。

山の町に布陣する白の帝国軍に対し、海辺の街へとやってきた王子軍でしたが、すでに街は壊滅状態。

生き残った人々を発見したかと思いきや、彼らは魔神の化身であり、不意を突かれた王子は魔神の眷属に胸を刺し貫かれてしまいます。

ところが風水師リンネの能力により、王子は無事怪我一つ負わずに済んでしまいました。

その後もデーモンや怪物たちを蹴散らし、海辺の街は白の帝国の領土であるにも関わらず、生き残った住民が見当たらない事に胸を王子たちは痛めます。

そんな彼らの様子に、行動をともにする白の帝国の軍師レオナは自分達との差を突きつけられているようです。

どうやら魔神達は海辺の街を滅ぼし、山の街へと向かったと知った王子達は、白の帝国軍が控える山の町へ加勢へと向かう事を決意。

山の町もまた、白の帝国の領土であるにも関わらず、です。

短いエピソードではありますが、王子軍の強さや、損得勘定抜きで行動する偉大さがまざまざと描かれていきます。

 

 

ダンタリオンとの戦い

一方帝国軍は、3巻では省略されてしまった魔神ダンタリオンとの戦いへ。

ソラーレを想う気持ちで覚醒したフォルテが迎え撃ちますが、ダンタリオンはあまりのも強大な力を持っています。原作プレイヤーにはお馴染みのリーゼロッテや、2巻の主要キャラクター風霊使いハルカなどが駆け付けますが、フォルテは瀕死の重傷を負ってしまいます。

そこへ駆けつけた白の皇帝と、瀕死のフォルテの助力によりダンタリオンの首を落とす事に成功しますが、首だけになったダンタリオンは魔界へと逃げ去るのでした。

 

 

魔界突入

当然ながら、白の皇帝はダンタリオンを追って魔界へと突入しようとします。

しかし、レオラたちに諫められ、兵を再編しなおした上で改めて魔界へと討ち入る事とします。

 

その頃魔界では、大悪魔召喚士ラピスの前に魔神化した白の皇帝の妹リィーリを連れたケラノウスが現れます。

そこへやってきたのは魔界へ逃げ帰ったダンタリオン

魔神は自己再生能力を持つ代わりに他者からの回復魔法を受け付けられないという特異体質を持つのですが、魔神化したリィーリはその魔神を癒す力を持っているのです。

兄である白の皇帝たちが必死に追い詰めたダンタリオンでしたが、無常にもリィーリの力により元の身体を取り戻してしまいます。

 

謎展開

ダンタリオンが全快してしまうという途轍もなく危機的状況なのですが、何故か話はここから謎の展開へと進んでいってしまいます。

魔界へと突入しようとする白の帝国軍ですが、軍師レオナは第一陣を神官戦士ルチアに命じます。

まずは魔界の偵察と橋頭保の確保を目指そうというのです。

ところがルチア達は次々と襲い掛かるデーモンたちに呆気なく蹂躙されてしまいます。

ゲームのプレイヤーにはお馴染みの設定ですが、魔界ではデーモン達は力を増し、人間は逆に瘴気によって弱体化されてしまうのです。

結果、第一陣は奮闘も敢え無く壊滅。

重傷を負ったルチアはラピスによって保護されます。

 

そこへやってくるのがデーモンたちの親玉グレーターデーモン。

彼はルチアを引き渡すよう迫りますが、ラピスは応じません。

こっそりとルチアを逃がすラピスでしたが、それはグレーターデーモンたちに悟られていました。

 

森の中、デーモンたちに追われるルチア。

ルチアを救おうと後を追うラピス。

そしてグレーターデーモンの前には、白の帝国と縁があるという魔神団長メフィストが唐突に現れ、立ちふさがります。

 

メフィストの活躍もあり、無事ルチアを救い出すラピス。

いつしかラピスには、ルチアに対する特別な想いが生まれているのでした。

 

……ってこのくだりなんぞ???

 

全く不必要なエピソードの気がするんですが、気のせいですかねぇ???

 

ちなみにこの間に白の帝国はレオナ自らが率いて第二陣がやってきましたが、デーモン達の熾烈な攻撃と強烈の瘴気を前に退却するシーンがほんの少し描かれています。

 

本来楽しみにしてたのって、そっちの話だったはずなんですけどねえ……。一体どうしてラピスとルチアの話に乗っ取られてしまったんでしょうか。

 

第三陣・白の皇帝出撃

そしてついに白の皇帝が第三陣として魔界へと出撃。

全317ページのところ、231ページにしてついに。

 

ついに!!!

 

いや、遅ぇよ!!!

 

もう残り4分の1しか残ってないじゃん。

 

しかも……しかもですよ。

”使え”と要求された気がした。

握りしめ、薙ぎ払う。

宝剣から光が広がった。

喪やのような瘴気が払われる。

兵たちをむしばんでいた魔界の瘴気が、はっきり薄れるのがわかった。

おお! と兵たちから歓声があがる。

エリアスが目を丸くした。

「陛下、身体が軽くなりました! 呼吸も楽になっています!」

第一陣のルチアや第二陣のレオナたちを苦しめてきた魔界の瘴気は、白の皇帝の持つアダマスの神器によっていとも簡単に効果を打ち消されてしまうのです。

 

いやまぁ、これもゲームのプレイヤーなら理解できるギミックなんですけどね。

 

とはいえあまりにも酷い目に遭ったルチアが不憫すぎるじゃありませんか。部隊は壊滅、自身も死を覚悟するような場面に何度も追い詰められたというのに。

 

しかも、本筋とはほぼ関係のない不要な謎展開の中で。

 

もうルチアが可哀想で可哀想で仕方がないのですが、いざ最終決戦へと突入です。

 

 

最終決戦

まぁ後はお決まりの展開ですね。

再びダンタリオンは白の皇帝と対峙します。

そこへやってきたのが妹リィーリ。

リィーリが魔神化し、さらに相手方へと加担している事に白の皇帝たちは衝撃を隠せません。

 

しかもダンタリオンをどれだけ傷つけようとも、リィーリが回復させてしまう。

ただでさえ強靭な魔神だというのに、都度回復されたのでは勝ち目がありません。

かといってリィーリは皇帝の妹だけに、リィーリから先に始末するというわけにもいきません。

 

狙撃兵ラルフたちがリィーリを取り押さえようとしますが、見た目に反した強大な力に返り討ちにあってしまいます。

自分の部下たちが殺されたのを見てリィーリに向かい攻撃しようとする白の皇帝でしたが、どうしてもリィーリを斬る事はできません。

その隙を突かれ、魔神の一撃を食らってしまいます。

しかし、皇帝が瀕死の重傷を負った事でリィーリが自我を取り戻しました。

 

リィーリによる治癒の力を受けられなくなったダンタリオンに対し、白の皇帝はアダマスの神器の真の力を開放します。

追い詰められたダンタリオンは自ら自分の首を千切り、再び首だけの姿で逃亡しようと企てますが……そこへすかさずリィーリが回復魔法。ダンタリオンの残した身体に新たな首が生え、ダンタリオンは元の身体へと戻ってしまうのでした。

すかさず皇帝はダンタリオンの首ごと一刀両断。

今度こそ魔神ダンタリオンの息の根を止める事に成功します。

 

なお、ダンタリオンが逃亡と援軍用に開けた光からは王子軍の軍師マツリが登場。

援軍のデーモンたちは既に王子軍の手によってほぼ全滅させられたところでした。

 

リィーリは王国へ

リィーリを白の帝国へ連れ帰ろうとする皇帝ですが、リィーリは応じません。

魔神の姿となり、自らの手で兵を殺してしまった以上、もう帝国へは戻れないというのがリィーリの主張です。

 

そんな彼女に、マツリは「王国へ来たら?」と声をかけます。

王子の下には多種多様な種族がいるので、魔神であっても問題ない。

 

リィーリはマツリの提案を受け入れ、王国へと身を寄せる事となります。

 

エピローグ

執務室にいるレオナのところへ、治癒士エリアスがやってきます。

百合エロっぽい風味を醸しつつ二人でリィーリやルチアについて話す二人。

 

そこでまた、唐突に原作ゲームを想起させる会話が。

 

「むしろ、心配は、あの王子だが……」

「むしろ?」

「いや……リィーリ殿下は、白の帝国の皇女だ。さすがの王子も自重するだろう」

「なになに?」

「何も心配は要らない、ということだ」

 

R18版アイギスでは仲間になった女性キャラクターの好感度を上げるとエッチなイベントが楽しめるという設定がありますので、おそらくそれをさして「王子がリィーリにいけないことをするんじゃないか」と懸念しているのでしょう。

 

原作ゲームでは王子は次から次へと部下に手を出す鬼畜王子ですから。

 

ただまぁ……ここまで小説内では「損得勘定抜きに平和のために戦う英雄王」としての側面ばかりが描かれるばかりで、王子のそういった一面は一切ありませんでしたので、今さら感が……。

 

あくまでゲームはゲーム、小説は小説なんですから、王子は小説内の清廉なキャラクターを貫いて良かったと思うんですが。

 

そしてそこへシャルムとハルカ、フォルテという前三巻のキャラクター達が乱入してきて、ドタバタ、わちゃわちゃとラノベらしく騒いで物語は終わりとなります。

 

コレジャナイ感

というわけで『千年戦争アイギス 白の帝国編Ⅳ』、シリーズ四巻を読み終えました。

それにしてもこの四巻目に関してはつくづくコレジャナイ感でいっぱいでした。

 

魔神になったリィーリの話はもちろん、前巻で切ないままとなってしまったソラーレのその後や、再序盤に重要人物っぽく登場して以後はいつのまにか王子軍へ離反し、尻切れトンボのようにいなくなってしまったイザベル等など、もうちょっと掘り下げるべきエピソードは沢山あったはずだったんですが。

 

せめて白の帝国のキーマンであるレオナとレオラの姉妹の過去に踏み込んでみる、とかねぇ。

 

まさか唐突にルチアを苦境に陥れた挙句、これまで無関係かつ白の帝国とはなんの関わりもないラピスとの話が大半を占めるとは。

二巻、三巻と上り調子で盛り上がっていただけに、正直、いただけませんね。

 

ルチアは白の帝国軍とは離れたまま、その消息についても不明のままになってしまいましたし。

おそらくラピスとともにいるのでしょうけど。

 

そういった読者にとって気がかりな面には触れないまま終わってしまった点が沢山あるのはただただ残念です。

 

まぁあとは付録のリィーリちゃんを手に入れて、ゲーム内で白の皇帝と一緒に戦わせてあげましょうか。

なおこちらがゲーム内でのリィーリ。

 

f:id:s-narry:20201216131847p:plain

覚醒させてあげるとこんな感じに変わります。

f:id:s-narry:20201216131830p:plain

さらにR要素を省いたandroidiphone版がこちら

f:id:s-narry:20201216131925p:plain

……個人的意見ですが、やっぱり服は着ていた方が良い気がしますねー。

エロか否かは別として、無駄に裸っぽいのはなんだかなぁ、と。

 

推しはディアナさんです

ここからは完全に蛇足です。

『千年戦争アイギス』というゲームは結構前からプレイしていたのですが、小説版を読もうと思ったのはこちらのキャラクターを遂に手に入れたから。

f:id:s-narry:20201216131843p:plain

白の帝国騎士団長ディアナさん。

このキャラクターが僕の推しでして。

イラストも良ければ性能も良い。とりあえず攻略には必ず連れて行く一番のキャラクターとなっています。

 

このディアナ、力こそ全ての白の帝国において現在の白の皇帝のやり方に不満があり、実際に白の皇帝に一騎打ちを挑んだという経歴の持ち主。

実力的には白の皇帝に次ぐナンバー2と言っても過言ではないのでしょうか。……あ、レアリティブラックのガチャ限定キャラクターなので、ゲーム内の性能としては白の皇帝よりも断然上ですけどね。

そんなエピソードに惹かれて、「そういえば白の帝国の小説あったな! 読んでみよう!」となったわけです。

 

ところがどっこい、ディアナは比較的新しめのキャラクターなので小説にはほとんど登場しないんですよね。

一部名前が出るだけで挿絵もなし。

うーん、残念。

唯一四巻の最後、イラストレーターの七原冬雪さんのあとがきにディアナが描かれていたのが救いでした。

 

『千年戦争アイギス』、エロ要素のないスマホ版も非常に面白いゲームですので、興味のある方はやってみて下さいね。

ゲームシステムに慣れるまで、とある程度ユニットが揃い、育成が進むまではひたすら忍耐力勝負になってしまいますのでいまいち勧めがたいゲームではあるのですが。

数か月かけてじっくり進めていけば、加速度的に攻略スピードは上がっていくはずですよ。

 

以上長くなりましたが 『千年戦争アイギス 白の帝国編』でした。

 

 

 
 
 
View this post on Instagram
 
 
 

A post shared by Linus (@security.blanket.linus)