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年間100冊前後の読書を楽しんでいます。推理小説・恋愛小説・歴史小説・ビジネス書・ラノベなんでもあり。

『15歳、終わらない3分間』八谷紬

『つらくても、笑っていたら、いつかきっとたのしくなるよ』

 

八谷紬『15歳、終わらない3分間』を読みました。

引き続きスターツ出版文庫からの作品です。

 

こちらも安定のジャケ&あらすじ買い。

 

なにせあらすじが秀逸です。

詳しくは下部に設置したAmazonの作品ページでも見てもらう事として、これは面白そう、と思えるのは間違いありません。

 

さてさて、どんな作品か。

早速説明していきましょう。 

 

what done it(ホワットダニット)

主人公の乾弥八子は学校の屋上から身を投げます。

しかし次の瞬間、弥八子は教室に。

そこにいたのは霧崎・村瀬・五十嵐の男子三人と、日下の女子女子一人。

それぞれ部活や別の行動をしていたはずなのに、いつの間にか教室内へと移動させられてしまいました。

脱出を試みる五人ですが、ドアは開かず、教室内に閉じ込められている事に気付きます。

そして時計の針は5時27分から30分の間を繰り返すばかり。

 

一体何が起こっているのか。

どうしたら脱出できるのか。

 

一言で言うなれば、本作はクローズドサークルに閉じ込められた五人の脱出ゲームです。

 

 

五人の心情

集められた五人は同じクラスメートというだけで、特に親しい間柄というわけでもありません。

脱出を目指す五人は、そのためのヒントを求めて話し合いを重ねます。

そうして互いを知っていく内に、少しずつ心が結ばれていきます。

 

脱出ゲームとは書きましたが、青春小説としての側面も色濃い本書においては彼らの心情の移り変わりこそが見どころと言えるでしょう。

 

それぞれがひた隠しにしてきた過去やコンプレックスを明かしていく様子は、辻村深月かがみの孤城』を思わせるところがあります。

 

 

ライト文芸です

過度な期待は禁物ですね。

 

次々と各々の秘密が明かされるとはいえ、特に必要性を感じないような小粒なものもあれば、そりゃあいくらなんでも無理過ぎるんじゃない? と思えるものもあったり。

個人的には、主人公である弥八子が自殺するに至ったそもそもの理由に疑問を抱いてしまいました。まぁ、十代の子は深く考えすぎて衝動的に死を思い描いたりもするけど……もうちょっと深いというか、納得できる理由があっても良かったかな? せめて死を決意するきっかけとなったエピソードを描くとか。

 

全般的には、弥八子の独白が多いのも気になりました。

誰かが発言する度、行動する度に自分がどう思ったか、自分だったらどうしていたか等々と弥八子の感想が長々と語られます。もちろん全て不要だとは言いませんが、あまりにも多すぎて登場人物たちのやり取りや話の筋が途切れ途切れになってしまいがちでした。

 

舞台が教室の中、登場人物五人という限られた環境で物語を形成しなければならないが故、弥八子の独白で膨らませたのかなぁという印象を抱いてしまいます。

だったらその分を、自殺を決意するまでの経緯や、モノローグなどに割いて欲しかったなぁ、と思った次第です。

 

 

お約束

突然話が変わりますが、『君の名は。』『天気の子』で有名な新海誠作品に『秒速5センチメートル』という作品があります。

見た事がないという方がいればネタバレになってしまうので恐縮なのですが、ネット界隈ではトラウマレベルの鬱アニメとしても有名な作品ともなっています。

 

www.youtube.com

 

ざっくり言うと、主人公の男の子は子供の頃に一人の女の子と特別な経験をするんですね。

でもそれが最後で、別れたきり。二度と会う事は叶いませんでした。

以後、彼はずっと彼女の事を心の片隅で想い続けています。いつの日かまた会える日が来る事を心待ちしているわけです。

そして迎えたラストシーン、踏切で彼女らしき人物とすれ違い、振り向いた彼と彼女の間を電車が走り抜けます。彼はついにその時が訪れたと胸を躍らせるわけですが……電車が過ぎ去ってみると、既にそこには彼女の姿はありませんでした。

 

主人公はずっと彼女を想い続けていたのです。

きっと彼女も自分と同じ気持ちで、再会を待ち望んでいてくれるはずだと信じていた。

その気持ちが最後の最後で、独りよがりなものだったと知らされるという情け容赦ないラストシーン。

 

類型のハッピーエンドを期待していた観客は、最後の最後に現実の無慈悲さを突きつけられ、そこに自分を重ね合わせる事で絶望するわけです。

 

そうだよ。そうなんだよ。こんなもんだよ……ってね。

 

秒速5センチメートル』についてはある意味恋愛モノにありがちなお約束を破ったからこそ話題となったわけなので比較対象にはならないかもしれませんが、とはいえここのところライト文芸作品を読んでいると、ちょっとお約束が過ぎるように感じざるを得ません。

 

小さな頃にした約束を何年も経った後も当たり前のように覚えていたり、高校生の時に離れ離れになった同級生が、大人になっても途切れる事無く一途に想い続けていたり。

でもって再会した瞬間にすぐさま抱き合って結ばれたりします。

いくらなんでもなんだかなぁ、、、と思う事もしばしば。

 

でも以前にも書きましたが水戸黄門暴れん坊将軍といった勧善懲悪の時代劇同様、「期待を裏切る事のないど真ん中の恋愛作品」がライト文芸に求められている事なのだとすれば、仕方のない事なのかもしれませんが。

 

幼い頃の約束があったからといって、それだけの理由で相手のために命を捧げるところまで行ってしまうと、行き過ぎじゃないかなぁと思えてしまうんですよね。

お約束だからとはいえ、それならそれに相応しいだけの理由付けに欲しいなぁと思える作品が多い気がします。

 

きっとそういう作品もあると信じて、もう少し読んでみる事にしましょう。

 

 

 
 
 
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