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年間100冊前後の読書を楽しんでいます。推理小説・恋愛小説・歴史小説・ビジネス書・ラノベなんでもあり。

『5分後に慄き極まるラスト』エブリスタ

そうして、そうして姉はあっという間に、真っ青な花を満開に咲かせた、一樹の贄桜と成り果てた。

 

さて、予告通り今回ご紹介するのはエブリスタの『5分後に慄き極まるラスト』。

前回書いた『5分後に涙が溢れるラスト』と合わせて発売された作品です。

 

改めてご紹介すると小説投稿サイト「エブリスタ」と河出書房の間から「5分シリーズ」という人気シリーズが出版されています。主にはエブリスタ上のミニコン受賞作品の中から、それぞれテーマに基づいた作品を抜粋してアンソロジー短編集として書籍化したものです。

 

『5分後に慄き極まるラスト』と『5分後に涙が溢れるラスト』は、その中からさらに抜粋した13編ずつを文庫化したものです。

 

前回の記事をお読みの方はご存じかと思いますが、正直言うと『5分後に涙が溢れるラスト』は微妙だったんですよねぇ……。

 

さてさてそれでは、赴き異なる本書についてご紹介していきましょう。

 

 

「慄き極まる」をテーマとした13の作品

本アンソロジーのテーマは「5分後に慄き極まる」。

恐怖系の作品ばかり13作を収めたと言う事です。

 

どれも8,000字程度を目安として書かれた作品らしいので、その中で感動を起こすのはなかなか難しいと思うのですが……順に紹介していきましょう。

なお、前回に引き続き、せっかくなので小説投稿サイトエブリスタの該当作品ページへのリンクも設置します。

 

 

『フォルダ』

 結婚を決めた彼とともに両親への挨拶を済ませる私。しかし車の中で一枚のSDカードを見つける。そこには彼の秘密が隠されていて……。

 https://estar.jp/novels/23677193

 

 

『暇つぶし』

 「助けてください。私は監禁されています」

 突如送られてきたメールとやり取りを交わし、友人とともに現地へと向かう私。その先に待っているものとは……。

 https://estar.jp/novels/23648471

 

 

『幽閉』

 気が付くと、闇に包まれていた私。どうやら乗っていた飛行機が墜落し、私はトイレに閉じ込められているらしい。脱出もできず、周囲から物音すらない中、妻とメールを交わし続ける私。

 https://estar.jp/novels/23639175

 

 

『七歳の君を、殺すということ』

 ある日突然、通り魔に母を殺された僕は、過去にタイムスリップし七歳の頃の犯人に会いに行く。母を殺される前に、犯人を殺そうと……。

 

 

『風と雪と炎』

 雪山で立ち往生し、ビバークを決める登山家。そこに道に迷ったもう一人の登山家がやってくる。登山家は一人より二人の方が心強いと、自分が掘った雪洞の中に相手を迎え入れる。その数年後――

 https://estar.jp/novels/24980845

 

 

『探偵ごっこ

 不倫カップルや横領など、社内で起こる数々の悪事を匿名メールで糾弾する男。

 https://estar.jp/novels/23916577

 

 

『姉は桜になりました』

 人の体を栄養に育つ贄桜の生贄に選ばれた姉は、体内に種を宿したまま過ごしたある日、ついに開花の日を迎える。一人の少女が巨大な贄桜に変貌し、美しい桜を咲かせる狂気的なシーンは必読。

 https://estar.jp/novels/24560879

 

 

『花嫁の新しい彼氏』

 勘違いから交際がスタートし、結婚まで至ったものの花嫁は不満だらけ。結婚そのものも今さら引くに引けないという理由だけで強硬した花嫁は、友人や親せき総出で新郎へのディスリスペクトを繰り返す。それに対し、新郎が取った行動とは……。

 https://estar.jp/novels/25316677

 

 

『最後のチャンス』

 執行の日に怯えながら日々を暮らす死刑囚。彼は自分が冤罪であると主張するものの、既に判決が出た後では受け入れられる事もなかった。そんな彼が遂にその日を迎える。ところがそこに、真犯人逮捕の一報が入り……。

 https://estar.jp/novels/25274979

 

 

『横領したのは上司です』

 銀行員の主人公は、偽造と偽装を重ねて上司自身が横領したかのように工作する。事件が明るみになる頃、本人は海外へと高飛び。しかし、絶対に捕まることはないう確信があった。

 https://estar.jp/novels/25310803

 

 

『IF』

 20年ぶりに小学校時代の仲間2人と再会した博嗣は、過去の思い出話に花を咲かせる。しかし記憶のそこかしこに引っ掛かりを覚える。もう一人、大事な人間を忘れている気がする。

 https://estar.jp/novels/24945552

 

 

『あかんおじさん』

 信号無視をしようとする子供の前に、必ず現れるというあかんおじさん。私もまた、その存在を目にしてしまう。信号無視をした子は、あかんおじさんに呪い殺されるというのだ。ある日、私の目の前で知らない男達が噂の真偽を確かめようと、信号無視をしようとするが……。

 https://estar.jp/novels/25504863

 

 

ハンバーガー店で女子高生が言ってた海の話』

 メンヘラ気質のある妻に愛想を尽かし、度々送られてくる離婚届を本当に役所に提出する事で離婚を果たした男。たまたま夕飯を求めて入ったハンバーガー店で、隣の女子高生が自分の元妻によく似た女について話しているのを耳にする。

 

 

良い……!!!

前回『5分後に涙が溢れるラスト』の記事ではとにかく微妙と酷評してしまったのですが、同日発売されたこちらの『5分後に慄き極まるラスト』は非常に良作揃いでした。

 

初っ端『フォルダ』『暇つぶし』もなかなかですし、『七歳の君を、殺すということ』もかなり読み応えのある内容でした。なかでも個人的にイチ押しなのは『姉は桜になりました』。

いよいよ開花の日を迎え、姉の体が桜に変貌していくシーンは非常にグロテスクでありながら、妙に神秘的で美しくもあるという言葉には言い表わす事のできない感動を与えてくれました。

『あかんおじさん』の捻りを加えたストーリーも秀逸です。

 

『5分後に涙が溢れるラスト』と『5分後に慄き極まるラスト』で迷った際には、ぜひ本書を強くおススメします。

好みもあるかもしれませんが、個人的には圧倒的に後者の方が面白く読ませていただきました。

 

 

『七歳の君を、殺すということ』と『ハンバーガー店で女子高生が言ってた海の話』以外は上にエブリスタのリンクも置いておきましたので、気になる方は一つぐらいお試しで読んでみてはいかがでしょうか?

 

 

 
 
 
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