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年間100冊前後の読書を楽しんでいます。推理小説・恋愛小説・歴史小説・ビジネス書・ラノベなんでもあり。

『恋する山ガール』御堂志生

「お前に惚れてる。全部欲しい」

 

御堂志生『恋する山ガール』を読みました。

Kindle Unlimitedで何か山登りに関連した小説ってないかなと検索したところ、引っかかったのが本書でした。

 

形式が電子版のみで単行本や文庫本といった実本としては出版されていないようだし、パブリッシングリンクなんて出版社聞いた事がないなぁと思ったら、電子書籍専門の出版社だったんですね。

なるほど、今の時代はそういうのもあるのか、と感心しました。

 

以前にも触れた通り、漫画やアニメ界隈では登山やキャンプといったアウトドアを題材としたゆるい作品が人気な一方、小説業界においては硬派な山岳小説ばかりなのが実情です。

ゆるキャン△』に触発されたライトノベルとかありそうだけど、意外とないんだなーというのが個人的には不思議。

 

そんな中見つけたのが、明らかにラノベの雰囲気がプンプン漂う作品が本書。

電子のみの発行というのが引っかかるところですが……まぁ内容を読んでみる事にしましょう。

 

 

山コン⇒遭難で救助騒ぎへ

主人公は藤沢蘭。

高校の頃にアルバイトをしていた飲食店にそのまま就職したという、21歳。

女子大生のアルバイトめぐみに合コンに誘われ出掛けてみたところ、着いたのはとある山の登山口。

合コンは合コンでも、山登りをしながら合コンするという一時期流行った山コンというものでした。

 

ところが早々にリタイヤ者が出たり、別ルートで下山したいというカップルが現れ、蘭もまた、来た道を戻ろうという一人の男と一緒に山を下る事に。

途中、当たり前のように男にキスを迫られ、走って逃げたところ、山の中へ迷い込んでしまい……日も暮れ、雨が降り出して、彼女は本格的に遭難してしまうのでした。

 

そんな彼女を助け出してくれたのが、静岡県警山岳レスキュー隊。

副長である御﨑は、蘭の不用意さを声を荒げて糾弾します。

反発心を覚えつつも、自らに非があるだけに言い返せず堪える蘭。

これが彼らの出会いとなります。

 

後日蘭は、蘭を合コンに誘っためぐみとともに、富士の五合目にあるという山岳救助隊の基地にお礼を言いに行く事に。

しかし、ワンピースのようなひらひらした格好で現れた蘭は、再び御﨑に叱られます。

しかも御﨑は既婚で子どももいると聞かされ、ショックを受ける蘭。

 

蘭は御﨑を見返すためにスポーツショップへ行き、店員に行って登山用品計20万円分を購入します。

そして初心者向けの登山ツアーに参加するために、再び富士山を訪れるのです。

 

 

ゆるい≠いい加減

まぁ、想像はしていたのですが……はっきり言って、クオリティーは低いですね。

登山を題材にとは言いますが、山コンや山岳救助隊という文言をダシに使われたようなもので、まるで経験も取材もしないままイメージだけで書いたのが丸わかりです。

 

店員に二十万円分もの登山用品を買わされるなんてあまりにも非現実的ですし、その中身がなんなのか確認も試着もしないまま、そっくりそのまま持って山登りに来るなんて無頓着にも程があるでしょう。

寝袋が寝袋だとわからないまま、リュックに入れて持ち歩いているんですよ? 漫画に毛が生えたようなラノベとはいえ、いくらなんでも目茶苦茶過ぎませんか?

 

どうやら著者的にはそういうぶっ飛んだ人間を「おっちょこちょいで可愛らしい」ぐらいに感じているようで、失敗や嬉々に直面する度に、白馬の王子様役である御﨑が助けてくれる……というラブコメが本書のキモです。

全く山である必然性はないのです。

本書の中には、山登りの楽しさや魅力のようなものは一切登場しません。

山に関わるのは、名もなき詐欺店員や、同行するツアー客を嘲って楽しむような嫌らしい人間ばかりです。

ヒーロー役である山岳救助隊の人間離れしたカッコ良さを描くためだけに、山が存在するのです。

 

処女喪失でハッピーエンド

あまりにも馬鹿馬鹿しいのですが、本書のクライマックスは主人公の処女喪失。

蘭と御堂の間にあった勘違いが解消され、両想いだと判明した途端、二人は一目散にホテルへ。

戸惑う蘭に、御堂はすぐさま事に及ぼうとするものの……彼女が処女である事に気付き、己の性急さを詫びます。そしてもう一度、今度は優しく、丁寧に彼女を抱くのです。

二人は無事結ばれ、後日、今度は仲良く連れだって富士山に登る二人の姿が……というハッピーエンド。

 

……控え目に言って、クソですね。

 

上述したクライマックスの濡れ場は、読んでいて恥ずかしくなる程安っぽいものです。

まるで思春期の中学生の頭の中を文章にしたような、今時エロ本でも見ないような描写やセリフが目白押しです。

 

「あっあん、やぁん」

「綺麗なピンクだ。花びらも……本物のランの花のようだな」

 

まさかこのクソ寒いセリフを言わせたいがために主人公の名前を蘭にしたわけじゃないだろうな。

せっかく読み始めたのだからせめて最後までは読み切ってやろうという使命感すらも、全てを無に帰す絶望に打ちひしがれずにはいられません。

 

僕はまだKindle Unlimitedの無料枠の中で読んでいたのが救いですが、もしこれをお金を払って読んでいたらと、想像しただけでぞっとします。

まぁでも中学生ぐらいまでならもしかしたらエロ本感覚で楽しめる……かも?

 

そういう嗜好の方にのみ、おすすめしておきたいと思います。

綺麗なピンク(笑)

すげーパワーワードwww

 

 
 
 
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