おすすめ読書・書評・感想・ブックレビューブログ

年間100冊前後の読書を楽しんでいます。推理小説・恋愛小説・歴史小説・ビジネス書・ラノベなんでもあり。

『削り屋』上野歩

「歯医者の卵が、削りつながりで旋盤工になるか、こいつはいいや」

おお、なるほど。

上の一行がほぼ全てを表していますね。

『削り屋』は、元々は歯科医の次男坊として生まれ育った主人公が、旋盤工といういわゆる金属加工の職人を志すお話です。

旋盤工、なんて一般的には聞きなれない言葉ですが、世の中には驚くほど旋盤に携わる職人さんって多いんですよね。

しかしながら、物語の主役級で取り上げられるような事って少ないのではないでしょうか?

今回本書を手に取った理由もまさにそこにあります。

旋盤工というマイナーな世界を主題とした作品に、惹かれたのです。

 

物語の始まりは熱血青春の渦中から

主人公の名前は剣拳磨。

名は体を表すと言いますか、冒頭から河川敷で大勢の敵に一人で立ち向かうというシーン始まります。

主人公、歯医者の息子でありながら腕っぷしがめっぽう強い。

集団の先に立つのは超巨大企業グループの御曹司神無月純也。

自らは手を汚さず、金の力で全てを解決しようとする悪者です。

そんな主人公に味方してくれるのは幼馴染のゴローと紗世。

馬鹿だけれど人の好いゴローと、美人でしっかり者の紗世というコンビ。

紗世と拳磨はお互い惹かれながらも、ゴローを気遣い思いを果たす事は出来ません。

やがて身から出た錆で窮地に陥ったゴローを救うため、拳磨はそれまで通っていた歯科大学を中退していまいます。

実家からも飛び出し、東京へとやってきた拳磨が見つけたのが「従業員募集」の張り紙。

それこそが物語の舞台である鬼頭精機だったのです。

 

そろそろお気づきでしょうが……

上のあらすじ、なんか変じゃないですか?

どこかで聞いた事のあるような……しかもどことなく誇り臭い昭和の香りがするような……

 

そうなんです。

 

まさにこの本、昭和の少年漫画のすべてを詰め込んだようなトンデモナイ本だったのです。

河原で殴り合うシーンから物語が始まるなんて、今や平成から元号が変わろうという時代においては狂気の沙汰でしかありません。

ましてや金にものを言わせる気障な悪役とか。

思わず発行日を確認しますが、2015年と、つい数年前に間違いありません。

拳磨は鬼頭から下される課題をこなし、目覚ましい進展を見せます。なぜかそこで働いていた同級生の室田をはじめ、先輩方をあっという間に追い抜いてしまう成長ぶりです。

まるで将太の寿司を思わせる展開です。

また、僅か300ページほどの漫画チックな作中で、次々とヒロイン級の女性が現れるのも不可思議なところ。

冒頭から幼馴染み紗世との切ない関係が語られますが、次いで語られる大学時代のシーンではすぐさま絵理奈という他の女の子との一線を越えた関係が明らかになります。「削りの天才」という言葉も絵理奈に言われたもの。ちなみに絵理奈は「削りの天才」というエピソードの為だけに登場するようなもので、主人公が突然大学を辞めてからは、あっという間にフェードアウトしてしまいます。

代わりに現れるのは美咲というたまたま一人焼肉をしていた女性。

拳磨と美咲はデートを重ねる間柄になりますが、就職活動に励む美咲の口から出たのはあの神無月グループの企業。

美咲は無事神無月グループに就職を果たし、あろうことか神無月の女になり、すぐさま捨てられます。

神無月のステレオタイプさを引き立たせるためだけの登場ですね。

こういった1エピソードの為だけに登場するような人物が非常に多すぎて辟易します。エピソード自体も今まで何度となく繰り返されてきたステレオタイプそのままの焼き直しですし。

織田作之助夫婦善哉のようなゴローと紗世といい、色んな要素を詰め込みすぎです。

ゲームの中で、プレイヤーが自分で作ったエディット・キャラクターのようなちぐはぐな印象しかありません。

最終的に主人公は技能五輪全国大会へ出場する事になりますが、それすらもあっという間に過ぎてしまいます。神無月グループからは大挙して配下の者たちが参加しますが、最終的に勝ち抜き、延長戦に突入するのは主人公である拳磨と、その少し前にぽっと出てきたベトナム人ディエップ。

この辺りが駆け足どころかプロットの抜き出しのような勢いで描かれます。もう感情移入も何もあったもんじゃない。

蜜蜂と遠雷も構図だけは似たようなものなんですが。

ホント、書き手一つで大きく変わるものですね。

 

気安く震災を書いて欲しくない

いつになく辛口というか辛辣なんですが……一番不愉快なのは東日本大震災が描かれている点なんですよね。

まぁ昭和的な人物像・ストーリーも宗田理を読み返していると思えばマシか、なんて思っていたのですが、虚を突いて震災が登場したのですっかり頭に血が上ってしまいました。

 

だって、稚拙なんですもん。

 

以前ちょっと触れましたけど、僕は東日本大震災を被災地と呼ばれる場所で経験した一人です。

当時の苦しみや心細さは未だに忘れらせませんし、当事者であっても語りつくせない事ばかりなんです。

それを、あきらかに技量の足りない作者がどこかで齧ってきたような話をちょろちょろっと書く。それで震災を書いた気になる。

 

はっきり言って不愉快です。

 

 

書くならちゃんと書いて欲しい。

しょうもないスパイスの一つとして震災を使うのはやめて欲しい。

笑いのネタにでも使われた方がよっぽどマシですよ。

 

上野歩とは

尚、念のため著者のご紹介。

1994年に『恋人といっしょになるでしょう』で第7回小説すばる新人賞を受賞し、デビューしたベテラン作家さんです。

実は本書と一緒に『わたし、型屋の社長になります』という著書と買ったのですが、残念ながら今は読む気になれません。

文体的には読むのに時間が掛かるでもなし、いずれ時間を見つけて読んでみようとは思うのですが。

なにはともあれ、旋盤工という珍しい対象にフューチャーした作品だっただけに、甚だ残念でした。

https://www.instagram.com/p/Biwlgwin7rj/

#削り屋 #上野歩 読了歯医者の次男が削り繋がりで旋盤工を志すというなかなか面白いテーマの作品。でも駄目だ。面白いのはテーマだけだった。昭和の熱血少年漫画が好きな人、さらに薄いストーリーやステレオタイプなキャラクターが苦手じゃない人には楽しめるかもしれません。東日本大震災が登場するに至っては不愉快でしかない。薄っぺらい書き方するぐらいなら触れてくれるな。めっちゃ毒だらけですけど、個人的には今年のワーストかも。エンターテインメントは人それぞれだから僕には合わなかっただけかもしれませんけど。あー面白い本が読みたい。#本 #本好き #本が好き #活字中毒 #読書 #読書好き #本がある暮らし #本のある生活 #読了#どくしょ#読書好きな人と繋がりたい #本好きな人と繋がりたい ..※今回も一応ブログを更新しています。興味のある方はプロフィールのリンクよりどうぞ。

『たったそれだけ』宮下奈都

たったそれだけ。それだけのことが、どうして言えなかったんだろう。

今回読んだのは羊と鋼の森でお馴染みの宮下奈都さんの作品『たったそれだけ』

羊と鋼の森』を読んでこんなにも素晴らしい文章を書く作者に感銘を受けるとともに、それまでまったく存在自体を知らなかった自分の無知を恥じて以降、出来る限り早く著者の他の作品を読みたいと思い続けていました。

今回、ようやく念願かなって手にすることができました。

羊と鋼の森』については下記の過去ブログを参考にしてくださいね。

linus.hatenablog.jp

 

一人の男性を軸とする連作短編集

望月正幸は海外営業部長。

彼と他人には言えない関係を結ぶ夏目は、ある日同僚の蒼井から糾弾される。

収賄の疑惑を抱えたまま姿を消した彼を嵌めたのは、お前だ、と。

それにより夏目は、彼とただならぬ関係にあったのは自分だけではなかったと知る事になる。

……とまあ、初っ端から『羊と鋼の森』にはなかった泥沼な展開から始まります。

全六話から構成される本作の第一話は、そんな夏目の目から見た事件の始まりが語られます。

以降も、望月正幸に関係、またはそこから繋がる人々の物語がそれぞれ独立しつつ展開されていきます。

 第一話 夏目(望月正幸の不倫相手)

 第二話 望月可南子(望月正幸の妻)

 第三話 有希子(望月正幸の姉)

 第四話 須藤(望月正幸の娘・涙の担任)

 第五話 望月涙(望月正幸の娘)

 第六話 大橋(望月涙の元同級生)

ある一人の登場人物を軸に展開される連作短編としては桐島、部活やめるってよが思い起こされます。

それぞれの短編の中で、中心人物である桐島を一度として登場させずにして、桐島の姿を描いた朝井リョウの素晴らしいデビュー作でした。

対して本作は、それぞれの登場人物を通して望月正幸の人物像を描くというよりは、望月正幸失踪事件が及ぼしたそれぞれへの影響を描いているように感じられます。

特に娘の涙は何度も転校を繰り返す中、いつの間にか父親の事件が知れ渡り、その度に辛い思いを強いられます。

過去に起こした事件はインターネットを通していくらでも掘り返す事の出来てしまう現代の息苦しさが、著者独特の流れるような文章の中で描かれています。

後に進むほど年月は過ぎ、第五話・六話では涙は高校生になっています。そして妻である可南子も、なかなか共感を得にくい生き方の選択をしたと知ります。

それぞれが様々な選択をし、現在進行形で生き続ける……『羊と鋼の森』とは全くテイストの異なる物語と感じました。

 

板鳥さんが最終話に

羊と鋼の森』といえば美しい文章の他に、主人公を支える先輩調律師たちの個性的で、かつ真摯な人柄が印象的でした。

とりわけ存在感を残したのは主人公が調律師を志すきっかけともなった板鳥さんでしょう。

序盤の象徴的な登場シーン以降は物語の中にほとんど登場しない板鳥さんでしたが、要所要所で主人公に意味深い言葉を掛けてくれます。

そんな板鳥さんを彷彿とさせる人物が、第六話に登場します。

高校を中退し、特養施設の介護士の道に就いた大橋の先輩であるベテラン看護師の益田です。

彼は懐深い対応で入居者の心に寄り添いつつ、大橋に様々なアドバイスを授けてくれます。

ある時、「俺、ばかだから、すごく失礼なことを言ったりやったりしてるんじゃないかと気になります」という大橋に、こんな言葉を返します。

「ほんとうはね、自分ではなく、相手を信用していないんですよ。信用しているなら、多少の間違いや失礼は聞き流してくれると思えるはずです。いいですか、大橋君のまじめな気持ちはよくわかります。あとは、まわりを信用するといい。みんな、大橋くんの味方――とまでは言わないまでも、仲間ですよ」

まるで板鳥さんのようですよね。

そうして日々を過ごす中で、増田は大橋に対して少しづつ自身の過去についても口にします。具体的には明かされない話の数々ですが、その節々から、僕たち読者は彼という人間の本質に気づかされてしまうのです。

 

文句なく面白い。しかし……

一気読みです。

そもそも200ページ強しかありませんし、約30ページ前後の短編集なので一晩で読み終えてしまいました。

読みやすい文章も手伝っているでしょう。

しかし、では『羊と鋼の森』と比べてどうかと聞かれると……ちょっと答えにくいですね。

読みやすいし、面白いんですが。

題材が題材だし、文字数に限りのある誌面に連載されていた短編だし、という点も否めないのか、『羊と鋼の森』で見られたような、踊るような情景的な文章は影を潜めています。

ポーン、とピアノの音が文章から飛び出してくるような衝撃を再び味わいたかったのですが、本作では残念ながら叶わず……。

上で記したようないくつかの印象的なセリフはありますが、ストーリー全体を通しての感想がどうかというと、至って凡庸というかありきたりというか。

でもまぁ面白い作家さんには間違いありませんからね。

また他の作品を手にしてみたいと思います。

https://www.instagram.com/p/BirXkBmH-Ji/

#たったそれだけ #宮下奈都 読了#羊と鋼の森 を読んで衝撃を受けて以来、こんなにも素晴らしい作家さんを知らなかった事に対して激しく後悔。早く他の作品も読みたいと思い続けてきたのですが……ようやく手にする事ができました。本作は贈収賄容疑を抱えたまま疾走した一人の男に関わる六つの短編で構成されます。浮気相手や妻、姉、娘、娘の担任、娘の元同級生。インターネットからは過去の罪も容易く見つけ出されてしまう世の中で、男の疾走が未来にどんな影響を及ぼしたか。特に娘は転校する先々で苦しい思いを余儀なくされます。雑誌で連載されていたとあって、文字数制限などもあったのでしょうか?羊と鋼の森で見られたような踊るような文章が影を潜めていたのは残念ですが、これはこれで、といった感じ。第六話には板鳥さんを彷彿とさせるベテラン看護師も登場しますので、板鳥さんファンの方は読んで見てください。#本 #本好き #本が好き #活字中毒 #読書 #読書好き #本がある暮らし #本のある生活 #読了#どくしょ#読書好きな人と繋がりたい #本好きな人と繋がりたい ..※ブログも更新しています。宜しければプロフィールのリンクよりご確認下さい。

 

『ツバキ文具店』小川糸

失くしたものを追い求めるより、今、手のひらに残っているものを大事にすればいいんだって

2017年本屋大賞ノミネート作品『ツバキ文具店』を読みました。

先日発表された2018年本屋大賞では錚々たる顔ぶれの中、辻村深月かがみの孤城が見事大賞を受賞しましたが、今を遡ること一年前、2017年の本屋大賞森絵都・小川糸・村山早紀原田マハ西加奈子森見登美彦村田沙耶香と圧巻の顔ぶれでした。

最終的には恩田陸蜜蜂と遠雷が受賞を勝ち取りましたが、本作『ツバキ文具店』も四位に入っています。

2018年は本作の続編となる『キラキラ共和国』が同賞の10位に収まりましたから、小川糸さんが本屋大賞に輝く日も近いのかもしれません。

かがみの孤城』『蜜蜂と遠雷』については以前にブログに記していますので、そちらもご覧ください。

linus.hatenablog.jp

linus.hatenablog.jp

尚、本屋大賞について詳しくは下記のホームページをご覧になってみてくださいね。

本屋大賞

 

代筆屋、というお仕事

 

主人公は鎌倉の町で商うツバキ文具店の女性主人です。タイトルから文房具店のお話かな、と思い読み始めましたが、半分は当たりで半分外れ。

主人公は文房具店でありながら、文章や文字の代理を請け負う代筆屋でもあるのです。

そしてそれは主人公を育てた先代(=祖母)から続く生業でもあります。

鎌倉の町ならではというべき風変りの住民たちの中で暮らす主人公の元には、日々代筆の依頼が舞い込みます。

その中には一筋縄ではいかないような、難しい問題も。

それこそが本作『ツバキ文具店』のストーリーなのです。

 

お洒落な街のお洒落なお話

ここ数年、いつの間にか鎌倉の人気がすごい事になっていませんか?

僕の周りだけかもしれませんが、鎌倉が好きで定期的に旅行に行くという人が増えているように感じています。

また、「鎌倉に行ってきたけど良かったよ」という感想もよく聞く気がします。

今年の年末年始には『DESTINY 鎌倉ものがたり』も公開されましたしね。

kamakura-movie.jp

実際に劇場にも足を運びましたが、鎌倉の伝統と怪しさが存分に発揮されていてとても面白い映画でした。

堺雅人の味のある演技はもちろん、高畑充希の演技力も素晴らしかったですよ。

そんなわけで、昨今では間違いなく観光客や実際に移住して住み着いてしまう人々も多いと感じている鎌倉という町……流行りのお店にも似た口コミの良さを感じさせます。

本作もまた、そんな鎌倉の町を舞台にした物語。

伝統と洗練を感じされる様々な店が作中に登場します。

読めば一度は鎌倉に行ってみたいと思わずにはいられません。

 

勿論文房具だって……

しっかりと登場します。

代筆屋たるもの、筆記具にもこだわるのです。

主人公は依頼に合わせて、紙や筆記用具、封筒や切手に至るまでどんなものが依頼主や手紙の内容にふさわしいか細部まで想いを馳せ、選び抜きます。

登場するのもパーカーの万年筆や羊皮紙、ガラスペンにシーリングワックスとなかなか普段ではお目にしないようなものも。

文具店のタイトルにふさわしい文房具のお話だってしっかりと楽しめます。

ただし、やっぱり好みとしては男性的というよりは女性的かな。

小川糸という作者を知っていれば、男性的であろうはずはないとわかるとは思いますが。

 

一応、違和感をひとつ

蛇足になるかもしれませんが、作中の違和感を一つだけ。

代筆をお願いする依頼者の中の一人に、過去に好きだった女性に手紙を送りたいという男性が現れます。

男性はすでに結婚していて、奥さんも子供もいて幸せな家庭を築いている。

自分でもそれをよく理解しているものの、その上で昔愛した人に「今の自分は幸せである」、そして「相手にも幸せであって欲しい」という手紙を送りたいというのです。

しかも文字は女性文字で。

理由は相手も結婚しているから、男性から届いたラブレターのような手紙を万が一にも夫に見られたら気まずい思いをするのではないか、と配慮するのです。

元々男性とも女性ともとれる名前だから、知らない人が見たら同姓からの手紙だと思われるように。

だけど、中身を読めば相手はきっと自分だと気づいてくれるはずだ、と……。

 

気持ちはわかるんですよねー。

そうしたくなる気持ちはわからないでもないです。

でも、それを実行してしまう気持ちはわかりません。

しかも女文字でって……つまり誰かに書かせていると相手にも丸わかりなわけですし。

しかも代筆しているのはどこの誰ともわからない女なわけですし。

過去にどんな関係があったにせよ、受け取った相手の女性は喜んでくれるんですかね?

鳥肌が立つぐらい薄気味悪くしか感じられないじゃないでしょうか?

どうにもその点については違和感しかないです。

これは僕が男だから???

女性の目線ではまた受け取り方が違うのでしょうか???

一日で一気読みするぐらい面白い作品だったのですが、この点だけは唯一気になって仕方がなかったので、一応記しておこうと思います。

 

とにかく、鎌倉に行きたくなる本です。

ご注意を。

https://www.instagram.com/p/Bio1-w6H5n8/

#ツバキ文具店 #小川糸 読了文房具の話かと思ったら、代筆屋さんのお話でした。お洒落でハイカラな鎌倉の町を舞台に、鎌倉らしい風変わりな登場人物に囲まれた作品。そんな中、主人公に持ち込まれる依頼には一筋縄ではいかないものばかり。でもどちらかというと作中に登場する様々なお店や観光地が気になって仕方ない。鎌倉が素敵過ぎてたまらない。読めばついつい鎌倉に行きたくなってしまう困った作品です。ご注意を。#本 #本好き #本が好き #活字中毒 #読書 #読書好き #本がある暮らし #本のある生活 #読了#どくしょ #読書好きな人と繋がりたい #本好きな人と繋がりたい ..※ブログも更新しています。宜しければプロフィールのリンクよりご確認下さい。

『還るべき場所』笹本稜平

夢を見る力を失った人生は地獄だ。夢はこの世界の不条理を忘れさせてくれる。夢はこの世界が生きるに値するものだと信じさせてくれる。そうやって自分をだましおおせて死んでいけたらそれで本望だと私は思っている。

パソコントラブルに加えてゴールデンウィークを挟み、長らく更新が途絶えてしまっていたブログですが、ぼちぼち再開していきたいと思います。

その間に読んだままブログに書いていない作品もあるのですが、とりあえずはたった今読み終えたばかりの本から紹介します。

笹本稜平の『還るべき場所』

俗にいう“山岳小説”というジャンルの物語ですね。

山岳小説といえば新田次郎が有名ですが、最近では笹本稜平の右に出る作家はいないのではないでしょうか?

夢枕獏神々の山嶺もありますが、夢枕獏の場合には元々他のジャンルを得意とする作家さんですし。

山岳小説というなかなか読者層が限られるジャンルではありますが、その層の中において笹本稜平は絶大なる信頼と人気を誇っています。

以前『春を背負って』という同著者のブログも書いていますので、興味のある方はそちらもどうぞ

linus.hatenablog.jp


K2に魅せられた人々

物語は本作の主人公翔平がK2未踏ルートにおいて、最良のパートナーであり最愛の恋人・聖美を失うところから始まります。

失意の中で登山から離れていた翔平は、山仲間である亮太から公募ツアーの協力を求められます。

亮太は翔平や聖美とともにK2に挑んだ友人でもあり、現在はトレッキングツアーを主催する会社を設立しています。亮太はブロードピークへの公募ツアーの後、再び二人でK2に挑もうと持ち掛けるのです。

迷いつつも、亮太の提案を受け入れる翔平。

一方でもう一人、対照的な人物が現れます。

とある電子機器メーカーの社員である竹原。

竹原はその昔、父を山で失い、自身もまたK2へ挑み、目の前で仲間を失うという経験をしています。

翔平同様、以降は山から離れていた竹原でしたが、社の創業者である神津から山登りの指南を求められます。

神津は自社開発のペースメーカーを心臓に埋め込んだ上で、世界最高峰であるエベレストに登ろうと試みるのです。

そして竹原の協力もあり、実際にエベレストに登頂し、続いて同じ八千メートル峰であるチョー・オユーも制覇。

そんな神津が次のターゲットとして定めたのがブロードピーク。

竹原と神津は、亮太の主催するブロードピーク遠征に参加する事になります。

こうしてそれぞれがそれぞれの想いを胸に、K2へと集まるのです。


協力者と敵対者

亮太たちは旧知の間柄であるキース率いる「アグレッシブ2008」と協力し、ブロードピークに登るためのルート工作に取り掛かります。

少人数のパーティで一気に山頂を目指すアルパインスタイルとは異なり、亮太や翔平が実施するのはお金を貰って頂上まで参加者を導く公募登山

膨大な費用がかかる代わりに、危険な箇所にはロープやはしごを張り巡らし、比較的容易に山頂まで登れるよう手伝うという至れり尽くせりの登山です。

しかし一方で、虎視眈々とチャンスを狙う敵対パーティが一組。

アルパインスタイルを自称しつつ、その実キースや亮太たちが拵えたロープやはしごを利用して登ってやろうというハイエナのような連中です。

長い時間をかけて準備を進め、遂に登山へと突入する翔平たちですが、やはりハイエナたちはその期を逃しません。

テントに用意した酸素ボンベを盗んだり、せっかく構築したロープを切ってしまったりと悪事を働きます。

一方で、翔平たちよりも先に出発したキースたちは天候の急変に見舞われ、山頂付近で身動きが取れないという遭難状態に陥ってしまいます。

キースたちの救援に乗り出しつつ、下からやってくるハイエナたちにも脅かされる翔平たち。

単純な山岳小説とは言えないスリルとサスペンスに、後半は読む手が止まらなくなってしまいました。


主役を食う男“神津”

終盤から一躍主人公の座を脅かす存在感を放ち始めるのが、電子機器メーカーの創業者である神津。

ブロードピーク攻略中、血のつながった甥の手によるクーデターで神津は代表取締役会長の座から追い落されてしまいます。

しかし神津は持ち前の辣腕で、国外にいながらにしてクーデターに対する反撃に転じます。

加えて胸に埋め込まれたペースメーカーには致命的な欠陥がある事実も。

いつ爆発するかわからない時限爆弾を埋め込まれたような体でありながら、神津は公募登山のゲストという立場から時には翔平を支え、むしろ引っ張るような存在感を表します。

冒頭の引用文も神津の言葉。

仮に映像化されるとするならば、きっと味のあるベテラン俳優が演じる事になるのでしょうね。

おそらく本書の中で読者に一番深い印象を与える登場人物でしょう。

 

山岳小説というニッチなジャンル

何度も書いてきていますが、山岳小説というジャンルは非常に狭いです。

山岳小説と聞いて挙げられるのは新田次郎孤高の人井上靖氷壁沢木耕太郎『凍』夢枕獏神々の山嶺といったところで、それらを読んだ後は新田次郎の山岳ものや、山と渓谷社が発行するヤマケイ叢書を細々と読むのが通例のようです。

一般的に親しまれるジャンルではないけれど、求める人々にとってはあまりにも作品数自体が少ないものなのです。

そんな中において、今も現在進行形で新たな山岳小説を生み出し続けてくれる笹本稜平は希望の星とも言えます。

現在では先の四作に並ぶ程の作品は生み出せていませんが、いずれ山岳小説の代名詞となるような大作を書き上げてほしいものです。

……しかしながら、K2だのエベレストだの雪山だのと言われても一般的にはやっぱり馴染みのない世界ですよね。

どこか違う世界の話のように感じてしまいます。

でも今は空前の登山・アウトドアブーム。

なんとなく登山に興味はあるんだけど……という方も少なくないと思います。

実は僕も、ちょくちょくと山登りを楽しむ週末ハイカーだったりもします。

せいぜいグリーンシーズンの無雪期に、近隣の山々に出向くぐらいですが。

そんな方々におすすめなのが、下記の本。

www.kurage-bunch.com

漫画です。

漫画なんですが、何が面白いって山岳漫画でありながら、主題が山ではなく食だったりするんです。

まるで食べるために山に登るという主人公の楽しみ方を読めば、自分も真似してみたいと思ってしまいますよ。

WEBコミックなので下記サイトでは実際に連載中の作品を読むこともできます。

ぜひ一度試してみてくださいね。

■『山と食欲と私信濃川日出雄

■『孤高の人新田次郎
 実在の登山家加藤文太郎の生涯をモチーフにした作品

■『氷壁井上靖
 昭和30年に穂高岳で起きたナイロンザイル切断事件を元にした作品。

■『凍』沢木耕太郎
 ギャチュンカンに挑み山野井泰史・妙子夫婦。

■『神々の山嶺夢枕獏
 エベレスト南西壁冬期単独登頂に挑む羽生丈二とマロリーの謎。

『勝つ工場』後藤康治

 

日本生産のう競争力回復、すなわち「日本のモノづくり復活」である。在庫、設備投資、人員の三つの過剰をそぎ落とした日本の工場は確実に復活を遂げている。さらに日本企業の競争力を支える製品開発と生産のふたつの技術、知的財産を守る動きが生産拠点の日本回帰を加速している。「日本で勝つモノづくり」の形が今、確かなものになりつつある。

あな空しや。

技術大国日本の在りし日を思わせます。

出版は2005年。

本書『勝つ工場』はまだまだ日本の製造業が元気だった時代に書かれた本です。

 

シャープに東芝……当時は華々しかった企業の数々

本書は日本経済新聞夕刊での連載を経て2005年に刊行された『強い工場』に続く位置づけで出版されました。

『強い工場』、ブログには書いていませんでしたが日本津々浦々の様々な工場が紹介されていて、なかなか勉強になる本でした。それもまた過去の話なので、紹介されている中には既に閉鎖されたりと悲しい末路を辿ったものも少なくありませんが。

本書にもまた、キャノンやスズキ、松下電器産業、シャープ、富士通東芝トヨタなどの有名企業が名を連ねます。

シャープをはじめ、上記の企業の多くが現在どんな状況にあるかは言うまでもないかと思います。

登場する企業の一つ、エルピーダメモリに至っては既に消滅しています。

また、『強い工場』を読んだ期待値からするとちょっと残念なラインナップとも言えます。『強い工場』はもっとマニアックな工場まで踏み込んでいたんですよね。

今回の『勝つ工場』では改めて紹介する必要もないぐらい有名どころ過ぎませんか? という感想です。

しかも紹介されているのはシャープのプラズマクラスター液晶テレビ等、今となっては哀愁漂うものばかり。

世界の亀山モデルと絶賛する作者の文章に、空しさを禁じえません。

でも、十数年前までは確かにそうだったんですよ。

購入した際、テレビの上部に貼られた「世界の亀山モデル」というシールを剥がさずにそのままつかい続ける家庭も多かったのです。加えて当時は、台湾や韓国製のテレビは貧乏人が買う恥ずかしい粗悪品と思われていたものでした。

確かに当時は、日本の製造現場は強かった。

 

既に始まる少子化の波

日本では失業が大きな問題だった1990年代と打って変わって、若年層の人手不足が目立ち始めている。しかもこれは日本がこれから抱える労働力不足の前奏曲にすぎない。日本の働き手(労働生産人口=15歳から64歳まで)は2015年までに600万人以上も経るからだ。

1992年に成人を迎えた若者は210万人いたが、2005年には152万人に減った。2010年にはさらに120万人まで落ち込む。

2005年出版の本書で、既に少子化による労働力の減少が危惧されています。

十年以上経ちますが、未だに同じような事言い続けている人、多いですよね。

むしろ最近になって「人手不足」と言い出した企業や人の方が多いようにも感じます。

2005年といえば就職氷河期が終わるか終わらないか。企業も派遣や期間雇用、契約社員といった準職員での雇用ばかりで正社員への登用は高いハードルと化していました。当時から考えれば先見の明があったというべきかもしれません。

すでに『ライフシフト』や『未来の年表』といったベストセラーでもさんざん言われていますが、人口減少がさらに加速度を増すのはこれからです。

未だにあぐらをかき続けている企業は一体どうなってしまうのでしょう?

 

当時を懐かしむ本

さっくり書いてしまいましたが、「こういう時代もあった」と参考までに読むべき本かもしれません。

個人的に製造業・工場について調べたくて『強い工場』とセットで購入した本だったんですけどね。

もう少し具体性のある本を探したいと思います。

最近僕を知った方にとっては文芸書ではない事に驚かれた方もいるかもしれませんが、基本的に僕は雑食ですのでどんな本でも読みます。時々こういったビジネス書的なものも混じったりしますので、ご了承下さい。

https://www.instagram.com/p/Bhv9z_gH3Gu/

#勝つ工場 #後藤康治 読了2005年出版。以前読んだ #強い工場 の続編的位置付け。とはいえ #強い工場 が地方に散らばる工場たちの取り組みやあり方について詳細に取材と分析を重ねたものだったのに対し、本書は大手企業の有名商品をそのまま並べた感じでいまいち。#世界の亀山モデル とかね。文芸書が続いていたのでここいらでちょっと趣向を変えてみたのだけど残念だったかなぁ。ブログにはもうちょっと詳しく書いています。気になる方はご一読下さい。#本 #本好き #本が好き #活字中毒 #読書 #読書好き #本がある暮らし #本のある生活 #読了#どくしょ#読書好きな人と繋がりたい #本好きな人と繋がりたい .※ブログはプロフィールのリンクよりご確認下さい。

 

『武道館』朝井リョウ

卒業って何? NEXT YOUをやめるってこと?

僕の中では鉄板の朝井リョウです。

……とか言いつつ、よくよく調べてみたらブログにはまだ一記事も書いた事がないと気づいて驚き。

ブログを書き始める前だったり、中断していた最中だったりで、まだ書いてなかったのね。

なので証明はできませんが、僕的には朝井リョウが大好きですし、彼の作品は間違いのない鉄板として信じ込んでいるところがあります。

第148回直木賞を受賞した『何者』は言わずもがな、デビュー作となった桐島、部活やめるってよも良かったですし、個人的には短編集の『もういちど生まれる』も好きです。前段が長く苦しい『チア男子!』も時間が空いてみるともう一度読んでみたくなる魅力があります。

そんな朝井リョウの中では比較的新しい本作『武道館』です。

 

朝井リョウが描くアイドルグループ

朝井リョウという作者は主題をとことん取材する印象があります。

特に前述の『チア男子!』はその表れと言えるでしょう。

そんな彼だからこそ、アイドルグループを描くにあたっては緻密な取材や情報収集を欠かさなかったに違いない、と思います。

本作で登場するのは六人組アイドルグループNEXT YOU。

冒頭からセンターの杏佳が卒業を告げるところから始まります。

悲しみに沈む暇もなく、残された五人はNEXT YOUとしての活動を継続。

オリコンにランクインしたり、ドラマやバラエティーなどの番組に出演したりと活動を広げる一方、成長期に入り太り気味な真由に対し「超絶劣化」と揶揄したり、インタビュー映像の中に移りこんだPCのブックマークバーに違法動画サイトが見つかって炎上したりと、一喜一憂を繰り返すような日々を過ごします。

また、恋愛スクープによる丸刈り謝罪会見や握手会でのアイドル襲撃事件など、実際にあった出来事がちょくちょく登場するのも見逃せないところです。

読むに連れて、いつしかNEXT YOUのいちファンになったような気持ちで五人を見守ってしまいます。

 

相変わらずの特徴的な比喩

朝井リョウと言えば独特の比喩表現が特徴的です。

早く大勢の人の前で歌いたい、という気持ちが、ストローから息を吹き込まれた牛乳みたいにぽこぽこと音を立ててふくらんでいく。

電源を入れると、寝起きの悪い子どものごとく、もぞもぞとパソコンが立ち上がる。

 僕はいつもこういった独特の表現を探して読んでしまいます。

また、

煽り耐性、スルースキル、それらの言葉は自分たちが小さなころにはこの世になかったのに、本当についさっき生まれたような新しい言葉なのに、その習性をあらかじめ持ち合わせていることを当然のように求められる。

こんな日常の中で感じながらも言葉には言い表すことのできない感情をいとも簡単に文章に表現してしまうのも朝井リョウの特徴と言えるでしょう。

その際たるものが『何者』だったと思うのですが、片鱗は本作でも垣間見られます。

 

作者の誤算……?

物語はそう大きな事件や謎もないものの、展開が上手でサクサク読み進められてしまいます。

普通に面白い小説です。

流石に朝井リョウ、鉄板です。

ただ、残念ながら個人的には読後感は微妙だったんですよね。

やっぱり読んでいるうちに、彼女たちに感情移入してしまうわけです。

特に主役である愛子には頑張って欲しいし、いずれ碧を押しのけてセンターに立って欲しいなんて思ってしまいます。

ところが、起承転結で言う“転”の部分ではちょっと衝撃的な出来事が起きてしまい……まぁ確かに、アイドルを描いた小説である以上避けては通れない部分ではありますが。

でもやっぱり、胸に針が刺さったような気持ちで本を閉じる結果になってしまいました。

救いがないわけじゃないんですけどね。

やっぱり最高のアイドルになって欲しいと願ってしまうわけです。

この辺りの読者の感情移入は作者の誤算といったところでしょうか?

 

ドラマ化されました

本作『武道館』はBSフジとフジテレビそれぞれでドラマ化されたようです。

現在もホームページが残っていますので、興味があればこちらもどうぞ。

www.fujitv.co.jp

https://www.instagram.com/p/BhodlP4HT3V/

#朝井リョウ #武道館 読了僕にとっては鉄板の朝井リョウ。本作はアイドルグループ #nextyou とその一員である愛子を主役とした作品。.. 「煽り耐性、スルースキル、それらの言葉は自分たちが小さなころにはこの世になかったのにら本当についさっき生まれたような新しい言葉なのに、その習性をあらかじめ持ち合わせていることを当然のように求められる」.こういう何気ない感覚を言葉に表せる朝井リョウってスゴいですよね。.その他、今回も独特の比喩表現も目白押しです。.. 「電源を入れると、寝起きの悪い子どものごとく、もぞもぞとパソコンが起ち上がる」こういう一文を見つけるだけで嬉しくなってしまいます。普通に朝井リョウらしく面白かったのですが、唯一の難点は感情移入し過ぎてしまった点。なんだかなぁ。胸に針が刺さったような読後感でした。#本 #本好き #本が好き #活字中毒 #読書 #読書好き #本がある暮らし #本のある生活 #読了#どくしょ #読書好きな人と繋がりたい #本好きな人と繋がりたい.※ブログも更新しています。プロフィール欄のリンクよりご確認下さい。

 

 

『光』三浦しをん

「ねえ、なにか変じゃない?」

と美花がつぶやいた。「海が……」

信之と輔は、美花の指すほうへつられて顔を向けた。

海が低く鳴っていた。沖合に横一直線に白い筋が見えた。それは最初、水平線を渡っていく細いウミヘビのようだったが、あっというまに厚みを増して迫り、岬から湾へ入ったと思った途端、ゆっくりと大きく鎌首をもたげた。

津波だ」

舟を編むで2012年本屋大賞を受賞した他、まほろ駅前多田便利軒』神去なあなあ日常など、映像化された作品も多い人気作家三浦しをん

僕はなんといっても『風が強く吹いている』が大好きなんですが。

今回読んだのは『光』

冒頭の通り、突如津波という悲劇に襲われる子どもたちを主役にしています。

 

島の何気ない日常を襲う津波

舞台は美浜島。

中学二年生の信之と美花、そして信之を兄のように慕う輔の日常から始まります。

父親の家庭内暴力に苦しめられる輔。

こっそりと早熟の性を楽しむ信之と美花。

深夜、島の神社で密会しようとする二人に、輔がついて来てしまう。

そこで突如襲われる津波

あっさりとした筆致で描き込まれた自然の脅威により、島民266名の大半が命を失います。

生き残ったのはたまたま神社を訪れていた三人と、灯台守の老人、そして輔の父親だけ。

駆けつけた自衛隊の活躍により、信之や美花の両親も発見されます。

しかし、信之の妹琴実だけは最後まで見つからないままでした。

 

二十年後に明かされる秘密

災害救助でやってきた自衛隊たちとともに島に残った信之たち。

そんな中、信之は美花を救うために一つの過ちを犯してしまいます。

そしてその事件は、誰にも知られないままに大津波災害の裏でひっそりと葬られてしまうのでした。

秘密を知るのは信之と美花だけ……のはず。

なのに二十年近くが経った後、再び信之の下に当時の罪が突きつけられるのです。

そうして物語は動き始めます。

 

そして失速へ

物語の主脈は二十年前の罪に対し、三人がどういった行動を取るかというものなんですが。

正直、津波が来て三人が島を去るまでの方が盛り上がりすぎてしまい、以降の二十年後のお話については失速感を否めません。

そもそも後から調べてみると、この物語の意図ってすごく暗いテーマなんですよね。

津波の被害から生き残った子どもたち」を描くにしては、夢がないというか。

それもそのはず、本作は2008年の出版。そもそもは2006~7年の間に小説すばる誌上で連載されていたもので、東日本大震災の前に書かれたものなのです。

あの震災を実際に体験してしまうと、津波から唯一生き残った三人の子どもたちであるならばもっと夢や希望や使命感みたいなものを持って生きていて欲しいと思ってしまったりするんですが。

そこはそもそも作者の意図するところではないとわかってはいても、なんとも複雑な気分になってしまいます。

下記のインタビューに詳しく書かれていますが、文体の件だったり、作者にとってはだいぶ実験的な作品だったのかもしれませんね。

『光』三浦しをん|担当編集のテマエミソ新刊案内|集英社 WEB文芸 RENZABURO レンザブロー

 

映画の方が面白そう……かも

こちらの作品も2017年に映画化されているそうです。

www.fashion-press.net

www.youtube.com

輔役の瑛太さんの迫真の演技もあって、映画の方が断然面白そうです。

作品全体を包む暗いムードも忠実に再現されていそうですし。

後日改めてこちらも見てみたいと思います。

https://www.instagram.com/p/Bhd_2zWnHC6/

#三浦しをん #光 読了2017年に映画化もされた作品。美浜島という島に住む信之と輔、美花の三人を突如津波が襲い、彼らの他には灯台守のおじいさんと家庭内暴力を振るう輔の父だけを残し、美浜島の島民は全て命を落としてしまう。災害救助で自衛隊が遺体の回収に当たる中、信之と美花は誰にも話せない大きな罪を起こし……場面は一転、20年近く経った東京の町へ。三浦しをんだし、あらすじ見ただけでかなり期待していたのですが、正直いまいちでした。津波に襲われるまでが一番の盛り上がりかな。その後の信之たちの人生は……そんな風になっちゃうの? とただただ残念なばかり。期待し過ぎたかなー。#本 #本好き #本が好き #活字中毒 #読書 #読書好き #本がある暮らし #本のある生活 #読了#どくしょ #読書好きな人と繋がりたい #本好きな人と繋がりたい ※いつものごとくブログも更新しました。プロフィールのリンクよりご確認下さい。