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年間100冊前後の読書を楽しんでいます。推理小説・恋愛小説・歴史小説・ビジネス書・ラノベなんでもあり。

『成功の法則』三木谷浩史

夢と現実は違うなどという皮肉に、惑わされてはいけない。それは、夢を現実に変える努力を怠った人間の、悔し紛れの言い訳に過ぎない。

『成功のコンセプト』に続き、2冊の楽天本・三木谷本です。

linus.hatenablog.jp

 

『成功のコンセプト』と本書『成功の法則』はある意味対のような存在になっています。

三木谷さん自身が書いていますが、

 

   『成功のコンセプト』――成功哲学の総論
   『成功の法則』――総論に対する各論

 

といった仕立てになっているのです。

『成功のコンセプト』では

  1. 常に改善、常に前進
  2. Professionalismの徹底
  3. 仮説→実行→検証→仕組化
  4. 顧客満足の最大化
  5. スピード‼スピード‼スピード‼

という5つのコンセプトを章立てして説明していましたが、本書ではそれらをよりわかりやすく、具体的に92ケに細分化して紹介しています。

今回はざっくりと、気に入った文章等を記していくことにします。

 

楽天は、インターネットで個人をエンパワーメントするという国旗を掲げている。個人の才能や努力を後押しするために使ってこそ、インターネットという道具は本来の力を発揮すると信じるからだ。個人の存在が希薄化している現代においては、個人を力づけることこそが、豊かで幸福な社会を実現することにつながると確信しているからだ。

早速飛び出しました。

“エンパワーメント”

やはり知れば知るほど、楽天にとって、三木谷浩史にとってこの言葉へのこだわりや重要性がわかってくる気がします。

他の何よりも自分の仕事を楽しめる人がプロフェッショナル

これもまた、前著『成功のコンセプト』にも登場した考え方ですね。

プロフェッショナルは素人の対比として専本的な知識や技術を持った人間、という従来の考え方に対し、新たな定義を掲げています。

でもこれは三木谷浩史だけではなく、世の中の著名な実業家やビジネスマンはみんな同じことを言っているような気がしますよね。

けれど、ひとつだけ確かなことがある。

それは、人間は万能ではないということだ。

つまり、自分には必ず弱点もあるし、欠点もあるのだ。

そして、弱点や欠点を補えば、仕事は今までよりも上手くいくようになる。

だから大切なのは、自分に何が足りないかを、自分自身できちんと把握すること。

「自分を知る」というのもよく聞かれる話です。

どんな意見にも耳を貸すというリーダーの態度が組織の風通しを良くし、メンバーひとりひとりが、自分の頭で物事をしっかり考えるという環境を作り出してくれる。それこそが、組織にとっては重要なことなのだ。 

 楽天が現在の世田谷クリムゾンハウスに移転した際に、社長室を作らなかった事は有名な話です。

toyokeizai.net

社長室を“牢屋”と呼ぶなんて、それだけでも三木谷浩史人間性が現れているように感じられます。

もっとも星野リゾートの星野佳路社長は社長室を持たず、空いている机やテーブルで仕事するというスタンスで知られていますから、それに比べたらまだ固定されたスペースがあるだけマシなのかもしれません。

ちなみにこの人はこんな風に言っていたりします。

news.livedoor.com

堀江さんは何かと三木谷浩史楽天を貶しまくっていますよね(笑)

とはいえ、二人の仲が悪いというわけではなく、時には暴言を吐くホリエモンに対して三木谷さんがTwitterで「たまには褒めてよ」みたいなリプライを送ったとかなんとか。

親しい間柄だからこそ、好き勝手言い合える仲なのかもしれません。

いつでもオープンな環境に身を置く三木谷浩史ですが、その仕事上のスタンスが現れる考え方としてこんなものもありました。

現代には、この不安を簡単に解消する道具がある。メール1本で、こうなりましたと報告すれば済む話なのだ。それだけで、上司との信頼関係も築けるのだから、これを使わない手はない。

報連相についての考えですね。

僕らの世代ではとにかく「証拠を残す」ためにもメールを送りまくるのは当たり前なのですが、前時代を生きてきた方々にとってはメールなんてけしからん!と真面目に言う人もまだまだ少なくありません。

でも、SNSとかメールという文明の利器はどんどん使うべきですよねー。

前出のようなアナログ型上司に限って、そこかしこで言った言わないで揉めているケースも少なくありませんから。

また、楽天での働き方と言えば重要とされるのが“KPI”

重要業績評価指標 - Wikipedia

簡単に言うと「大きな目標を達成するための、中間的な数値目標」というもので、個人やチーム毎に具体的なKPIを定める事で、目標に向けて頑張りましょうというのです。

目標のない組織がダメなのは、そこには達成する喜びがないからだ。目標意識を共有してはじめて、バラバラの人間の集合が、ひとつの有機的な組織にまとまる。全員が大きなものに立ち向かっているという実感が、人と人ととつなぎ、人の心を鼓舞してくれるのだ。

楽天の社員さんにとっては、かなり厳しい目標だったりするらしいですが……でも三木谷浩史に言わせれば、それは絶対的に必要なものなのです。

速いといっても、速さには2通りある。

Velocityは速度。Agilityは俊敏さ。

目標を達成するために必要なのは“速さ”その速さには2通りあるというのが三木谷浩史の考え方。

速度は日々の仕事の効率化によって上げる事ができる。

大して俊敏さに関しては、決断したらすぐやるというフットワークの軽さこそが重要。

……とまぁ、この辺も最近のビジネス書では定番と言っても良い考え方かもしれません。

そして三木谷浩史にとって、仕事の中身の大半は下記の2つに分けられると言います。

  1. エグゼキューション――実施。実行。執行
  2. オペレーション――仕組み。手順。

やや強引な訳ですが、ざっくり言うと上のような内容でしょうか。

 

 ストラテジー(戦略)

   ↓

 エグゼキューション(管理・実行)

   ↓

 オペレーション(作業・実務)

 

こんな感じで仕事は流れていくわけです。

失敗の原因の大半は、戦略ではなく、エグゼキューションやオペレーションにある。戦略は間違っていない。それをやり切る手法と、その遂行に問題があることの方が圧倒的に多いのだ。

これは個人的にだいぶ響きましたねー。

確かに、どんなにデータを集めて検証を重ねて戦略を練っても、実際に実行する現場レベルで徹底されなければ途端に絵にかいた餅になってしまいますから。

皆さんの周りにも、気を付けてみればよく見られる事例かと思います。

素晴らしい広告に惹かれて足を運んで見たのに、店舗の接客や実際の商品に呆れてしまった、とかね。

リーンなオペレーションとは、徹底的に無駄を省いて、オペレーションをできる限りシンプルなものにするということだ。ちょっと無駄を省くというのではない。無駄な部分はバッサリ切り捨てる。並行してできることは同時にやる。ひとつのオペレーションには無数の意味を持たせる。そういう作業を徹底的にやることだ。

楽天は大きくなりすぎて三木谷さんは細部まで見えていないんじゃないか、というような意見も巷には溢れていますが、三木谷社長自身が現場の細部に重きを置いている事がよくわかりますね。

インターネットは、人と人とをつなぐ道具だ。テクノロジーがどんなに進歩しても、人間そのものは変わらない。人と人とはつながりたい生き物なのだ。インターネットが可能にすることは無数にあるとしても、それが人と人とをつなぐコミュニケーションツールであるという根本は絶対に動かない。

この辺りは“エンパワーメント”と並んでよく出てくる考え方ですね。

インターネット=コミュニケーションツール。

商品を売るAmazonと違い、楽天市場が重要としている点でもあります。

さて、とりとめもなく書きなぐってきた今回のブログも次が最後です。

世の中の生の情報に触れるために、会社の仕事をさっさと終わらせて、もっと世間に出ようという話なのだ。同僚との話は会社でもできる、それよりも異業種の人々の話を聞く機会を増やすべきだ。

まぁ、やっぱり成功した人たちのいう事は一緒です。

仕事は仕事として、きっちり遊ばないとね。

遊びから得た見地が、翻って仕事にも良い影響をもたらすのです。

朝から晩まで会社に入り浸り、家に帰るのは寝るだけ……なんて長時間労働ブラック企業では消耗するばかりで、個人としても企業としても発展が望めるはずもありません。

僕的にはやっぱり、こういう考え方の方がしっくり落ち着きます。

なんだかんだ言われても、楽天は今時のIT企業なんですよねー、なんて。

https://www.instagram.com/p/BlVRxEpn1pV/

#成功の法則 #三木谷浩史 読了#成功のコンセプト に続き楽天本・三木谷本成功のコンセプトが総論だとすれば本書は各論なのだそうエンパワーメントやスピードの考え方といい、三木谷浩史、ブレませんね他の著名な経営者の方々と言っている内容はそうは変わらないように感じます現実で迷った時こそ、答えは本に求めるべき周囲が信じられないと思えるような時も、本の中には答えがあります辛坊もあとちょっと歯を食いしばって頑張ろう#本 #本好き #本が好き #活字中毒 #読書 #読書好き #本がある暮らし #本のある生活 #読了#どくしょ #読書好きな人と繋がりたい#本好きな人と繋がりたい..※ブログ更新しました。プロフィールのリンクよりご確認下さい。

『成功のコンセプト』三木谷浩史

僕はこの年、1997年に、楽天市場を開設した。

本書『成功のコンセプト』は今や東証一部上場企業となった巨大IT企業の創業者であり現役社長、三木谷浩史の作品。

書かれたのは2007年。

楽天市場を開設してちょうど十年後。

今から遡る事十年以上前の作品です。

 

5つのコンセプト

本書には三木谷浩史「ビジネスにおいてもっとも重要だと思う5つの項目」がまとめられています。

  1. 常に改善、常に前進
  2. Professionalismの徹底
  3. 仮説→実行→検証→仕組化
  4. 顧客満足の最大化
  5. スピード‼スピード‼スピード‼

それでは、個人的に気になったところをかいつまんでまとめていきます。

 

常に改善、常に前進

第一のコンセプトは『常に改善、常に前進』。

過去十年間のインターネット環境の激変を鑑みて、三木谷浩史

未来へのビジョンを立てるのが難しいのは、未来が不確定だからだ。未来を予測することができても、未来を見ることはできないのだ。

と言います。

その上で、不確定な未来に対する戦略は大きな2つのタイプに分けられるとする。

   とにかく種をばらまいて、目を出したものだけ育てる

    (=ダーヴィニアン・アプローチ)

   バージョンアップと細かく重ねながら、少しでも先行者に追いつき、

   最終的には大きな成功を手に入れる。

三木谷浩史からすると、楽天は後者に近い性質らしい。

Window OSのように、まずはリリースした上で細かく改善を重ねながら、少しでも先行者に追いつき、最終的に大きな成功を手に入れる。

たとえ毎日1%の改善でも、1年続ければ37倍になる。

1.01の365乗は37.78.

毎日1パーセントの積み重ねが、一年で大きな飛躍につながるのです。

 

Professionalismの徹底

ビジネスで成功するかどうかの鍵は、結局のところ、仕事を人生最大の遊びにできるかどうかだ。

本章に関しては上の一文に尽きます。

一般的に「素人のかなわない特殊な技術を持つ人」という意味を指すプロフェッショナルという言葉に、三木谷浩史は別の定義を与えます。

そして楽天という会社は、そんなプロフェッショナルの集団を目指すと言う。

面白い仕事があるわけではない。

仕事を面白くする人間がいるだけなのだ。

 

仮説→実行→検証→仕組化

問題解決には以下の2つの方法がある。

  • 仮説・実行・検証

   未知の問題に直面した時の人間の基本的な行動パターン

  • 模倣・学修

   他の誰かが見出した解決法を模倣する

ビジネスの現場において、特に新入社員時代には後者に偏りがちである。ところが、

一所懸命に仕事の勉強をしているうちに、自分の頭で考えて問題を解決するという方法があることを忘れてしまう。

……思わずハッとしてしまいますね。

現代においては「勉強」=「試験で良い点数を採る事」という教育が長い間続いていたために、余計にそんな側面が強いのではないでしょうか。

もっとも最近では、答えを学ぶ勉強から考える力をつける勉強へと、教育の現場も変わりつつあるようですが。

確かに今から10年前とはいえ、その頃には既に「指示待ち人間」という言葉が生まれていたようにも思えます。

ではどうすれば良いかというと……

どんな仕事の時でも、“そもそもこの仕事は何のためにするのか”を考える。

最近よく聞かれる「物事の本質を捉える」という言葉と一緒ですね。

本質がわかれば、改善の仮説も自然に湧いてくるのです。

では、楽天はというと、一例として楽天市場オープン時の仮説が挙げられています。

当時先行していたECサイトはモール側に主導権があり、ユーザーとコミュニケーションをとるのはモール側だった。

しかしそこに、三木谷浩史は疑問を感じます。

本当に売りたい商品を消費者にPRするのは出店者自身の方が説得力があるはず。また、消費者の生の声も出店者自身に届けたい。

楽天市場はそうして、出店者自身にユーザーとコミュニケーションをとってもらうことになります。

これこそが楽天市場の大きな差別化ポイントになり、オープン初月には18万円しかなかった楽天市場が毎月400億円を超える急激な成長を遂げました。

これが楽天市場のいちばん革新的なポイントであり、今も尚Amazon等の他のECサイトとの差別化にもつながっているのです。

 

さて、一つだけ抜けているのが「仕組化」という言葉ですが、これについては簡単に書きに記します。

  • 改善を続けられる仕組み
  • 仮説・実行・検証によって到達した効率的な仕事のやり方や、新しいビジネスモデルを、組織全体で共有するための仕組化。

仮説・実行・検証したものを仕組化してはじめて意味がある、という考え方です。

 

顧客満足の最大化

個人をエンパワーメントすることが、僕の仕事のモチベーションだ。

ついに飛び出しました。エンパワーメント。

聞きなれない言葉ですが、実は現在も楽天という会社のあちらこちらでよく見られる言葉です。

僕がショッピングモールというビジネスでいちばんやりたいのは、インターネットを通じたエンパワーメントだ。格好良く言えば、インターネットが潜在的に持っている革命的な力を、個人商店や中小の企業に開放し、個人商店や中小の企業を元気づけることが僕たちの使命だと思っている。

それまでは良い商品・技術を持ちながらも地方の片隅で人口減少とともに疲弊していた小さな企業が、インターネットを通して世界中の人々とつながる事で、元気を取り戻すというのです。

この言葉通り、創業当時の楽天市場とともに飛躍的な発展を遂げた企業もたくさんあるのでしょう。

現在ではメルカリが、それまでは消費者でしかなかった市民一人ひとりが販売側に立てるという新たなビジネスモデルを確立しました。

民泊やカーシェアリングといった俗にいうシェアリング・エコノミーもそうかもしれません。

インターネットのなかった時代に、インターネットとともにやってきた楽天市場というサービスは、それらと同じような、もしかしたらもっともっと大きな変革を世の中にもたらしたのかもしれません。

 

スピード‼スピード‼スピード‼

当事者意識を持って仕事をすればスピードは自然に上がる。

5つ目のコンセプトは、ある意味ではわざわざ取り上げるほどのものでもないのかもしれませんね。

スピードは今活気のある企業には必須の能力と言えるかもしれません。

三木谷浩史はさらに、スピードを上げる方法としてこう言います。

まず最初に行うことは、目標を設定することだ。

目標を決めると、そこに至るまでの道のりが見えてくる。俯瞰して大雑把に全体を見渡したら、全体の行程をいくつかの小さな目標に因数分解する。

それらの小さな目標を一つ一つ常識的な速度で達成するのではなく、最終目標をいつまでに達成するかを決めてから逆算し、個々の小さな目標をクリアするのにかける時間を割り出す。

当然のことながら、割った時間は常識で考えればあまりに短いはずだ。

けどそれが、自分の登るべき断崖なのだ。

うひゃーという感じです。

これぞ楽天、ですね。

三木谷浩史は2000年の春ごろに、流通総額1兆円という目標を立てます。

流通総額1兆円を達成したら、イッチョウ上がりで俺はリタイアする

その目標は2006年に早々と達成してしまったものの、1兆円を目指す途中でもっと高い山の頂が見えてしまったので、引退は撤回したのだそうな。

朝令暮改も、有名な経営者にはよく見られる傾向かもしれませんね。

 

特筆すべきは三木谷浩史のブレなさ!

先に書いた通り、本書は2007年に書かれた本です。

それから10年以上経っているというのに、驚くのは今も昔も三木谷浩史の理念は変わっていないというところ。

今もずっと、同じ考えを貫き続けているのです。

「ワンマン」「ブレまくり」と揶揄されることも多い楽天ですが、これを読めばしっかりと芯が通っていることもわかります。

Amazonに比べて見にくい、UIが悪いと言われがちの楽天市場も、「個々の商品を売るAmazon」と「店を構えて商品を売る楽天市場」で違うのは当たり前なのです。

Amazonは見やすく、シンプルなUIである一方、出店者にとっては差別化が図りがたく、結果として値引き競争に陥りがちと言えます。同じ商品であれば、安い方を選びますよね?

ところが楽天はあのごちゃごちゃしたサイトであるからこそ、個々の店舗の個性を打ち出し、他店との差別化を図る事が可能なのです。

ある意味では「ユーザーに寄り添うAmazon」と「出店者に寄り添う楽天市場」と言えるかもしれません。

まぁ、時と場合によって使い分けるだけですが。

 

日本を代表するIT企業だけあってかなり極端なところも多いですが、読んでみた感想として他の有名企業とそう大きくは違わないかなぁ、という印象です。

改善もスピードも仕組化も、いろんな経営者さんやビジネスマンが唱えていますもんね。

現職ですっかり疲弊してしまい、胃が痛い毎日を過ごす中で、良い気分転換になりました。それとともに、やっぱり自分のいるべき環境について考えなおしてしまいましたね。

やっぱり僕にとっては、楽天のような今風の会社の方が性に合っているようです。

全部が全部礼賛できるわけではありませんが、こういった今時の勢いのある企業の取り組みや考え方を、地方の中小企業の経営者さん達も真似して欲しいものです。

あ、楽天の本、まだしばらく続きます。

小説に比べてまとめるのに時間がかかる分、アウトプットが遅れていてすみません。

頑張って更新したいと思います。

https://www.instagram.com/p/BlNpKP3HGl7/

#成功のコンセプト #三木谷浩史 読了しばらく更新が途絶えてすみません。仕事が忙しいのに加えて、こういう本はまとめるのに時間がかかって大変です。三木谷浩史は言わずとしれた #楽天 の創業者であり社長です。彼がビジネスにおいて重要と考える5つのコンセプトをまとめたのが本書。2007年に書かれた本でありながら、現在とほとんど言っている内容が変わりません。楽天というと何かと叩かれたり、悪いイメージもありますが、実際にはしっかりと芯の通ったブレない会社である事がわかります。ブラック企業で疲弊しつつある僕にとっては自分の立ち位置を見直す良い機会にもなりました。古い本とはいえ、今読んでも得られるものは少なくないと思います。興味のある方はご一読を。#本 #本好き #本が好き #活字中毒 #読書 #読書好き #本がある暮らし #本のある生活 #読了#どくしょ #読書好きな人と繋がりたい#本好きな人と繋がりたい ..※ブログ更新しました。プロフィールのリンクよりご確認下さい。

『騙し絵の牙』塩田武士

 

「実は少し前から『トリニティ』が危ないと聞かされてたんだけど、いよいよ危険水域だ。まず『小説薫風』がなくなる」

ええと……今回読んだのは塩田武士『騙し絵の牙』
この本、色々と話題に事欠かなくてどこから触れて良いものか悩ましいのですが……以前ご紹介したかがみの孤城と同じ2018年本屋大賞のノミネート作品でもあります。
伊坂幸太郎『AX』、小川糸『キラキラ共和国』、原田マハ『たゆたえども沈まず』、村山早紀『百貨の魔法』と、最近よく目にする著名人が漏れなくラインナップされた2018年本屋大賞は、辻村深月さんのぼくの予想通りかがみの孤城が大賞に輝きました。

linus.hatenablog.jp

全10作のノミネート中、『騙し絵の牙』は第6位。
塩野武士さんは昨年の『罪の声』3位に続き、二年連続のノミネートです。

……とまぁ、賞レースの結果としては上記のような内容となりますが、本作については本屋大賞というよりは別の部分で話題を呼んだようです。
それが……


アテガキ大泉洋

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目を惹くのはそのカバー。

水曜どうでしょう』をはじめ、バラエティや俳優としてもお馴染みの大泉洋さんが表紙となっているのです。
それもそのはず、本作は芸能事務所とKADOKAWAの編集者のタイアップにより、主人公役に大泉洋を設定した上で「完全アテガキの社会派小説」として書かれているのです。

確かに主人公の速水輝也はもじゃもじゃのヘアスタイルといい、軽妙でユーモラスな言動で周囲の人間を煙に巻く様子といい、確かに大泉洋を彷彿とさせます。

詳細はKADOKAWA社の作品紹介ページに書かれていますが、物真似のレパートリーまで大泉洋本人の持ちネタにこだわるといった徹底ぶり。

大泉洋ファンの方にはたまらない作品と言えるのかもしれません。

www.kadokawa.co.jp

……そんな風に書くと「なぁんだ、企画モノか」と興ざめしてしまう天邪鬼な方も少なくないと思います。

ところが「単なる企画モノ」で済まないのが本書の優れた点です。

 

リアルに描かれる出版業界

主人公速水は大手出版社「薫風社」に勤め、雑誌『トリニティ』の編集長でもあります。
昨今の出版不況は「薫風社」においても例外はなく、漫画や文芸誌が次々と廃刊に追い込まれていきます。
「薫風社」の方針は明確に「電子化への転換」でありますが、電子化・廃刊は既存読者への裏切りでもあり、速水たち現場の編集者たちはなんとか紙での発行を継続しようと試行錯誤していくのです。
そこには連載による原稿料でなんとか生計を立てる小説家や、間違いなく利益を保証できる人気作家の奪い合い等、出版業界を取り巻く様々なリアルが垣間見えます。
速水たち『トリニティ』が取った策も、雑誌そのものの売り上げではなく、雑誌に連載されているエッセイや小説といった作品の二次利用による売り上げ確保である事からも、出版業界の厳しさが目に見えるようです。
速水も敏腕編集者として、接待にしくじりへそを曲げた作家をとりなしたり、意気消沈したり、時にいがみ合ったりする編集部員たちの仲を取り持ったりと、次々と巻き起こる大小様々な問題に立ち向かいます。
さらに仕事だけではなく、速水の家庭にも難しい問題が浮上し……

確かに本作は、「社会派小説」なのです。


塩田武士の本領発揮

著者の本は以前『罪の声』を読んだキリだったのですが。
正直なところ、『罪の声』はただただ捜査日記を読まされた感があって退屈且つ苦痛でした。
リアリティを目指したがために、エンターテインメント性を失ってしまったというか。
グリコ森永事件と言われても「なんとなく聞いたことがある」という世代的にはさっぱりピンと来ず……。

linus.hatenablog.jp

ところが本作はリアリティを追求しつつも、本質としてフィクションであるせいか、『罪の声』よりも数倍物語として楽しめました。
特に上に書いたような出版業界に巻き起こる様々な問題は、僕らのような本を読む側の人間にとっても興味深く楽しめるものだと思います。
僕は大泉洋ファンではないのでなんとなく彼のイメージを知っているぐらいですが、それでも十分楽しめましたし。
『罪の声』で脱落してしまったという方にも、本書は一度読んでいただきたいです。
少し違った物語作家としての塩田武士を実感できるかと思います。


エピローグは“蛇足”

残念なのはエピローグだけですね。
“蛇足”の一言です。
そんなのなくても十分楽しめたと思うんですが、塩田武士という作家はどうしても種明かしみたいなものを書かないと気が済まない性分なのかもしれませんね。 

理由とか動機みたいなものって、推理小説でもない限り必須ではないと思うんです。
ましてやそれが読者の前には一切ヒントとして提示される事もなかったような真相だとすると、取ってつけた感はどうしても否めませんよね。

先日読んだ検察側の罪人は序盤の段階で物語の鍵となる過去の事件について語られた上、その後の展開においても過去の事件との心理的関係性等が描かれていましたから、過去と現在とのつながりが非常にわかりやすくスムーズに呑み込めました。
しかし、すべてが終わった後で「実は過去にこういう事がありました」なんて言われても。。。
途中、本人すら一切そんな感慨見せなかったじゃん、と。

この辺は人称や視点の問題もあるのかもしれませんが、いずれにせよ本作の構成としてエピローグは蛇足でしかありません。

ラストさえちょっと変えていれば、もうちょっと高い評価だったと思うんだけどなぁ。

残念です。

linus.hatenablog.jp

まぁ、早速主演に大泉洋を迎えての映像化も動き出したようですから、そちらも期待しましょう。

www.kadokawa.co.jp

https://www.instagram.com/p/BkuyKDrHJNC/

#騙し絵の牙 #塩田武士 読了#大泉洋 をアテガキしたという話題作確かにこれは大泉洋ですよ頭ももじゃもじゃだしそれよりも書いておきたいのは本作が「今の出版業界を描いたリアルな社会派小説」であるという点出版不況が叫ばれる昨今、実際に出版社の中では何が起こり、業界としてどこへ向かおうとしているのか。そんな点が非常にリアルに描かれていて思わず読み込んでしまいます。残念なのはエピソードの取ってつけた感だけこんなのいらなかったのにねそこまでが良かっただけに、エピソードがとにかく残念#本 #本好き #本が好き #活字中毒 #読書 #読書好き #本がある暮らし #本のある生活 #読了#どくしょ #読書好きな人と繋がりたい #本好きな人と繋がりたい ..※ブログも更新しました。プロフィール欄のリンクよりご確認下さい。

『検察側の罪人』雫井脩介

 君たちはその手に一本の剣を持っている。法律という剣だ。こいつは抜群に切れる真剣だ。法治国家においては最強の武器と言ってもいい。 

今回読んだのは検察側の罪人

クローズド・ノート以来の雫井脩介作品となります。

linus.hatenablog.jp

クローズド・ノート』もストーリーとしてはよくある平凡なものでしたが、文章が上手でサクサク進む上、次々登場する万年筆のおかげですっかりのめり込んでしまえるなかなか良いお話でした。

それ以来ご無沙汰していましたが、雫井脩介さんは以降も「このミステリーがすごい!」や「週刊文春ミステリーベスト10」に次々と作品がノミネートされる活躍をされていたのですね。

安定した良作を送り出す間違いのない作家さんの一人なのでしょう。

 

二人の検事

物語は東京地検の検事である最上毅と、彼の元にやってくる新米検事沖野啓一郎の視点で進みます。

最上に憧れ検事の道に進んだ沖野は、念願叶って最上と一緒に働く機会を手にします。

はじめの内は期待に違わぬ最上のベテランぶりに心酔する沖野でしたが、二人の元に一つの事件が迷い込みます。

家賃収入から個人的に金貸しをしていた老夫婦が自宅で斬殺される事件。

事件の重要参考人として並べられた名前の中に、最上は一人の男を見つけます。

23年前、最上が下宿していた先の娘が何者かに殺害される事件がありました。

松倉はその女子中学生殺人事件でも犯人ではないかと疑われていた男だったのです。

しかし罪を暴く事はできないまま、あえなく時効を迎えていたのでした。

老夫婦の殺害容疑で取り調べを受ける中、松倉は執拗な追及に耐え兼ね、女子中学生殺人事件の犯人は自分であったと遂に自白してしまいます。しかし今回の老夫婦を殺したのは自分ではないと主張。

ところがそれを聞いた女子中学生殺人事件の関係者である最上の中で、どこか理性のタガが外れていってしまいます。

何が何でも松倉を立件しおうと画策する最上と、違和感を感じながら尊敬する最上に従い、振り回される沖野。

やがて二人の間に決定的な転機が訪れ……

 

……

 

……

 

……

 

もう、このぐらいでいいですよね?

あとはもう、読んで下さい。

目茶苦茶面白いですから。

いったんハマれば一気読み間違いなしです!!!

 

 

2018年8月24日、映画化!

なんと本作、木村拓哉二宮和也のW主演で映画化されます!

kensatsugawa-movie.jp

僕も『羊と鋼の森』を観に行った際に劇場の予告で知りました。

www.youtube.com

そこですっかり魅了されてしまいまして、「これは読むしかない」とさっそく手に取ったわけです。

木村拓哉二宮和也の共演ってインパクトありますよね!

予告編の緊迫した雰囲気がまたなんとも言えず期待感を醸成してくれます。

原作も面白かったし、読んだ感想としては二人の配役もばっちりだと思います。

 

それにしても驚きは木村拓哉さんの根強い人気ぶり。

実は僕、Instagramの他にTwitterのアカウントも持っています。

大体本を読んだ後の流れとしては

 読書ノート

   ↓

  ブログ

   ↓

 Instagram

   ↓

  Twitter

という順序でアップしているんですけど、時々Twitter単体でもツイートしたりしてます。

特に「これからこの本を読むぞ」とか、読んだ後のざっくりとした感想なんかを書き込んだりすることもあるのですが、今回の『検察側の罪人』もあまりにも没頭して読んでしまった為に興奮冷めやらず、その勢いのままツイートしたんですね。

すると……

フォロワーが1,000人を超えて増加中のInstagramと異なり、Twitterは普段だいぶ低調なんですけど、このツイートだけやたらと「いいね!」や「リツイート」が多いんです。

そのほとんどのアカウントがまさかの木村拓哉ファンの皆様。

SMAP解散報道では一人だけ悪者扱いされたり、凋落ぶりが弄ばれる事も多いですが、やっぱり根強いファンの方々は多いんですね。

僕も結構好きです。

多分他にも少なくないんじゃないかと思うんですが、木村拓哉が役者として殻を破って新たな姿を見せてくれるのを期待してしまうんです。

よく木村拓哉に対して「何を演じてもキムタクにしかならない」という辛辣な意見も目にしますが、もしかしたら本作では今まで見たことのない木村拓哉を見せてくれるんじゃないかと個人的に期待しています。

劇場公開の際には、絶対に観に行きたい作品です。

まだしばらく期間があるので、忘れないよう気をつけます!

https://www.instagram.com/p/BkZZHrSnxXd/

#検察側の罪人 #雫井脩介 読了当たりです。目茶苦茶ハマりました。ベテラン検事最上と彼に憧れて検事となった若手検事沖田。二人の元に迷い込む殺人事件の参考人の中に、既に時効を迎えた23年前の事件で犯人に一番近いと目されながらも逮捕を見送られた男、松倉。その事件で殺害されたのは最上も親しくしていた下宿先の一人娘だった。最上は今度こそなんとかして松倉を追い詰めようと試みるも、沖田には他の可能性を全て否定するかのように頭から決めつける最上の方針に戸惑いを隠せない。やがて二人のすれ違いは大きく広がり……。 いや、もうね、ヤバいですよ。一気読みです。ちなみに8/24には劇場版も公開されるそうで、しかも #キムタクと #ニノ のW主演!頭の中はすっかりその二人のイメージで読み込んでました。映画も絶対見に行かないと!強くオススメしますのでぜひ読んでみてくださいね。#本 #本好き #本が好き #活字中毒 #読書 #読書好き #本がある暮らし #本のある生活 #読了#どくしょ #読書好きな人と繋がりたい #本好きな人と繋がりたい ..※今回も読書ブログ更新しました。気になる方はプロフィールのリンクよりご確認下さい。

『連続殺人鬼カエル男』中山七里

きょう、かえるをつかまえたよ。

はこのなかにいれていろいろあそ

んだけど、だんだんあきてきた。

おもいついた。みのむしのかっこ

うにしてみよう。くちからはりを

つけてたかいたかいところにつる

してみよう。

ここのところ、中山七里という作家の名前を目にする事が多く感じています。

一番はやはりnstagramでしょうか。

また、書店や図書館でも良い場所に置かれているような気もします。

ただ、僕にとっては完全に未経験の作家さんだったんですよね。

名前は知ってるけど、読んだ事はないという。

ただ、その中でも本書『連続殺人鬼カエル男』だけは特に印象的に覚えていました。

何しろ「カエル男」ですし。

その名の通り、表紙にはカエル男の絵が描かれていますし。

気にはなっていたんですよね。

 

ミノムシのように吊るされる全裸の死体

最初の被害者は新聞配達に発見されます。

階段の踊り場にぶら下がるビニールシートの塊。

つい気になって触れてみたら、中から現れたのは全裸の女性の死体。

しかもフックを口から入れられ、鼻から抜ける形で吊るされるという凄惨な状態。

そこから第二、第三の殺人が次々と起こりますが、いずれもグロテスクな描写のものばかり。

カエル男はあまりにも常軌を逸した殺人犯なのです。

序盤は中山七里の描く猟奇殺人の不気味さを楽しむ時間が続きます。

嫌いな人は、結構最初の方でつまづいてしまうかも。。。

 

事件を追う一人の刑事

男の名は古手川和也。

若き刑事はカエル男の犯人を暴こうと奔走します。

昔から正義感が強く、同級生や友人たちの為に腕を振るってきたという熱血漢。

第二、第三の殺人事件ぐらいまではいわゆる刑事モノの展開が続きます。

被害者が出ては捜査を進めて、手掛かりを探すという感じ。

 

……実はこの辺はかなり冗長です。どうでもよい表現も多く、ちょっと読んでいてキツです。

 

しかし終盤に入るにつれて突然物語は様相を一変します。

民衆が暴徒と化して警察署を襲うシーンに至っては、グロ描写が警官たちであり小手川和也自身に向けられます。

ゾンビのように襲いかかる民衆を相手に、和也たちが肉弾戦を余儀なくされるのです。

そもそも暴徒化する点についてもちょっと説得力薄目なんですけどね。

カエル男に恐怖するあまり警察そのものを襲うというには……カエル男には二桁ぐらい多い人数を殺めてもらわないと無理があったんじゃないかなぁ。

あとは小さな子供だけを大量に手にかける、とかね。

ニ三人殺されたぐらいで「次は自分の番かも」と暴徒化するっていうのは結構無理やり感が強すぎ。

 

さらに暴徒化した民衆と警察とのバトルが本格化すると死体ではなく生身の人間が傷つき始め、グロ描写に拍車がかかります。

身体の一部分ずつ、こっちの骨が砕け、こちらから血が噴き出し……という描写が続くに至っては、その昔プラモデル同士で戦いごっこをしていた頃を思い出してしまいました。

「どうやらアバラの一本もイカれたみたいだぜ」

という一昔前の少年漫画のような描写が展開されていきます。

そうして骨が折れ、体中から血を流しながらも最終的に逆転するというやつです。

初代ガンダムで頭も腕もないまま銃を撃つ感じ。

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言い過ぎかもしれませんが、そうして終盤は肉弾戦が中心となります。

 

どんでん返しの帝王?

どうやら中山七里という作家はどんでん返しで有名だそうで「どんでん返しの帝王」などと呼ばれているそうえす。。

確かに本作でもそれらしき展開が繰り広げられます。

犯人を追い詰め、真相が判明したと思いきやそこから二転三転と。

ただねー……正直、読んでいて想像がついちゃうんですよね。

どんでん返しも周到に伏線が張り巡らせられた挙句、ドカンとひっくり返すというよりは、後出しジャンケンでクルクルぶん回すタイプです。

 

はっきり言ってしまえば、こういうのってあんまり好きじゃないんだよなー。

 

グロ描写も綾辻行人の『殺人鬼』や 平山夢明の『ダイナー』に比べるとちょっといまいち。

『殺人鬼』の〇〇の最中に背後から杭で貫かれるシーンなんて、文字情報にも関わらず未だに思い出してしまいますから。

最近話題の作家さんという事でちょっと期待してたんですが、正直ちょっと期待外れだったかな。

デビュー作であることを考えれば仕方もないのかも。

いずれ最近刊行された話題作にでも手を出してみたいと思います。

それもちょっと時間をおいてからかな。

https://www.instagram.com/p/BkU8zxknLlK/

#連続殺人鬼カエル男 #中山七里 読了 ……と言っても実は #誰かが足りない よりも先に読んだ作品なのですが訳あって順序が逆になってしました。最近よくinstagramやtwitterで目にする中山七里さんですが、読むのはこれが初めてついでに言うと男性というのも初めて知りました。てっきり女性だとばかりで、感想はというとはっきり言ってちょい微妙。序盤の刑事モノ展開は死体がグロいだけで冗長だし、後半の肉弾戦は昭和のヒーロー漫画のようでなんとも。。。 読んだ作品が微妙だっただけかな?中山七里さんならこれを読むべき、というオススメがあればどなたかご紹介くださいな。#本 #本好き #本が好き #活字中毒 #読書 #読書好き #本がある暮らし #本のある生活 #読了#どくしょ #読書好きな人と繋がりたい#本好きな人と繋がりたい ..※今回もブログ更新しました。興味のある方はプロフィールのリンクからどうぞ。

 

 

 

『誰かが足りない』宮下奈津

誰かが足りない。いつからか私もそう思っていた気がする。それが誰なのかはわからない。知っているはずの誰か、まだ会ったことのない誰か。誰なんだろう。いつ会えるんだろう。わからない。ずっと誰かを待っていることだけはわかっているのに

先日『羊と鋼の森』の映画を見てきました。

https://www.instagram.com/p/BkFkH4tnukQ/

原作があまりにも良かっただけに映像化には一抹の不安を感じないでもなかったのですが、事前に公開されたyoutubeの予告動画がとても良い出来だっただけに、見に行かずにはいられませんでした。

www.youtube.com

結果的には本当に見に行って良かったと言えます。

一番最初、学生時代の外村君と板鳥さんの出会いのシーンで響き渡るポーンというピアノの音、そこから感じられる森のイメージの表現……どれも原作の空気感をほぼ忠実に表現していて、すぐに作品の世界に没頭する事ができました。

柳さんが若干体育会系だったり、緻密に書き込まれた原作の細部は流石に省略されてしまったりと全く不満がないわけではありませんが、それでも満足のいく出来だったと思います。

羊と鋼の森』の話は尽きる事がありませんのでこの辺りにしておいて……作品のブログの方にも感想を書き加えていますので、そちらもご覧になって下さいね。

linus.hatenablog.jp

さて、本題である本作『誰かが足りない』のお話です。

本作が刊行されたのは2011年10月。

2007年に『スコーレNo,4』でデビューした著者のキャリアのほぼ中間あたりに位置する作品といえるでしょうか。

僕と同じように『羊と鋼の森』で感銘を受けて、他の作品も読もうと探し回った人は少なくないと思います。

あの作品の衝撃って本当に途轍もなかったですから。

どうして今までこんな素晴らしい作品を書く作家を見逃していたんだろうって、後悔するぐらい。

ところが、何を読んでよいものかわからない。

羊と鋼の森』で一気にブレイクした宮下奈津さんですが、調べてみるとそれまで代表作と呼べるようなものはあまりなさそうなんですよね。

小粒な作品しか書いてこなかったのか、それとも世の中から見落とされていただけなのか。

確かめる為には、とにかく一冊ずつ読んでいくしかないんです。

そんなわけで、僕は以前に『たった、それだけ』を読みました。

linus.hatenablog.jp

悪くはなかったですが、ちょっと物足りなかったのも事実です。

そうして三作目して選んだのが『誰かが足りない』です。

本作は2012年の本屋大賞ノミネート作品でもあります。

結果は7位ということもあり、あまり印象には残らなかったようですが……。

 

雑誌に掲載された連作短編

全6話の連作短編集です。

といっても物語や登場人物にこれといってつながりはなく、それぞれ「ハライ」というレストランが登場する点だけが共通しています。

様々な境遇の登場人物たちが、美味しくて人気の「ハライ」に予約をして、行こうと決めるまでの話。

それぞれが「誰かが足りない」喪失感を抱いている人たち。

……こう書くとなんとも味気ない話に聞こえてしまうかもしれませんね。

でも『羊と鋼の森』を思い出して貰えばおわかりいただけるかと思うのですが、宮下奈津さんって突拍子もないストーリーや展開、荒唐無稽な設定で読ませるタイプじゃないんですよね。

美しい文章と、細かい心理描写が優れた作者さんなのだと思います。

本作では各話の登場人物たちにそのエッセンスが現れています。

 ≪予約1≫故郷を離れ、進学後に意図せずコンビニに就職してしまった青年

 ≪予約2≫亡き夫の想い出を辿る認知症の女性

 ≪予約3≫仕事に追われる日々の中、幼馴染みに想いを寄せる女性

 ≪予約4≫母を失いビデオカメラを通してしか世の中と向き合えなくなった少年

 ≪予約5≫時々訪れる女性客に想いを寄せるコック

 ≪予約6≫失敗を匂いで察知していまう特異な性質を持った女性

それぞれ個性溢れて、宮下奈津さんらしさが出たエピソードかと思います。

個人的には特に後半三作が好きですね。


「ハライ」とは

作中ではそれぞれの口から「ハライ」の人気ぶりが語られています。

その一つ、予約1で主人公の青年と別れた美果子の例を挙げると――

――おいしいのよ。
――感じがいいの。
――やさしくて。
――懐かしい。

とにかくみんなが口々に絶賛するんですよね。

ところが、作中には肝心の「ハライ」は登場しません

冒頭と最後に、6つの短編をまとめる前書きとあとがきのように店内のシーンが若干描かれるばかりです。

なかなか面白い試みですよね。

存在は他者の口から語られるのに本人そのものは姿を現さないという意味では、朝井リョウさんの桐島、部活やめるってよを想起させられます。

そういう意味では宮下奈津さんの中での実験作の一つだったりするのかなぁ、なんて勘ぐってしまったり。

最終的に「ハライ」で6つの話と登場人物が結びついて、1つの大きな話としてまとまるような構成ならばもっと良かったのかもしれませんが……繰り返しになりますけど、宮下奈津さんってそういうギミックを書く作家さんには思えませんもんね。


そして宮下奈津探訪は続く

本作が良かったか悪かったかと言うと、個人的には悪くなかったと思います。

本作で三作目となり、宮下奈津さんという作家の特徴や個性がだんだんと僕の中で形になってきたように感じます。

でもまぁもっと入り組んだパズルのような面白さを求める人にとっては、つまらなく感じてしまう事でしょう。

何度も繰り返していますが、そういうものは宮下奈津さんには求めてはいけないのかもしれません。

それこそが宮下奈津さんという作家の楽しみ方なのかも。

もちろん、これからまだまだ作風が変わっていく可能性も大いにありますけど。

特に『羊と鋼の森』がこれだけの大ヒットになった以上、作者も出版社も次の作品にはかなり力を入れつつ、頭を悩ませているのは間違いありませんし。

僕もたった三作で全てを悟ったなんて言えるはずがありませんので、今後も宮下奈津探訪を続けていきます。

早く「滅茶苦茶良かった!」と大絶賛できるような作品に会いたいですね。

https://www.instagram.com/p/BkOdWvUnYWv/

#誰かが足りない #宮下奈都 読了#羊と鋼の森 でブレイクした宮下奈都さん。ところが他に代表作と呼べる作品がない。本当にないのか、それとも見落とされているだけなのか。確かめ為にはとにかく読むしかない。というわけで #たったそれだけ に続き三作目に挑戦です。人気のレストラン「ハライ」を軸とした六作の短編集。とはいえそれぞれのエピソードに関連はなく、ハライも語られるだけで実際に登場はしない。宮下奈都らしいキレイな文章で一つ一つの作品は悪くないのだけど、全体としてまとまっているかというと今ひとつ。実験作的な匂いがします。でもそもそも突拍子もないストーリーや荒唐無稽な設定で読ませるタイプじゃありませんからね。一つ一つの作品や登場人物はそれぞれ個性溢れて好きです。まだまだ宮下奈都探訪は続きそうですね。#本 #本好き #本が好き #活字中毒 #読書 #読書好き #本がある暮らし #本のある生活 #読了#どくしょ #読書好きな人と繋がりたい#本好きな人と繋がりたい ..※今回もブログ更新しています。プロフィールのリンクよりご確認下さい。


 

『青空と逃げる』辻村深月

 

力と母、そして、父。
親子三人の、東京の日常が失われたのは、夏のはじめ、七月に入ったばかりのことだった。
父が交通事故に遭った、という電話がきたのが、すべての始まりだった。

先日かがみの孤城』が2018年本屋大賞に輝いたばかりの辻村深月さんの新刊『青空と逃げる』を読みました。
かがみの孤城』は本屋大賞が発表になる10日ばかり前に読み、「個人的には本屋大賞を獲ってもおかしくない作品」だなんて大仰な事を書き残していたばかりに、受賞が決まった時はなんだか自分の事のように嬉しかったですね。

linus.hatenablog.jp


一家の再生の物語――

深夜の交通事故から幕を開けた、家族の危機。母と息子は東京から逃げることを決めた。――辻村深月が贈る、一家の再生の物語。

上記は版元である中央公論社の特設ページから引用したものです。
ある日交通事故に巻き込まれた父。
父が乗っていた車はとある著名な女優のものでした。
ほどなくして自ら命を絶つ女優と、行方をくらました父。
周囲の目と父の行方を追う関係者の前から、母と息子は逃げ出します。
行く先々で心優しい人々と出会い、ほっとしたのも束の間、追手の影に脅かされ、その度に逃亡を繰り返す親子。
四国へ、小さな島へ、温泉へ。
まるで角田光代『八日目の蝉』を彷彿とさせるような逃亡の物語です。
満足に感謝も述べられず、再会も約束できずに引き裂かれるようにして繰り返される別れの都度、なんとも切ない想いがこみあげてしまいます。
しかし、姿をくらませた父のその後の消息はなかなか語られず……この親子にいつか本当の意味で心安らげる日々が戻ってくるのかと、読んでいてハラハラせずにはいられません。


描かれる旅情の豊かさ

切なさと悲しさに彩られたような旅路ですが、行く先々で待ち受ける旅情の豊かさにも注目です。
物語が始まるのは四万十川の側の小さな田舎町。
広い四万十川テナガエビ漁に興じる少年の姿から始まります。
続く小さな島では、年上の少女優芽と出会い、美しい瀬戸内海の浜辺や自然豊かな島の様子が描かれます。
温泉街では母自身が砂湯の砂かけさんとして働く事で、古くから伝わる温泉の歴史文化の今の姿が活き活きと語られます。
寂しい逃亡劇であるはずなのですが、どこか美しく、楽しげにも感じられるのはそのせいでしょう。
対人だけではない無数の出会いと別れを経て、親子それぞれが成長をしていく物語でもあるのです。


かがみの孤城』より劣る?

本屋大賞を受賞した作家の新刊とあって最近ではSNS等で見かける事も多い本書ですが、「『かがみの孤城』と比べると劣る」という評価を下されているケースも少なくないように見受けられます。
全554ページの『かがみの孤城』に対し、本書は400ページ弱ですから、そういった点から「スケール感でちょっと」と言われてしまったりもするようです。
でもたぶん、個人的な読みとしては本書の方がかなり手間がかかっているのだと推察します。
逃亡先それぞれについても著者自身が足を運んでいるのは間違いないでしょうし、テナガエビ漁や砂かけといった一つ一つについても、ちょっと見ただけで描いたようには思えません。
終盤では東日本大震災の被災地や被災者の様子にも触れられています。
いかにも「震災を描きました」というような仰々しさではなく、辻村さんらしい何気ない書き方なのですが。
きっと実際に体験をしたり、直接当事者に話を聞いたりしながら、取材を重ねて書かれたのだと思います。
成人式を迎えた娘さんとお母さん、妹のエピソードには思わずほろりとさせられてしまいますね。
ましてや本書は新聞連載作品ですからね。
取材を重ねつつ、途切れ途切れになってしまいがちな新聞連載作品をこうしてしっかりとまとめ上げた技量はさすがだな、と感じ入ってしまいます。
登場人物も多く、それぞれの内面にまで踏み込んだ『かがみの孤城』に比べると、母と子の二人にスポットが向けられた本書が物足りないと感じられてしまうのは無理もないようにも思えますけど、日本全国の様々な土地の様子を詳らかに描いたという面では決してスケール感で劣るものではないと思っています。

 

辻村深月といえば女の子

かがみの孤城』では女の子が主役でしたが、個人的には辻村深月といえば女の子のイメージがあります。
『凍りのくじら』もそうでしたし。
名作『ツナグ』でも主人公の少年よりもむしろ「親友の心得」に出てきた二人の少女の方に強い印象が残っていますし。
ほんと、年頃の女の子を描かせたら天下一品だと思っています。

linus.hatenablog.jp

でもって、どちらかというと男の子は毎回似たような人物造形が多いかなーと感じています。
品行方正で素直で、強くて、しっかり者で。
本作は母親と息子の交互の視点で物語が進められていきますが、やはり似たような位置づけですね。
母親の方が女性らしい人間らしさが際立っているのに対し、まだ小学生の少年は妙にしっかりしていて、むしろ母親を支える王子様のような役回りにも感じられます。
そこがまた辻村作品らしさだと思うので良いのですが、女性の方が読むと逞しく成長していく少年の姿にキュンキュンしてしまうのかもしれませんね。


安心して勧められる本です

かがみの孤城』が話題になりすぎてちょっとハードルが上がり過ぎている感はありますが、結論から言うと本書『青空と逃げる』も安心して勧められる本です。
決して読んで「つまらなかった」と言われるような心配はないでしょう。
最大の謎である「父の行方」という点においても、作中にいくつもの手掛かりや謎が残されていますし、終盤にそれらが解き明かされていく展開にはまんまと没頭させられてしまいます。
なんとなくこのまま『かがみの孤城』の影に隠れたままで凡作として忘れ去られてしまいそうなので、しつこく推しておきましょう。
良い本ですよ。
読みましょう。

https://www.instagram.com/p/BkGiI3mHpsu/

#青空と逃げる #辻村深月 読了#かがみの孤城 で #2018年本屋大賞 を受賞した辻村深月さんの最新作です。ある事件をきっかけに父親が失踪し、大阪・四国・大分・仙台と逃亡を繰り返す母子の物語。かがみの孤城に見られたようなメルヘンさはありませんが、訪れる土地土地の美しい風景や固有の文化とともに、優しい人々との出会いと別れを繰り返す心温まる物語でした。逃亡の物語としては温か目の #八日目の蝉 のような雰囲気も。安心しておすすめできる本です。ぜひ読んでみて下さい。#本 #本好き #本が好き #活字中毒 #読書 #読書好き #本がある暮らし #本のある生活 #読了#どくしょ #読書好きな人と繋がりたい #本好きな人と繋がりたい ..※ブログも更新しました。プロフィールのリンクよりご確認下さい。