乙一
「そこの御嬢さん、ごきげんはいかがですか?」 鴉は気取った聲で言いました。 「だれ?だれかいるの?」 「大丈夫、あやしいものではないのです。ただ、あなたとお話がしたいだけなのですよ」 乙一の『暗黒動画』を読みました。 乙一は僕にとって第一印象が…
奇跡的に声が合わさり、ほんの短い時間だけその感覚につつまれる。そのとき自分の声が、自分の声ではなくなるような気がした。たしかに自分が口を開けて発声しているのだけど、何かもっと大きな意思によって背中をおされるように歌っているようにおもえる。…
僕たちは不安でたまらない。今あるこの感情も、やがて稀薄になっていくのだろうか。はなればなれになって、おぼえている輪郭も、声も、あいまいになっていくのだろうか。でも、もしそうならなかったとしたら? 東京で暮らす自分の心にいつまでも彼女がいたと…
……の瞬間、松永トシオの命は消えた。おそらく即死だった。そして、最後に見たのはアキヒロの顔だった。 三年前、交通事故で視力を失いたった一人で暮らすミチルの家に、殺人の容疑で追われるアキヒロが忍び込む。じっと息を潜めるアキヒロと、徐々に異変に気…
「弥生はなにも悪いことなんかしてないんだろ、だから泣くのはやめなよ」 『GOTH』以来の乙一です。 厳密には別名義である中田永一の『百瀬、こっちを向いて。』は読んでいましたが。 百瀬、こっちを向いて。 (祥伝社文庫) posted with ヨメレバ 中田 永一 …