おすすめ読書・書評・感想・ブックレビューブログ

年間100冊前後の読書を楽しんでいます。推理小説・恋愛小説・歴史小説・ビジネス書・ラノベなんでもあり。

青春小説

『ヘヴンリー・ブルー』村山由佳

この夏――。 私は、お姉ちゃんの年をまたひとつ追い越す。 村山由佳『ヘヴンリー・ブルー』です。 前に書いた『天使の卵』、前回の『天使の梯子』に続く形のシリーズ作品ですね。 ただし本書は前二作は少し性質が違います。 『天使の梯子』が続編だとすれば、…

『天使の梯子』村山由佳

「ほんとに、長かったよな、十年。――もう、いいよ夏姫。もう、いいかげんに解放してやろう。俺らが春妃に縛られてるだけじゃない。春妃のほうも、俺らに縛られてるんだ」 村山由佳『天使の梯子』を読みました。 青春恋愛小説の金字塔とも言われる『天使の卵…

『15歳、終わらない3分間』八谷紬

『つらくても、笑っていたら、いつかきっとたのしくなるよ』 八谷紬『15歳、終わらない3分間』を読みました。 引き続きスターツ出版文庫からの作品です。 こちらも安定のジャケ&あらすじ買い。 なにせあらすじが秀逸です。 詳しくは下部に設置したAmazonの…

『僕は明日、きみの心を叫ぶ』灰芭まれ

《……クラゲの身体の、九十五%の水が涸れました。――来世は幸せになれますように》 灰芭まれ『僕は明日、きみの心を叫ぶ』を読みました。 一応先に付け足しておくと、灰芭まれの読み方に戸惑う方が少なくないようですが≪芭≫は松尾芭蕉の≪芭≫ですから“はいばま…

『一瞬の永遠を、きみと』沖田円

「今ここで死んだつもりで、少しの間だけおまえの命、おれにくれない? 沖田円『一瞬の永遠を、きみと』を読みました。 一時期の放置具合はなんだったのかと訝しまれるような連日の更新ですが、ライトノベル系は読みやすいのでサクサク進んでしまいますね。 …

『放課後図書室』麻沢奏

「記憶違いだったら悪いんだけど」 「うん」 「俺達、付き合ってた?」 「…………」 麻沢奏『放課後図書室』を読みました。 前回読んだのは新潮文庫nexというレーベルですが、こちらもスターツ出版文庫というライト文芸レーベルからの出版作品です。 スターツ出…

『ラメルノエリキサ』渡辺優

わたしにとって、復讐とはどこまでも自分だけのために行うものだ。自分がすっきりするためのもの。すっきりするっていうのは、人が生きていく上でとても大切で重要な事だと私は思う。 渡辺優『ラメルノエリキサ』を読みました。 ご存じでしょうか? 第28回小…

『疾風ガール』誉田哲也

「分かんないかな……力だよ、力。そうやってあんたは、あんたの才能は、周りを潰してるんだって話だよ。殺してるんだって話よ。分かるんだからあたしには。あんたにいっぺん殺されてっから」 しばらく本格推理小説ものが続いていましたが、ちょっと趣向を変え…

『ひらいて』綿矢りさ

無駄に生きてるんだ、もう無駄にしか生きられないんだ。 長い長い『新・平家物語』の読書を終えた後、本棚にたくさんある積読本から選んだのは綿矢りさの『ひらいて』でした。 綿矢りさで読んだ事があるのは2001年に当時17歳という最年少タイ記録で第38回文…

『くちびるに歌を』中田永一

奇跡的に声が合わさり、ほんの短い時間だけその感覚につつまれる。そのとき自分の声が、自分の声ではなくなるような気がした。たしかに自分が口を開けて発声しているのだけど、何かもっと大きな意思によって背中をおされるように歌っているようにおもえる。…

『ぼくらの最終戦争』宗田理

つらいこともありました 楽しいこともありました あっという間に三年過ぎて すてきな仲間になりました 僕の住んでいる地方では、つい先日公立小・中学校の卒業式が行われました。 今年は梅の花が咲くのも早いし、どことなく春めいていて、いつになく卒業ムー…

『夏のバスプール』畑野智美

真っ赤に熟したトマトが飛んできて、僕の右肩に直撃する。 畑野智美『夏のバスプール』を読みました。 第23回小説すばる新人賞を受賞したデビュー作、『国道沿いのファミレス』に続く二作目。 僕にとっての畑野作品に触れるのも、『国道沿いのファミレス』に…

『星やどりの声』朝井リョウ

雨から身を守ることを雨宿りっていうだろう。ここは満天の星が落ちてこないようにする「星やどり」だ。 2018年も12月に入りましたねー。 毎年今ぐらいの時期に入ると、「今年はあと何冊読めるかな?」なんて考えてしまいます。 同時に考えてしまうのが間違い…

『スコーレNo.4』宮下奈都

広くなったり細くなったりしながら緩やかに流れてきた川が、東に大きく西に小さく寄り道したあげく、風に煽てられて機嫌よくハミングする辺りに私の町がある。父の父の父の代あたりまでは、川上で氾濫してよく堤防を決壊させたと聞くけれど、そんな話が冗談…

『ペンギン・ハイウェイ』森見登美彦

風が吹き渡ると、朝露にぬれた草がきらきら光った。キウキウキシキシと学校の床を鳴らすような音が聞こえてきた。広々とした空き地のまんなかにペンギンがたくさんいて、よちよちと歩きまわっているのだった。 『有頂天家族』、『四畳半神話大系』以来の森見…

『吉祥寺の朝日奈くん』中田永一

僕たちは不安でたまらない。今あるこの感情も、やがて稀薄になっていくのだろうか。はなればなれになって、おぼえている輪郭も、声も、あいまいになっていくのだろうか。でも、もしそうならなかったとしたら? 東京で暮らす自分の心にいつまでも彼女がいたと…

『夏を拾いに』森浩美

あの夏を息子と拾いに行くのも悪くない。いや幸せだ。 早速タイトルのネタバレしちゃいましたが。 森浩美『夏を拾いに』です。 和製『スタンド・バイ・ミー』と噂の本作。 だいぶ前に買ってから長い間積読化していたのですが、ようやく読むことができました…

『武道館』朝井リョウ

卒業って何? NEXT YOUをやめるってこと? 僕の中では鉄板の朝井リョウです。 ……とか言いつつ、よくよく調べてみたらブログにはまだ一記事も書いた事がないと気づいて驚き。 ブログを書き始める前だったり、中断していた最中だったりで、まだ書いてなかった…

『かがみの孤城』辻村深月

お前たちには今日から三月まで、この城の中で“願いの部屋”に入る鍵探しをしてもらう。見つけたヤツ一人だけが、扉を開けて願いを叶える権利がある。つまりは、“願いの鍵”探しだ。――理解したか? 2018年本屋大賞ノミネート作品とあって、最近よく見かける辻村…

『君の膵臓をたべたい』住野よる

私も君も、もしかしたら明日死ぬかもしれないのにさ。そういう意味では私も君も変わんないよ、きっと。一日の価値は全部一緒なんだから、何をしたかの差なんかで私の今日の価値は変わらない。 住野よるさん、人気ですねTwitterやInstagramのTLを見ていても、…

『ぼくらのC計画』宗田理

ひとみの髪の毛が、並んで窓から見ている英治のほっぺたに触れた。どうしてこんなに、と思うほど、やわらかい髪だ 再び宗田理です。 今回読んだのは『ぼくらのC計画』。 ぼくらのシリーズの中では比較的地味な作品に入るかもしれませんが、僕の中では強い印…

『ぼくらの天使ゲーム』宗田理

いじめかセックス。これが子どもの自殺の重大な動機であることはまちがいない。 宗田理です。 思い起こすだけで、感慨深くなってしまいます。 というのも宗田理の「ぼくらのシリーズ」は僕が小学校時代にがっぷりとのめり込んだ作品でもあるからです。 本を…

『体育座りで空を見上げて』椰月美智子

それにラブレターには、尾崎豊の『I LOVE YOU』の歌詞ばびっちりと書いてあったのだ。これがまたきつかった。 ああ、あるある(笑)なんて括弧付の笑を浮かべてしまった世代の方には一度読んでいただきたい作品です。 主人公和光妙子の中学一年生から三年生…

『快晴フライング!』古内一絵

でもね、2つの性を生きるあたしたちは強いの。決して諦めたりしないのよ。 弓が丘第一中学水泳部を舞台にしたスポーツ青春もの。 古内一絵のデビュー作でもある『快晴フライング!』は色々といわく付きの第5回ポプラ社小説大賞特別賞受賞作でもあります。 ポ…

『アダルト・エデュケーション』村山由佳

「肉体を伴わない恋愛なんて、花火の上がらない夏祭りみたいだ!」 ……上記はあとがきからの引用。 だいぶ突き抜けた表現ですね← 気づいてみたらまた村山由佳です。 ここ最近は大塚英志か村山由佳かみたいな感じでかなり偏ってんなぁと自分でも思います。 今…

『BAD KIDS』村山由佳

好きになったら、運よくたまたま男だったっていうだけよ。二分の一の確率。あたしの言ってる意味、わかる? 第6回小説すばる新人賞を受賞した村山由佳が、『天使の卵―エンジェルス・エッグ』に続いて集英社から発表した2作目がこの『BAD KIDS』。 20年近く…

『4TEEN』石田衣良

「ぼくが怖いのは、変わることだ。みんなが変わってしまって、今日ここにこうして四人でいるときの気もちを、いつか忘れてしまうことなんだ。」 石田衣良といえばテレビドラマ化もされた『池袋ウエストゲートパーク』が有名かもしれません。 こちらは第129回…

『クドリャフカの順番』米澤穂信

「データベースは結論を出せない」 まぁ、古典部シリーズから抜粋するとすれば↑か「私、気になります」のどちらかで決まってますよね。 アニメ化もされた古典部(氷菓)シリーズ第三作目『クドリャフカの順番』 米澤穂信との出会いは『インシテミル』でした…

『黄色い目の魚』佐藤多佳子

「本気って、ヤじゃない?」 俺が聞くと、村田は理解できないという顔つきになった。「こわくねえ? 自分の限界とか見ちまうの?」 ザクッと胸を刺されたような痛みを感じます。 まだ10代の頃、似たような恐れを何度となく抱きました。 自分の限界を知るのが…

『サンネンイチゴ』笹生陽子

「自分から人にアプローチするのが得意じゃなくて、 向こうから話しかけてくるのを待つのが性に合っている」 この人物像に「ああ」と共感する事が出来たら間違いないんじゃないでしょうか。 個人的には森絵都と並ぶ「優しくて上手な作家」の代表格、笹生陽子…