おすすめ読書・書評・感想・ブックレビューブログ

年間100冊前後の読書を楽しんでいます。推理小説・恋愛小説・歴史小説・ビジネス書・ラノベなんでもあり。

『リリイ・シュシュのすべて』岩井俊二

僕らは待たなければならない。大人になるのを。 けれど、成長には個人差があって、僕はちょっと遅めだったが、星野は早熟だった。 早すぎる成長。脱皮の季節。 けれど、世間は早熟なもののだっびをそう易々と許してくれない。 期限切れのサナギは、学校とい…

『朝日新聞の「調査報道」』山本博

栃木県・那須町の国有林三百七十一ヘクタールと新潟県・関川村の民有林四百二十五ヘクタールが交換されたのは一九六四年と六五年のこと。坪(約三・三平方メートル)当たり立ち木も含め八十三円から六十一円の間でほぼ等価交換され、差額の百八十一万円が小…

『キリエのうた』岩井俊二

世界はどこにもないよ だけど いまここを歩くんだ 希望とか見当たらない だけど あなたがここにいるから 岩井俊二『キリエのうた』を読みました。 説明は不要ですね。 10月13日(金)より全国公開となった映画『キリエのうた』の監督岩井俊二自身が書いた原…

『ドキュメント自治体汚職 福島・木村王国の崩壊』吉田慎一

「捜査を振り返って、木村を頂点とする数々の不正事実があった。捜査の対処になったか否かを問わず、一連の不正事実に関与した人は、木村の起訴を”自らの起訴”と心に銘記し真摯な反省をしてほしい」 吉田慎一『ドキュメント自治体汚職 福島・木村王国の崩壊…

『猛牛(ファンソ)と呼ばれた男―「東声会」町井久之の戦後史』城内康伸

「ヤクザなんて時代に逆行している。こんなことじゃ駄目だ。そんな生き様はやっちゃいけないんだ」 城内康伸『猛牛(ファンソ)と呼ばれた男―「東声会」町井久之の戦後史』を読みました。 おそらくですが、当ブログやインスタを見ている人で、本書を知っている…

『雪の炎』新田次郎

「山の中で起こったことは、山の中でけりをつけて、里まで持ち帰らないのが、アルピニストのルールじゃあないでしょうか」 新田次郎『雪の炎』を読みました。 『孤高の人』をはじめ山岳小説家として数々の名作を生み出してきた新田次郎ですが、改めて調べて…

『疲労凍死/天幕の話』平山三男

「保志! しっかりしろ」「……はい」 返事は弱々しい。保志の唇を雨が伝った。血の色は失せて白い。「名前、名前、言ってみろ」「保志……芳雄」「何歳だ?」「十六歳」「今、どこにいるかわかるか?」「……」「どうした? 今どこにいるんだ。何してるんだ」「わ…

『終わった人』内館牧子

定年って生前葬だな。 内館牧子『終わった人』を読みました。 内館牧子という名前は聞いた事はあるものの、小説作品を読むのはこれが初めてです。 僕にとっては小説家というよりは有名な脚本家、もしくは度々ニュースで目にする大相撲の偉い人、という印象で…

『リーダーの仮面』安藤広大

リーダーの仮面をかぶって仕事を進めて、人から嫌われたとしても、それはあなたの人格が否定されたわけではありません。 いちいち落ち込む必要などないのです。 安藤広大『リーダーの仮面』を読みました。 当ブログでビジネス書・自己啓発書の類を取り上げる…

『マディソン郡の橋』Robert James Waller

〈この曖昧な世界では、これほど確信のもてることは一度しか起こらない。たとえ何度生まれ変ったとしても、こんなことは二度と起こらないだろう〉 ロバート・ジェームズ・ウォラー『マディソン郡の橋』を読みました。 今さらご紹介するまでもなく、滅茶苦茶…

『すべて真夜中の恋人たち』川上未映子

真夜中は、なぜこんなにきれいなんですか。真夜中はどうしてこんなに輝いているんですか。どうして真夜中には、光しかないのですか。 川上未映子『すべて真夜中の恋人たち』を読みました。 今年の春先から続いていた乃木文学の追求も前回の『こころ』をもっ…

『こころ』夏目漱石

痛ましい先生は、自分に近づこうとする人間に、近づくほどの価値のないものだから止せという警告を与えたのである。 夏目漱石『こころ』を読みました。 『坂の上の雲』以来、乃木希典の殉死に影響を受けたと言われるいわゆる”乃木文学”を読んできましたが、…

『興津弥五右衛門の遺書』森鴎外

いかにも某は茶事の心得なし、一徹なる武辺者なり、諸芸に堪能なるお手前の表芸が見たしと申すや否や、つと立ち上がり、脇差を抜きて投げつけ候。某は身をかわして避け、刀は違棚の下なる刀掛に掛けありし故、飛びしざりて刀を取り抜き合せ、ただ一打に横田…

『将軍』芥川龍之介

が、自殺する前に――」 青年は真面目まじめに父の顔を見た。「写真をとる余裕はなかったようです。」 芥川龍之介『将軍』を読みました。 一時期青空文庫にはまっていた時期があって、芥川龍之介はよく読んだんですよね。 未だに『地獄変』『鼻』『蜜柑』『芋…

『坂の上の雲』司馬遼太郎

「敵艦見ユトノ警報ニ接シ、聯合艦隊ハ直ニ出動、之ヲ撃滅セントス、本日天気晴朗ナレドモ波高シ」 今年に入ってから沖縄関連の小説を紹介して以来、すっかりブログの更新が途絶えていましたが……実は『坂の上の雲』に挑戦していました。 『竜馬がゆく』や『…

『ぼくらの秘島探検隊』宗田理

「去年おれたちが戦った相手は、親や先公だった。こんなのは言ってみりゃ戦争ごっこだ。しかしこんどはちがう」 宗田理『ぼくらの秘島探検隊』を読みました。 いや~、盲点でした。 ここしばらく沖縄に関する作品を探して読んでおきながら、本作の事をすっか…

『琉球の風』陳舜臣

――明国を親とし、薩摩を兄とする。 陳舜臣 『琉球の風』を読みました。 タイトルからもわかる通り沖縄を舞台とした作品ですが、太平洋戦争に関連した『太陽の子』や『首里の馬』とは少し扱っている時代が違います。 本作で描かれているのは江戸時代初期――そ…

『首里の馬』高山羽根子

「いえ、いえ。孤独だからなんていう要素が理由になる仕事は、厳密には世の中にありません」 高山羽根子『首里の馬』を読みました。 前回『太陽の子』の記事で書きましたが、急遽会社で沖縄旅行に行くことになりまして。 沖縄に対して「首里城」「ひめゆりの…

『太陽の子』灰谷健次郎

「知らなくてはならないことを、知らないで過ごしてしまうような勇気のない人間に、 わたしはなりたくありません。そんなひきょうな人間になりたくありませ ん」 灰谷健次郎の『太陽の子』を読みました。 1978年の出版なので今から約50年近く前の作品ですね…

『とらドラ!』竹宮ゆゆこ

「俺は、竜だ。おまえは、虎だ。――虎と並び立つものは、昔から竜と決まってる。だから俺は、竜になる。お前の傍らに居続ける」 竹宮ゆゆこ『とらドラ!』を読みました。 そろそろkindle Unlimitedの解約を考えていまして……というのも、ちょっとめぼしい本は…

『ひそやかな花園』角田光代

「ねえ樹里、はじめたら、もうずっと終わらないの。そうしてもうあなたははじめたんでしょ。決めたときにはもう、はじまってる。悩んでる場合じゃないわよ」 角田光代『ひそやかな花園』を読みました。 角田光代といえば、当ブログにおいても既に5冊をご紹介…

『眠れるラプンツェル』山本文緒

私は夫を愛している。好きなことだけして生きていくために、結果的には嫌いなことも懸命にこなしているらしい、夫が。 山本文緒『眠れるラプンツェル』を読みました。 先月『あなたには帰る家がある』を読んだばかりですので、短いスパンで山本文緒作品が続…

『やがて海へと届く』彩瀬まる

「あなたたちは、忘れられることがいやじゃないの?」 「そりゃ、覚えてもらえたら嬉しいけど。でも、あんな死に方をしたかわいそうな子って意味でならいやだなあ」 「なにをとっといてもらうかです。よくある、忘れない、無念を忘れないみたいな、暗いこと…

『雪国』川端康成

国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。 川端康成『雪国』を読みました。 ノーベル文学賞を受賞した偉大なる文豪ですので、今さら改めて説明するような事もないのですが……本作をKindle Unlimitedで見つけ…

『あしたはうんと遠くへいこう』角田光代

そうやって禁止事項で自分を追いつめ、さらに事態を悪化させるぐらいなら、と悩んであたしが考えた解決策は、「修三瞑想時間」だった。夏休みのあいだ、一日に一時間半、縁側に座って物思いにふける。その時間内だけは、野崎修三のことをどれだけ考えても、…

『護られなかった者たちへ』中山七里

護らなくてもいい人間が存在しないのと同じ理屈で、殺されてもいい人間など存在 しない。 中山七里『護られなかった者たちへ』を読みました。 大ベストセラー作家中山七里作品としては『連続殺人鬼カエル男』以来二作目となります。 Kindle Unlimitedでも常…

『スタープレイヤー』恒川光太郎

あなたはここで〈十の願い〉という力を与えられております。それはですな、どんな 願いでも、といったら著しく語弊がありますが、〈ある程度、どんな願いでも〉十個 ぶん叶えることができるんです 恒川光太郎『スタープレイヤー』を読みました。 恒川光太郎…

『人形はなぜ殺される』高木彬光

ところが、魔術師というものは、右手で細工をしようと思ったら、まず左手にお客の注意をひきつける。 『右手を出されたら、左手を見よ』 これが魔術の公式第一条なんだ。 高木彬光『人形はなぜ殺される』を読みました。 聞きなれない書名だという方も少なく…

『昨日の海は』近藤史恵

「だから、帰ってきたんですか?」 真実を見つけるために。 そう尋ねると、芹は首を横に振った。 「違うわ。帰ってきたのはここで生きるため」 夕日が海の向こうに沈もうとしている。 「でも、ここで生きるためには、なにもかも曖昧なままで置いてはおけない…

『教室に雨は降らない』伊岡瞬

晴れた朝はガンズ・アンド・ローゼスと決めていた。 それもデビューアルバム。今朝も彼らの曲を口ずさみながら、最後の直線でスロットルをふかした。 伊岡瞬『教室に雨は降らない』を読みました。 こちらもKindle Unlimitedで不意におすすめに出てきた作品。…