おすすめ読書・書評・感想・ブックレビューブログ

年間100冊前後の読書を楽しんでいます。推理小説・恋愛小説・歴史小説・ビジネス書・ラノベなんでもあり。

推理小説

『人形はなぜ殺される』高木彬光

ところが、魔術師というものは、右手で細工をしようと思ったら、まず左手にお客の注意をひきつける。 『右手を出されたら、左手を見よ』 これが魔術の公式第一条なんだ。 高木彬光『人形はなぜ殺される』を読みました。 聞きなれない書名だという方も少なく…

『家守』歌野晶午

歌野晶午『家守』を読みました。 改めて書く必要もないかもしれませんが、歌野晶午といえば第57回日本推理作家協会賞と第4回本格ミステリ大賞をW受賞した『葉桜の季節に君を想うということ』や、二度目の本格ミステリ大賞に輝いた『密室殺人ゲーム』シリーズ…

『消えない夏に僕らはいる』水生大海

小学五年生の夏は特別だった。五人はみな、そう思っている。 けれど高校一年生の夏もまた、特別だ。 水生大海『消えない夏に僕らはいる』を読みました。 新潮文庫nexというレーベルから出ている作品。ライトノベル……というよりライト文芸的なレーベルなんで…

『ハサミ男』殊能将之

「チョキ、チョキ、チョキとハサミ男が行く。三人目の犠牲者が出る。血が流れ、苦痛がみちあふれる。人々は恐怖し、激怒し、おびえ、あるいはおもしろがる……」 殊能将之『ハサミ男』を読みました。 説明するまでもないですが、ミステリ界隈では超がいくつも…

『追想五断章』米澤穂信

集められた断章が示唆するものは、不幸ながらも彩りに満ちた人生。望むと望まざるとにかかわらず、主人公に押し上げられた男の物語。その劇に芳光はいまや背を向けることしかできない。 さて、連日の更新になります。 今回ご紹介するのは『追想五断章』。み…

『青空の卵』坂木司

鳥井を一人にすることは、どうしてもできないのだ。だって鳥井には、僕しかいないのだから。 坂木司『青空の卵』を読みました。 坂木司といえば『和菓子のアン』が有名で、北村薫や米澤穂信にも並ぶ”日常の謎”を題材としたミステリ作家としても知られていま…

『七回死んだ男』西澤保彦

おわかりだろうか。つまり同じ日が何度も繰り返されるのである。しかしそれを認識しているのはどうやら僕独りで周囲の誰もそのことに気がついていない。 西澤保彦『七回死んだ男』を読みました。 彼の作品はだいぶ前に『人格転移の殺人』を読んで以来なので…

『殺戮にいたる病』我孫子武丸

稔が試験のために大学へ出かけたのが昼食を終えてからだったので、雅子は二時頃になって息子の部屋へ入った。 我孫子武丸『殺戮にいたる病』を読みました。 我孫子武丸といえば綾辻行人・歌野晶午・法月綸太郎に続く「講談社新本格ミステリブーム」の四男坊…

『星降り山荘の殺人』倉知淳

和夫は早速新しい仕事に出かける そこで本編の探偵役が登場する 探偵役が事件に介入するのは無論偶然であり 事件の犯人では有り得ない 『星降り山荘の殺人』を読みました。 初、倉知淳作品です。 これまでに何度か僕は新本格推理ブームの話に触れてきました…

『春から夏、やがて冬』歌野晶午

私はわかった。二人は今も私の家族であり、私の一番大切なものなのだ。しかし、二人は今も私の家族でありながら、私のそばにはいない。この世のどこにも存在しない。 歌野晶午『春から夏、やがて冬』を読みました。 単行本の発行が2011年10月。 『葉桜の季節…

『ネジ式ザゼツキー』島田荘司

「すっかり全部さ。大きな地震が起こり、ルネスのネジ式のクビがゆるゆると回って、マーカットさんの目の前で、実際にころりと落ちたということになる。そう考えるしかないんだ」 ものすごく久しぶりに島田荘司を読みました。 僕は元々講談社が打ち出した“新…

『まどろみ消去』森博嗣

近づいて、フカシとヨーコが手を振ると、西之園萌絵は、両手を顔の横で広げてみせた。人類は十進法を採用しました、というジェスチャではない。 森博嗣『まどろみ消去』です。 以前他の記事で書いたのですが、僕は綾辻行人をはじめとする“新本格ブーム”で推…

『チョコレートゲーム』岡嶋二人

「なんでも、みんなジャックのせいだ、とか言っていたらしいです。妹が聞いた言葉ですがね」 「みんなジャックのせいだ……」 岡嶋二人『チョコレートゲーム』を読みました。 岡嶋二人作品を読むのは『クラインの壺』、『99%の誘拐』以来です。 東野圭吾の『…

『タルト・タタンの夢』近藤史恵

「入れたはずのフェーブが、なぜか忽然とお菓子の中から消失してしまったのだよ」 今回読んだのは『タルト・タタンの夢』。 第10回大藪春彦賞を受賞した『サクリファイス』で知られる近藤史恵さんの作品です。 『サクリファイス』といえば自転車ロードレース…

『絶望ノート』歌野晶午

オイネプギプト様、是永雄一郎を殺してください。 最近妙に『密室殺人ゲーム』の記事へのアクセスが増えていたりするのですが、何かあったのでしょうか? 特に心当たりはないのですが。 linus.hatenablog.jp linus.hatenablog.jp linus.hatenablog.jp ……だか…

『屍人荘の殺人』今村昌弘

「国名シリーズはクイーン。館シリーズは綾辻行人。では火葬シリーズは?」 最初にこういう薀蓄を小説内に入れ始めたのは誰だったんでしょうね? もちろん昔の文豪たちの小説にはそれこそ西洋の王道と呼ばれるような文学作品の名前が度々登場したりしていま…

『マスカレード・ホテル』東野圭吾

「ルールはお客様が決めるものです。昔のプロ野球に、自分がルールブックだと宣言した審判がいたそうですが、まさにそれです。お客様がルールブックなのです。だからお客様がルール違反を犯すことなどありえないし、私たちはそのルールに従わなければなりま…

『密室殺人ゲーム2.0』歌野晶午

あのさ、オレ様は殺しただけなの。検屍はしていないから、死因なんてわからねーよ。いちおう殺害方法を説明しておくと、最初に後頭部をガツンガツンと何回か殴って、やつはそれで床に倒れて動かなくなったんだけど、念のため胸を数回刺した。頭と心臓、どっ…

『密室殺人ゲーム王手飛車取り』歌野晶午

〈しかし、このゲームは僕ら五人が謎解きを楽しむためのものであり、世間に対して何かをしようとしているのではない〉 今回読んだのは歌野晶午の『密室殺人ゲーム王手飛車取り』。 歌野晶午と言えばなんといっても『葉桜の季節に君を想うということ』が代表…

『去年の冬、きみと別れ』中村文則

あなたが殺したのは間違いない。……そうですね?」 まもなく劇場公開を控えている中村文則『去年の冬、きみと別れ』を読みました。 wwws.warnerbros.co.jp 主演のEXILEの岩田剛典をはじめ、山本美月、斎藤工、浅見れいな、土村芳、北村一輝らが出演することで…

『夏と花火と私の死体』乙一

「弥生はなにも悪いことなんかしてないんだろ、だから泣くのはやめなよ」 『GOTH』以来の乙一です。 厳密には別名義である中田永一の『百瀬、こっちを向いて。』は読んでいましたが。 百瀬、こっちを向いて。 (祥伝社文庫) posted with ヨメレバ 中田 永一 …

『鉄鼠の檻』京極夏彦

この世には――不思議なものなど何一つないのだよ。 本書『鉄鼠の檻』は『姑獲鳥の夏』から始まる百鬼夜行シリーズ第四弾にしてなんと1359ページにも及ぶ分厚い本しても知られています。ちなみに一番分厚いのは第五弾となる『絡新婦の理』の1389ページ。発売当…

『お任せ!数学屋さん』向井湘吾

「将来の夢は、数学で世界を救うことです」 『お任せ!数学屋さん』は第2回ポプラ者小説新人賞受賞作。 完結まで全3作が発行される人気シリーズだったようです。 あらすじ 数学が苦手な中学二年生の遥の前に、転校生・宙がやってくる。 彼の将来の夢というの…

『封印再度』森博嗣

「赤ちゃんができたらどうする?」 ↑こんな引用でごめんなさい。 森博嗣『封印再度』。 この作品には語るべき点が沢山あります。 特に有名なのはタイトルのダブルミーニング。「封印再度」と「Who inside」。 これだけでぞくぞくっとしてしまいます。 50年前…

『屋根裏の散歩者』江戸川乱歩

「君も知っている通り、僕の興味はただ『真実を知る』という点にあるので、それ以上のことは、実はどうでもいいのだ。」 名作中の名作『屋根裏の散歩者』 乱歩の推理小説といえばご存じ名探偵明智小五郎の登場。 『怪人二十面相』『少年探偵団』にも登場して…

『クドリャフカの順番』米澤穂信

「データベースは結論を出せない」 まぁ、古典部シリーズから抜粋するとすれば↑か「私、気になります」のどちらかで決まってますよね。 アニメ化もされた古典部(氷菓)シリーズ第三作目『クドリャフカの順番』 米澤穂信との出会いは『インシテミル』でした…

『怪人二十面相』江戸川乱歩

「モジャモジャみだれた頭髪、するどい目、どちらかといえば青白い引きしまった顔、高い鼻、ひげはなくて、キッと力のこもったくちびる」 え? これって明智小五郎っていうより金田一耕助じゃないですか? なんて思ってしまうのは『金田一少年の事件簿』世代…

『カクレカラクリ』森博嗣

「やっぱり、冒険よね、人生に必要なものは。」 120年後に作動するという絡繰りを探るという謎に対し、旧家ご令嬢二人と理系男子二人が挑む。 簡単に言うと『カクレカラクリ』はこんな感じ。 元々デビュー作である『すべてがFになる』を読んで以来、僕には一…