『シングルマザー』真田コジマ
将来のビジョンと呼べるようなものは何ひとつない。自分はどうなりたかったのかと聞かれれば、あの人と結婚したかった、という答えしか浮かんでこない
ここのところ続いていますが、真田コジマ『シングルマザー』も第1回ポプラ社小説大賞で優秀賞を受賞した作品。
ポプラ社小説大賞からポプラ社小説新人賞に名前が変わる前の第1回ですから今となってはかなりレア感の強い作品です。
ちなみにポプラ社の関連では下記2つの作品のブログを書いていますので、興味があればご一読を。
1組のカップルと3組の夫婦
本書は全7章で構成され、章ごとに違う一組の男女が登場します。
最初に登場するのがシングルマザー枝里子と拓実。DV夫と離婚して乳飲み子の息子と二人での生活を始めた枝里子だったが、ベビーシッターとして派遣された専門学校生の拓実と恋に落ちます。
続いての第2章では突然場面が変わり、珠樹と香苗という夫婦が。
第3章では再び枝里と拓実、第4章では英司と奈保子と、枝里と拓実の話を軸としつつ、それぞれに異なる3組の夫婦が挟まれている形です。
夫婦はそれぞれすれ違いや悩みを抱えていますが、読み進める内に、彼らはどうやら同じ会社の同僚であると気づきます。
あれ、でも枝里と拓実には全く共通点が見当たらない。
一体どこで他の3組の話と繋がるんだろう? といぶかしみながら読み進めると……衝撃のラストとやらが待ち受けています。
フェアかアンフェアか
ミステリではありませんが、仮にミステリであると過程すれば、必ず巻き起こるであろう論争です。
本書は残念ながらアマゾンの口コミも一つしかなく、あまり売れなかった本のようなので特に話題にもならなかったようですが。
でもまぁ少なくとも間違いなく言えるのはフェアかアンフェアかで言えば、アンフェアでしょうね。
種明かしの後、怒るでも再確認するでもなく、ただただ置き去りにされた空虚さが残るだけです。
( ˙-˙ )はい?
っていう感じです。
面白みはあるけれど、読者にとっての読後感は決して良いものとはいえません。
ちょっと残念ですね。