『成功の法則』三木谷浩史
夢と現実は違うなどという皮肉に、惑わされてはいけない。それは、夢を現実に変える努力を怠った人間の、悔し紛れの言い訳に過ぎない。
『成功のコンセプト』に続き、2冊の楽天本・三木谷本です。
『成功のコンセプト』と本書『成功の法則』はある意味対のような存在になっています。
三木谷さん自身が書いていますが、
『成功のコンセプト』――成功哲学の総論
『成功の法則』――総論に対する各論
といった仕立てになっているのです。
『成功のコンセプト』では
- 常に改善、常に前進
- Professionalismの徹底
- 仮説→実行→検証→仕組化
- 顧客満足の最大化
- スピード‼スピード‼スピード‼
という5つのコンセプトを章立てして説明していましたが、本書ではそれらをよりわかりやすく、具体的に92ケに細分化して紹介しています。
今回はざっくりと、気に入った文章等を記していくことにします。
楽天は、インターネットで個人をエンパワーメントするという国旗を掲げている。個人の才能や努力を後押しするために使ってこそ、インターネットという道具は本来の力を発揮すると信じるからだ。個人の存在が希薄化している現代においては、個人を力づけることこそが、豊かで幸福な社会を実現することにつながると確信しているからだ。
早速飛び出しました。
“エンパワーメント”
やはり知れば知るほど、楽天にとって、三木谷浩史にとってこの言葉へのこだわりや重要性がわかってくる気がします。
他の何よりも自分の仕事を楽しめる人がプロフェッショナル
これもまた、前著『成功のコンセプト』にも登場した考え方ですね。
プロフェッショナルは素人の対比として専本的な知識や技術を持った人間、という従来の考え方に対し、新たな定義を掲げています。
でもこれは三木谷浩史だけではなく、世の中の著名な実業家やビジネスマンはみんな同じことを言っているような気がしますよね。
けれど、ひとつだけ確かなことがある。
それは、人間は万能ではないということだ。
つまり、自分には必ず弱点もあるし、欠点もあるのだ。
そして、弱点や欠点を補えば、仕事は今までよりも上手くいくようになる。
だから大切なのは、自分に何が足りないかを、自分自身できちんと把握すること。
「自分を知る」というのもよく聞かれる話です。
どんな意見にも耳を貸すというリーダーの態度が組織の風通しを良くし、メンバーひとりひとりが、自分の頭で物事をしっかり考えるという環境を作り出してくれる。それこそが、組織にとっては重要なことなのだ。
楽天が現在の世田谷クリムゾンハウスに移転した際に、社長室を作らなかった事は有名な話です。
社長室を“牢屋”と呼ぶなんて、それだけでも三木谷浩史の人間性が現れているように感じられます。
もっとも星野リゾートの星野佳路社長は社長室を持たず、空いている机やテーブルで仕事するというスタンスで知られていますから、それに比べたらまだ固定されたスペースがあるだけマシなのかもしれません。
ちなみにこの人はこんな風に言っていたりします。
堀江さんは何かと三木谷浩史や楽天を貶しまくっていますよね(笑)
とはいえ、二人の仲が悪いというわけではなく、時には暴言を吐くホリエモンに対して三木谷さんがTwitterで「たまには褒めてよ」みたいなリプライを送ったとかなんとか。
親しい間柄だからこそ、好き勝手言い合える仲なのかもしれません。
いつでもオープンな環境に身を置く三木谷浩史ですが、その仕事上のスタンスが現れる考え方としてこんなものもありました。
現代には、この不安を簡単に解消する道具がある。メール1本で、こうなりましたと報告すれば済む話なのだ。それだけで、上司との信頼関係も築けるのだから、これを使わない手はない。
報連相についての考えですね。
僕らの世代ではとにかく「証拠を残す」ためにもメールを送りまくるのは当たり前なのですが、前時代を生きてきた方々にとってはメールなんてけしからん!と真面目に言う人もまだまだ少なくありません。
でも、SNSとかメールという文明の利器はどんどん使うべきですよねー。
前出のようなアナログ型上司に限って、そこかしこで言った言わないで揉めているケースも少なくありませんから。
また、楽天での働き方と言えば重要とされるのが“KPI”
簡単に言うと「大きな目標を達成するための、中間的な数値目標」というもので、個人やチーム毎に具体的なKPIを定める事で、目標に向けて頑張りましょうというのです。
目標のない組織がダメなのは、そこには達成する喜びがないからだ。目標意識を共有してはじめて、バラバラの人間の集合が、ひとつの有機的な組織にまとまる。全員が大きなものに立ち向かっているという実感が、人と人ととつなぎ、人の心を鼓舞してくれるのだ。
楽天の社員さんにとっては、かなり厳しい目標だったりするらしいですが……でも三木谷浩史に言わせれば、それは絶対的に必要なものなのです。
速いといっても、速さには2通りある。
Velocityは速度。Agilityは俊敏さ。
目標を達成するために必要なのは“速さ”その速さには2通りあるというのが三木谷浩史の考え方。
速度は日々の仕事の効率化によって上げる事ができる。
大して俊敏さに関しては、決断したらすぐやるというフットワークの軽さこそが重要。
……とまぁ、この辺も最近のビジネス書では定番と言っても良い考え方かもしれません。
そして三木谷浩史にとって、仕事の中身の大半は下記の2つに分けられると言います。
- エグゼキューション――実施。実行。執行
- オペレーション――仕組み。手順。
やや強引な訳ですが、ざっくり言うと上のような内容でしょうか。
ストラテジー(戦略)
↓
エグゼキューション(管理・実行)
↓
オペレーション(作業・実務)
こんな感じで仕事は流れていくわけです。
失敗の原因の大半は、戦略ではなく、エグゼキューションやオペレーションにある。戦略は間違っていない。それをやり切る手法と、その遂行に問題があることの方が圧倒的に多いのだ。
これは個人的にだいぶ響きましたねー。
確かに、どんなにデータを集めて検証を重ねて戦略を練っても、実際に実行する現場レベルで徹底されなければ途端に絵にかいた餅になってしまいますから。
皆さんの周りにも、気を付けてみればよく見られる事例かと思います。
素晴らしい広告に惹かれて足を運んで見たのに、店舗の接客や実際の商品に呆れてしまった、とかね。
リーンなオペレーションとは、徹底的に無駄を省いて、オペレーションをできる限りシンプルなものにするということだ。ちょっと無駄を省くというのではない。無駄な部分はバッサリ切り捨てる。並行してできることは同時にやる。ひとつのオペレーションには無数の意味を持たせる。そういう作業を徹底的にやることだ。
楽天は大きくなりすぎて三木谷さんは細部まで見えていないんじゃないか、というような意見も巷には溢れていますが、三木谷社長自身が現場の細部に重きを置いている事がよくわかりますね。
インターネットは、人と人とをつなぐ道具だ。テクノロジーがどんなに進歩しても、人間そのものは変わらない。人と人とはつながりたい生き物なのだ。インターネットが可能にすることは無数にあるとしても、それが人と人とをつなぐコミュニケーションツールであるという根本は絶対に動かない。
この辺りは“エンパワーメント”と並んでよく出てくる考え方ですね。
インターネット=コミュニケーションツール。
商品を売るAmazonと違い、楽天市場が重要としている点でもあります。
さて、とりとめもなく書きなぐってきた今回のブログも次が最後です。
世の中の生の情報に触れるために、会社の仕事をさっさと終わらせて、もっと世間に出ようという話なのだ。同僚との話は会社でもできる、それよりも異業種の人々の話を聞く機会を増やすべきだ。
まぁ、やっぱり成功した人たちのいう事は一緒です。
仕事は仕事として、きっちり遊ばないとね。
遊びから得た見地が、翻って仕事にも良い影響をもたらすのです。
朝から晩まで会社に入り浸り、家に帰るのは寝るだけ……なんて長時間労働のブラック企業では消耗するばかりで、個人としても企業としても発展が望めるはずもありません。
僕的にはやっぱり、こういう考え方の方がしっくり落ち着きます。
なんだかんだ言われても、楽天は今時のIT企業なんですよねー、なんて。