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年間100冊前後の読書を楽しんでいます。推理小説・恋愛小説・歴史小説・ビジネス書・ラノベなんでもあり。

『楽天流』三木谷浩史

 

インターネット・ショッピングモール(ネット上の仮想商店街)「楽天市場」を立ち上げてまもなく、僕らは出店者にそれぞれの店舗サイトを自由にカスタマイズできる機能を提供した。そうすることで、出店者は各々の目的に合わせて、自分なりの方法でサイトを編集し、商品や価格を紹介するなど、自分の店舗サイトを思い通りに運営することが可能になった。
これは当時前代未聞で、画期的なことだった。インターネット・ショッピングモールは規格化され、厳重に管理されなければならない、というのが、業界における共通の見解だったからだ。

『成功のコンセプト』『成功の法則』に続き、三冊目の三木谷本です。
ただし先の二冊がそれぞれ2007年、2009年の発行であるのに対し、楽天流』は2014年の発行。
より現在に近い思想に触れる事ができます。
とはいえ、先に言ってしまえば大きく考え方が変わっているということもありません。
『成功のコンセプト』に見られた5つのコンセプトはそのままに、さらに骨太かつ肉厚に広がりつつある、といった様子でしょうか。
その源泉となっているのは……明確に“世界”を意識しはじめた事でしょう。

社内公用語の英語化

「今後、業務に関わるすべての言語を英語に統一する」

2010年のある日、三木谷社長は楽天の全社員に向けて宣言しました。

僕はこの指示そのものを英語で伝えた。その日の役員会議も英語で行った。それからほどなくして、社内すべての掲示板――エレベーターからカフェテリアまで――を日本語から英語に切り替えた。

時に「ワンマン社長」と揶揄されることも少なくない三木谷社長ですが、上記のようなエピソードはその現れとも言えますね。
ある日突然、事前通告もなしに大きな改革が文字通り断行される。
これが楽天の成長の秘訣でもあり、時に内外から批判を浴びる理由でもあるのでしょう。

ちなみに英語公用化の理由は、単純に「グローバルな経営形態を実現するには英語によるコミュニケーション能力が絶対に必要であることに気づいた」からです。

以後、後を追うように社内公用語の英語化を打ち出すものの、なかなか思うように転換できない大手企業も目立ちました。
普通であれば準備段階・移行期間とかなり長い時間を必要としますので、楽天のように思い切った方向転換を真似するまでには至らないようですね。

楽天が目指すのはネイティブのような流暢な英語を使う企業ではなく、非英語圏も含むグローバルで伝わるシンプルな英語を使いこなす企業だ。

英語教育の必要性が叫ばれながらも、まだまだ日本においては英語はどこか遠く離れた言語というイメージが染みついてしまっています。
正直、地方で一般的な仕事をしている分にはあまり英語に触れる機会もないですしね。
スマホの翻訳アプリの精度もだいぶ進化しつつありますので、いずれアプリを介せば多言語の人間とも普通に会話できちゃうんじゃないか、なんて思ったりもして。

しかしながら楽天のとった大胆な方策は正解であったと思います。
英語公用化を打ち出した時から、海外からの取材オファーの数等が一気に増えたと言いますし。
目下、FCバルセロナNBA等、様々な世界的スポーツ選手・チームへのスポンサー契約で世界的な認知を広げようと進めていますが、残念ながら事業自体の世界的な広がりはなかなか上手く行かずに苦しんでいるようですけど。


エンパワーメント

本書においても“エンパワーメント”がより詳細に説明されています。

僕がビジネスにおいて最も大事にしている理念――エンパワーメント(自立自走できるように支援すること)

顧客をエンパワーし、社員をエンパワーし、さらに自分をエンパワー、そして世界をエンパワーする、といった具合。
詳しい内容は割愛しますが……でもエンパワーメントって、ある意味では厳しい考え方ですよね。
自立自走するって事は、自分でやれって事ですから。
会社で言えば「自分で考えて自分で行動しろ。そこに責任を持て」とでも言い換えれば良いのでしょうか。
当たり前の言葉のようでもありますが、どこの会社でもなかなか末端まで浸透できずに苦労している点でもあろうかと思います。
サービスを利用する店舗・企業側にとっても同じですよね。
楽天市場にしても楽天トラベルにしても「楽天が全てうまくやります」というサービスではありませんから。
あくまで店舗・企業側も「自分でやる」事が求められるわけです。
非常にやりがいはありますが、逆に言うと厳しい世界とも言えます。
出店したは良いものの、ほんの数年持たずに撤退する店舗や企業が後を絶たないのも上記のような理由からでしょう。


楽天主義=5つのコンセプト

『成功のコンセプト』に出てきた5つのコンセプトについても改めて記されています。

 1.常に改善、常に前進

 2.Professionalismの徹底

 3.仮説→実行→検証→仕組化

 4.顧客満足の最大化

 5.スピード‼スピード‼スピード‼

本当に一切変わっていないんですよねー。
この辺りの芯の強さは三木谷浩史のすごいところです。
本書はある意味では『成功のコンセプト』のバージョンアップ版とも言えるかと思います。

 

抜粋

以下、気になった文章を抜粋します。

取引先の事業を配慮しない企業と楽天はうまくやっていけないだろう。短期的な利益しか見ていない企業は、楽天の全体的な戦略には合致しないのだ。

僕らは楽天のエコシステム(経済圏)に関わる全員がエンパワーされることを望んでいる。しかし、多くのeコマース企業の方針は、楽天のものとは異なる。たとえば、アマゾンやザッポスをはじめとする有力なeコマース企業は、買い物客に対してはたしかに十分なサービスを提供しているが、出店者に対してはそれほど関心を払っていないように見える。しかし、楽天にとって、出店者のエンパワーメントと満足度は、顧客満足度と同じように重要だ。

「幸運とは、機械に恵まれることに加え、十分な準備があってはじめてつかみとれるものだ」と。運は必ずしもコントロールできないが、準備なら自分の中で進めることができる。

僕にとってプロフェッショナルとは、収入のためではなく、プライドと達成感のために全精力を傾けて仕事に取り組む人を意味する。

……とまぁそんなところで、『成功のコンセプト』『成功の法則』『楽天流』と続いてきた楽天三部作も終了です。
ブログには書き残してきましたが、正直あんまり需要ないんだろうなーなんて思ったりもします。
実はもうすでに読み終わっている小説もあるので、次回からは小説のブログに戻るつもりです。
長々お付き合いいただいてどうもありがとうございました。

https://www.instagram.com/p/BlwRZzqHWQL/

#楽天流 #三木谷浩史 読了#成功のコンセプト #成功の法則 に続く三木谷本3冊目2007年、2009年発行の前2作に対し本作は2014年の発行。より現在に近い楽天の姿を知ることができます。5つのコンセプト等はブレずにそのまま継続されているけれど前著との大きな違いは明らかに世界を意識している事。有名な英語公用化をはじめ、楽天の世界戦略に対する考え方についても詳しく書かれています。これにて続いた三木谷本は終了。次回からは小説に戻ります。#本 #本好き #本が好き #活字中毒 #読書 #読書好き #本がある暮らし #本のある生活 #読了#どくしょ#読書好きな人と繋がりたい #本好きな人と繋がりたい ..※ブログ更新しました。プロフィールのリンクよりご確認下さい。