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年間100冊前後の読書を楽しんでいます。推理小説・恋愛小説・歴史小説・ビジネス書・ラノベなんでもあり。

『知ろうとすること。』早野龍五・糸井重里

よく思うのです。事実はひとつしかありません。事実はひとつしかないけれど、その事実をどう見るのか、どう読むのかについては幾通りもの視点があります。

今回はまた、先日読んだ『はじめての福島学』に続き東日本大震災原発事故関連書籍となります。

linus.hatenablog.jp

『はじめての福島学』は2015年の発行でしたが、こちらの『知ろうとすること。』は2014年と、さらに古い本となります。

糸井重里さんについては「ほぼ日」をはじめテレビ等への出演も多いのでご存じの方も多いとは思いますが、早野龍五さんについては知らない人も少なくはないのかな、と思います。

まずは簡単に、早野龍五さんについて説明した方がよいかもしれません。

 

暗闇の中を照らす一筋の光

上記のツイートをきっかけに、それまで3,000人程度だったフォロワー数が15万人に激増したというエピソードを持つ人物。

当時は地震により引き起こされた津波の衝撃的な映像がメディアを通じて報道される中、紛れるようにして福島第一原子力発電所電源喪失のニュースが報道されていたさ中。

原発の危機を多くの人が認識したのは、3月12日の水素爆発の映像がテレビで放映されてからでしょう。

原発放射能の状況を少しでも知ろうとTwitterの中で情報集めに奔走する人々の中で、突如としてリツイート数が膨れ上がり、拡散したのが早野龍吾さんの存在でした。

 

本書の中にも詳しく書かれていますが、早野龍五さんは原子核物理学を専門としており、当時はジュネーブにあるCERN(欧州合同原子格研究所)に在籍していた研究者。

原子力発電所の事故と直結する研究をしていたわけではなく、いわば畑違いではあったものの、自らの経験と知識を元に原発事故の情報やデータを分析し、デマや有象無象の情報が飛び交う混乱の最中に淡々と「事実だけ」をツイートし続けていたのでした。

 

批判を恐れずに言うと、当時のテレビは何も役に立ちませんでしたからねー。

ひとかけらでも情報を得ようとテレビを点ければ、わかっているんだかわからないのだかはっきりしないコメンテーターや学者さんたちが一様に「怖いですね」「どうなるかわかりませんね」と恐怖を煽るような番組ばかりを続けていましたから。

 

そんな中で早野龍吾さんのツイートというのは、まさしく「暗闇を照らす一筋の光」のように、渦巻く情報の中から有意なものだけを選別し、そこから読み取れる事実だけを伝えてくれました。

 

僕も震災後一週間は片時もスマホから離れず、ツイッターにかじりついてできる限りの情報を得ようと努めたのでした。

 

僕と同じような思いで過ごした人々も少なくないはずなのですが、いつしか生死を脅かすような危機を脱し、震災前と変わらぬ日常を送るようになってからは、ほとんどツイッターを開く事もなく、早野龍吾さんのツイートを目にする機会もなくなってしまったのです。

 

そうしてしばらく時間が経った今だからこそ、震災後三年目に書かれた本書を読もうと思えたのでした。

 

震災当時から早野龍吾氏の行動と考えを追う

簡単に言うと本書は上記のような内容です。

糸井重里さんがインタビュアーとなり、原発事故の際にツイートを始めた早野龍吾さんの心境やそれからの行動について紐解いていったもの。

実際に早野龍吾さんはツイッターだけではなく、給食陰膳調査やホールボディーカウンターの測定、福島の高校生のCERNへの招へいなど、様々な行動をされてきました。

どこまで政府の施策に関わっていたのかわかりませんが、公として、民として、時に立場を変えながら積極的に福島県民の内部被ばく・外部被ばくの調査と現状分析に協力してきたのです。

 

陰膳調査やホールボディーカウンター、ガラスバッヂ調査等、福島県民を対象に様々な調査が行われる中で、「モルモットにされている」なんて悪しざまに言う人もいましたが、早野さんなんかはそもそも専門外の人なのでそんな事を積極的にやる理由もないんですよね。

まぁ、そういう事を言う人というのは「裏で金が動いてるんだ」とか自らの空想しか信じないような人たちでしょうから、気にする方が無駄なんですけど。

 

こうして改めて読んでみると、震災から8年近くが経とうとしていますが、少し懐かしい思いすらしてきます。

ついこの間起こった出来事のような気がしていたけど、いつの間にか長い月日が流れていたんだな、と。

そして本書に出ているような様々な取組や調査がいくつもいくつも積み重なって、今日の平穏な日々が取り戻されたんだな、とつくづく思い知らされます。

 

今更早野氏のツイッターを再びフォローして、毎日追いかけよういう気にはなりませんけどね。

むしろそんな日々は二度と戻ってこない方が良いのかもしれません。

https://www.instagram.com/p/BqVzYQ0FmH_/

#知ろうとすること。 #早野龍五 #糸井重里 読了震災当時、原発事故を巡る混乱のさなか、感情を廃して事実だけを淡々と述べる語り口で一気にフォロワー数を激増させた早野龍五氏。その後も福島では様々な取り組みをされてきました。こちらは2014年に書かれた本で糸井重里が早野氏の当時の心境やその後の取り組みについてインタビュー形式で紐解いていった本。ここ一連の震災復興関連の書籍を読む中で、とりあえず読むべきかな、とチョイスしました。当時の事を懐かしく思い出しますね。もうすぐ8年かぁ。#本が好き #活字中毒 #本がある暮らし #本のある生活 #読了 #どくしょ #読書好きな人と繋がりたい #本好きな人と繋がりたい..※ブログ更新しました。プロフィールのリンクよりご確認ください。

『イン・ザ・プール』奥田英朗

「言っとくけど、聞かないから」伊良部が言った。

「はい?」

「ストレスの原因を探るとか、それを排除する工夫を練るとか、そういうの、ぼくはやんないから」

「はあ」

実は、初の奥田英朗作品です。

常々名前を目にする機会は少なくなかったはずなのですが、なぜかしら縁遠く、今回初めて手にする事となりました。

本作イン・ザ・プールは後に空中ブランコ第131回直木賞を受賞する事になる精神科医・伊良部シリーズの第一作目。

 

実はというとなんとなく過去の直木賞の受賞作を見ていたら『空中ブランコ』に目が止まり、調べてみたらシリーズ作品の二作目だというので、まずは一作目から読まないとな、と思い立ったのがきっかけです。

 

正直なところ、あまり医者や病院を舞台にした小説って読まないんですが……さて、どうしたものか。

 

軽快・痛快な5編の短編集

全五話の登場人物たちはそれぞれに複雑な悩みを抱えています。

 

イン・ザ・プール

 出版社に勤める和雄はストレスからくる急な呼吸困難や下痢に悩まされる。伊良部から提案されたストレス解消として水泳を始めるも、毎日欠かさず泳がないと落ち着かないという水泳依存を発症。和雄に触発されて自らも水泳をはじめた伊良部は、夜のプールに忍び込もうと提案する。

 

『勃ちっ放し』

 文字通り、男性器が勃ちっ放しになってしまった哲也。普段の生活にもままならない中で、上司から接待旅行への同伴を持ちかけられ、さらに言えなかった恨み言を言うため伊良部とともに別れた妻に会いに行く。

 

『コンパニオン』

 自称タレント兼モデル、実情はコンパニオンとして日々を暮らす広美は、自らがストーカーに追われているという意識に際悩まされる。徐々に症状は悪化し、会う男性全てがストーカー化するという誇大妄想へと発展。

 

『フレンズ』

 携帯依存症の高校生雄太は、常に周囲の友人たちを意識し、繋がっていないといられない。流行のファッションや音楽をいち早く揃え、周囲の注目を集めようと日々奮闘するが、ある日周囲との意識の差に気づく。

 

『いてもたっても』

 強迫神経症の義雄は、自宅の火事が気になって仕方がない。煙草の灰皿を水浸しにしても、飛び散った灰から火が出たのではないかと心配になり、仕事を台無しにしても家に舞い戻ってしまう。煙草から始まった強迫観念はガス漏れや漏電にまで広がり、一時として気の抜けない日々へと発展してしまう。

 

それぞれ「もしかしたら現実にあるかもしれない」と思えるギリギリのラインであり、思わずクスリと笑える。

同情を禁じ得ない彼らに対し、伊良部は時に悪ふざけとしか思えない提案をし、またある時には的確にも思えるアドバイスを施すのです。

 

いずれにせよ共通しているのは、彼らに対して真摯に向き合ってくれるのは伊良部しかいない、という点でしょう。

そのため、奇妙奇天烈な伊良部に対して少しずつ心を開き始めてしまうのです。

 

白ブタ・成金・マザコン……良いところなしの伊良部

伊良部の見た目については第3話『コンパニオン』の主人公である広美の表現が一番わかりやすいでしょう。

 

うえっ。口の中だけでつぶやいた。広美のもっとも忌み嫌う、色白のデブだ。しかもボサボサの髪にはフケが浮き出ている。足元はサンダル履き、胸の名札には「医学博士・伊良部一郎」とあった。

 

一見して嫌悪感すら抱かせる伊良部ですが、内容も奇人変人そのもの。

「ぐふふ」と笑うと書けば、なんとなくイメージが湧くでしょうか。

それぞれに悩みを抱えた登場人物たちは伊良部の元を訪ね、その奇行と言動に振り回されながらも、一方で信頼と親近感にも似たような想いを抱き始め、やがて当初抱いていた病状についても変化が訪れるのです。

 

シンプルに面白い 

本書は「本をめくる手が止まらない!」という程熱中してしまうような作品ではありませんが、それぞれがコメディタッチの軽快な物語なので、時間が空いた時に取り出して読んでいる内に、あっさり読み終わってしまったという印象です。

 

良い意味で、褒め言葉として「普通に面白い」。

 

とりたててどこがどう、という感じでもないのですが、ただただシンプルに「次も読みたいな」と思える本です。

 

奥田英朗、今まで読まなかったのがもったいなかったですね。

人によって「ハラハラドキドキならこの作家」「軽い感じならこの作家」「青春ものならこの作家」と押さえている作家さんがいようかと思いますが、僕の中では「読む本に困ったら選ぶべき著者」としてインプットされました。

 

直木賞を受賞した『空中ブランコ』はじめ、人気の作品も多いようですが、今後色々と調べながら他の著作にも手を伸ばしていきたいと思います。

 

 

https://www.instagram.com/p/BqQybUPlB75/

#奥田英朗 #インザプール 読了#第131回直木賞 を受賞した #空中ブランコ の精神科医伊良部シリーズ第一作目。奥田英朗作品ははじめてだったけど、良い意味で普通に面白かったです。本屋さんでは今まで何度も目にしてしたけど、ホラーかサスペンスかスリラー的な本なんだろうと誤解していました。全5作の短編集で、様々な神経症に悩む登場人物たちが奇人変人伊良部医師を尋ねるという作品。ユーモアに溢れた軽快な物語ばかりで、さっくり読めました。 勃ちっ放しとかね笑困るよねぇ笑#本が好き #活字中毒 #本がある暮らし #本のある生活 #読了 #どくしょ #読書好きな人と繋がりたい #本好きな人と繋がりたい..※ブログ更新しました。プロフィールのリンクよりご確認ください。

『はじめての福島学』開沼博

「福島を応援したい」「福島の農業の今後が心配だ」「福島をどうしたらいいんですか」

こういう問いを福島の外に暮らす人から何度も投げかけられてきました。

本書はそういう問いに対して、「とりあえず、このぐらいは知っておいてもらいたい」ということを一冊にまとめたものです。この一冊を読めば、ご自身の中に、福島の問題に向き合うための「引き出し」をつくることができるでしょう。

福島県いわき市出身であり、現在は福島大学うつくしまふくしま未来支援センター客員研究員などを務める社会学者、開沼博さんの著書『はじめての福島学を読みました。

この本についての感想って,

とにかく書きにくいの一言に尽きます。

福島の問題というのは、デリケートですからね。

ある意味「開沼博さんの本を読んだよ」と公言しただけで、どこかから非難や冷笑を浴びせかけられかねないという恐怖がついて回ります。

東日本大震災からもう8年が経とうとしているんですけどね。

当初より落ち着いてきたようにも思えますが、依然としてまだまだデリケートさが横たわったままのように感じます。

むしろ「震災後の混乱」という形で目に見えて混乱していた時期ならばいざ知らず、表面的にはすっかり落ち着いてしまった今だからこそ、このデリケートさという問題は根深いものと言えるのかもしれません。

でも本書はそんなデリケートな福島について、少しでも理解し、向かうために書かれた

ものとなっています。

 

福島問題への絡みにくさ

冒頭から著者はそんな現状を分析します。

この壁の正体となっているのが、「福島問題の政治化」「福島問題のステレオタイプスティグマ化」「福島問題の化学化」の三つに整理される。

これらによって福島問題への絡みにくさが増大し、大きな壁となってそびえ立ってしまったのが現状。

 

それに対して本書では以下の二つの方針を軸にして解決策を探ろうとします。

 

一つ目は、「避難」「賠償」「除染」「原発」「放射能」「子どもたち」の6点セットをあえてハスしながら、いかに「福島の問題」を捉え直すことができるか、少しずつ考えていくこと。

 

二つ目は、データと理論を用いながら語りましょう、ということ。

 

こうした切り口で、「復興」「人口」「農業」「漁業」「林業」「二次・三次産業」「雇用・労働」「家族・子ども」「これからの福島」というテーマについてまとめられています。

 

浮き彫りになる「絡みにくさ」

さて、本書を読んで福島に関する問題が少しでも解決されたかと言うと……なんとも複雑な気分ですね。

むしろ一番最初に現況として挙げられた「絡みにくさ」をより身近に感じるに至った、という感覚です。

だからこそ、こうして文章に落とし込もうとしてもなかなか筆が進まない。

3.11以降続いていたデリケートさは、未だに根強く続いているんだなぁと改めて再認識されてしまいます。

 

本書の冒頭で、こんな風に書かれています。

「政治と宗教と野球の話は飲んでいる席でもしないほうがいい」なんていう話があります。たとえ、仲の良い友人同士でも収拾のつかない言い争いになりかねない話題だからでしょう。まさにこれと近い形で、対立化しやすく、その溝を埋めることも困難な性質を、福島をめぐる問題はもっていきている部分もある。

まさしくこんな風潮。

面倒事を避けるためには出来るだけ触れない、口に出さないのがベストと考えられてしまうのも致し方ない。

そういう意味では、このブログを書くのもやめた方がよいのかも。

 

 

避難解除区域のこれからを知りたい

 

僕が本書を読もうと思ったきっかけは上記の通りです。

原発事故から決して短くはない時間が経ち、事故当初は避難を余儀なくされた地域も、次々と解除され、住民が戻りつつある。

でも正直なところ、一体どの町のどこまでが解除され、どこからは未だ立ち入りが禁止された状況が続いているのか、さっぱり知りもしない自分に気づいたから。

 

避難が解除されても帰還するのはお年寄りばかりで、小さな子供連れはなかなか帰らないと言われる。それって本当?

じゃあ帰還率ってどのくらいなのか。

学校ってどうなってるんだろうか。

そういう場所だと犯罪も多いんじゃないだろうか。

 

恥ずかしながら、僕は何も知りませんでした。

特にきっかけがあったわけではありませんが、改めてもう一度目を向けてみようと思った次第です。

 

決して何かを表明したり、行動したりするのではなかったとしても、そっと知識として頭に入れておくというのは無駄にはなりませんからね。

 

個人的に、本書は今の福島を学ぶ上では非常に良書であった、と言えると思います。

 

東日本大震災からあと数年で丸10年が経とうとしています。

最近では他社の新入社員の子と話していると、「震災の時小学生でした」なんて言葉が飛び出してびっくりしたりします。

 

震災当時は日本が破滅するんじゃないかとすら思えたものですが。

時の流れは速いですね。

https://www.instagram.com/p/BqOGszzlDSX/

#はじめての福島学 #開沼博 読了東日本大震災からもうすぐ8年が経つ中で改めて福島の現状を知ろうと思い、手に取った本。本書の中にも書かれていますが、とにかくこの福島の問題というのはデリケートですね。ある意味インスタにアップするだけで良くも悪くも叩かれかねないという微妙さを感じます。そんなデリケートさや、背景にある原因を解説しているのが本書です。ご興味のある方はご一読をどうぞ。#本が好き #活字中毒 #本がある暮らし #本のある生活 #読了 #どくしょ #読書好きな人と繋がりたい #本好きな人と繋がりたい..※ブログ更新しました。プロフィールのリンクよりご確認ください。

『小さな建設業の脱!どんぶり勘定』服部正雄

会社は、赤字では倒産しません。お金が不足したときに倒産するのです。 

服部正雄著『小さな建設業の脱!どんぶり勘定』。

アマゾンの中小企業経営部門においてランクインしていた事から、最近続いている事業承継・企業再生に関連するものとしてチョイスした本です。

色々と事業再生を謳った本は多いのですが、「小さな建設業」に絞り、しかもその中の「どんぶり勘定」に焦点を定めているあたり、非常に興味深いじゃないですか。

アマゾンのレビューも現時点で5件しかないものの、いずれもなかなかの好評価。

期待して読み始める事とします。

 

対象はそこまで小さくない会社

単刀直入に感想を述べてしまうと、上記がすべてです。

建設業には①支出が先に発生するパターンと②先にお金が入り支出が後になるパターンの二つのお金の流れがあるとし、さらに業界の特徴的な勘定科目として「未成工事受入金」と「未成工事支出金」があるとします。

「未成工事受入金」はいわゆる“前受金”に相当するもので、工事完成前に請負金額の一部を受領するようなケース。

「未成工事支出金」は売上になる前の工事代金の立替金の事。

これらが建築業がどんぶり勘定に陥りやすい原因の一つであり、支払・請求を漏れなく把握し、スピーディーに行う事でお金の流れをつかむ事が大事である。

工事代金は素早く回収、支払うお金は慎重に。

 

さらに第二章では具体的に経理上への話へと進みます。

よくある現金主義会計ではなく、収入や支出の事実が確定した時点で記帳する「発生主義会計」を推奨し、そうする事で先に挙げた「未成工事受入金」や「未成工事支出金」もしっかりと把握しようというもの。

さらに、営業外収益に上げていたものを売上に反映させる事で、最終的な税金支払い額は同じであるにも関わらず営業利益が改善し、見栄えの良い決算書ができるという。

他にも5%→8%移行時における消費税額の計上方法等々。

 

第三章では遂に年度利益計画の策定へと踏み込みます。

 

……ていうかその……

 

こういう事がすんなりできる会社は、どんぶり勘定はとっくの昔に脱してるんじゃないかな?

 

とにかく自転車操業的に右から左へとお金を流しているからこそどんぶり勘定な訳で。

 

「小さな建設業」を掲げるからにはもっと初歩的な「支払管理票」やら「資金繰り表」について詳しく書いて欲しかったな、なんて思ってしまいました。

本書は前提として「経理ソフト」「原価管理ソフト」が導入されているとして進めているようですが、そもそもそれって何のソフト? 弥生会計とか勘定奉行? だとしたら導入にどのぐらいかかる? いきなり使いこなせるかどうかもわからないソフトを導入するのもハードルが高いから、まずはフリーソフトで似たような経理ソフトがないのかな?とか。

 

もっともっと簡単に、明日から実践できるような内容を期待していたのですが、残念ながらある程度のスキルがないと本書の内容の実践には至らないようですね。

 

自社で安全協力会を設立すべき。会費として下請けへの支払いから0.5%を自動的に振り替えるとファックスででも通達すればすぐに予算が確保できる。自社で安全パトロール等に取り組めば元請会社のイメージアップにもつながる……なんて下りが出てきたあたりで、「あぁ、本書は小さなと言いつつある程度以上の従業員を抱えた中小企業を対象としているのだな」なんて思って興ざめしてしまいました。

 

東証一部上場系に対する地方ゼネコン的な会社を想定してるんだろうなぁ、と。

 

もっとね、お父さんが一人で営業から現場仕事まで請け負い、せいぜい家族が経理的な部分でお手伝いする程度の零細企業を想像していたんですが……そこまでの小さい会社は本書の対象外だったようです。

 

そういう本当の意味での「零細企業」「どんぶり勘定」が役に立つような、そんな本を改めて探してみたいと思います。

https://www.instagram.com/p/BqEdoDnlUJ-/

#小さな建設業の脱どんぶり勘定 #服部正雄 読了最近よく読んでいる #事業承継 #企業再生 に関連してアマゾンの中小企業経営部門ランキングからチョイスした本。前提条件として自社である程度経理業務を理解して遂行している必要があるので、どんぶり勘定しているような零細企業にはちょっとハハードルが高めかも。というか本書に書かれているような事がすんなりやれる会社はこんな本読まないんじゃないかと。うーん、帯に短し襷に長し、という感じ。#本が好き #活字中毒 #本がある暮らし #本のある生活 #読了 #どくしょ #読書好きな人と繋がりたい #本好きな人と繋がりたい..※ブログ更新しました。プロフィールのリンクよりご確認ください。

『東京タワー オカンとボクと、 時々、オトン』リリー・フランキー

鏡に映った東京タワーを見ながら微笑んでいるオカン。窓から直接それを見ているオトン。そして、そのふたりと、ふたつの東京タワーを一緒に見ているボク。

なぜか、ボクたちは今、ここにいる。バラバラに暮らした三人が、まるで東京タワーに引き寄せられたかのように、ここにいた。 

リリー・フランキーの本です。

俳優でありイラストレーターでありエッセイストでもある彼が、雑誌に連載していたエッセイをまとめたもの。

小説というよりはリリー・フランキーの自伝そのもの、といった内容です。

ただし本書、2006年の第3回本屋大賞受賞作品

どうして芸能人が自分について書いたエッセイが本屋大賞を受賞したのか。

そんな興味もあって、つい手に取ってみました。

 

リリー・フランキーの自伝 × → オカンの生涯 ○

リリー・フランキーというのはサブカルの人、というイメージがあります。

芸術大学を出ているという事もありますが、イラストや音楽等々、アートに関わるものであればなんでも手掛けていて、俳優活動ですらアーティストの延長としてやっているんじゃないか、というイメージ。

好きな芸能人は?と聞かれた時にリリー・フランキーと答えれば、「こいつちょっとわかってるな」と思わせられるような。

 

本書にもそんなサブカルの匂いがぷんぷんしています。

上京したばかりの若き著者は大学にも通わずにパチンコ屋に入りびたり、行き場に困った後輩を部屋に招いて共同生活を始めたり、空腹に耐えかねて腐ったハムを口にし、食中毒にもだえ苦しんだり。

常に金がないと困窮した生活を送りつつも、友人たちとともに刹那的で退廃的なその日暮らしを繰り返したり。

東京にごまんといる「売れないアーティスト」のイメージそのものとも言える生活が、これでもかと言わんばかりに描かれているのです。

 

その前後に描かれているのが、女手一つで著者を育てたオカンと、たまにしか現れないヤクザまがいのオトン。

特にオカンは幼い著者を連れて親せき宅を転々と渡り歩き、決して裕福とは言えない中で一心に著者に愛情を注ぐ様子が繰り返し描かれます。

 

やがてオカンの状況をきっかけに数年ぶりの親子の共同生活が始まり、入れ替わり立ち代わり訪れる著者の友人たちに囲まれて東京で楽しく暮らすオカン。しかし、以前手術した甲状腺ガンは克服したはずでしたが、少しずつ体調に違和感を覚え始め……。

 

そうして読んでいく内に、気づきました。

 

本書はリリー・フランキーの自伝の体裁をとっていますが、同時に子どもを産んでから病に倒れるまで、オカンの母としての生涯を描いた本でもあるのです。

 

 

サブカル+ベタ=?

本書はとにかく「泣ける本」として有名だったそうです。

泣き顔を見られたくなければ電車で読むのは危険

とまで言われたそうですが。

 

先に述べたサブカル感を別にすると、物語の構造としては至って平凡なものです。

一身に愛情を注いでくれた母が病に倒れ、死へと近づいていく。

対象が恋人であるか母親であるかの違いだけで、物語の構造としては本書でさんざん挙げてきた『風立ちぬ』や『世界の中心で愛を叫ぶ』、『100回泣くこと』と一緒ですね。

平凡で普通の毎日の積み重ねの後に、病と死という喪失感を描く事で読者の涙を誘う、というベタ中のベタです。

 

でもね。

 

わかっちゃいるけど、感動しちゃいますよね。

 

もしかしたら本書がほぼ実話をベースにしているという点も手伝っているのかもしれないけれど、誰がどう考えても「良い人」であるオカンが無常にも病に侵されていく様には、胸が締め付けられてしまいます。

息子であるリリー・フランキーが抱く後悔や悲しみも胸に迫るものがあります。

 

僕は基本、本を読んで泣く事はないのですが、本書を読んでいる時はつい涙ぐんでしまいました。

 

ここ数年の間に祖父をはじめ、叔母や伯母と立て続けに親類の死を目にしているので、その時の記憶がよみがえってしまうのです。

特に叔母は末期の膵臓がんで、発見時にはステージⅣ。

一縷の望みをかけて挑んだ抗がん剤治療もほとんど効果はなく、緩和治療の後僅か数ヶ月で死去、というオカンと似た状況でもありました。

 

もし叔母が自分の母親だったら。

オカンが自分の母親だったら。

 

そう投影せざるを得ないのです。

 

読む側の年齢や経験にもよるのかも

僕としては非常に胸を打たれ、読んだ後にもしんみりしてしまうような感動を得た本書だったのですが、アマゾンをはじめとするレビューを見ると残念ながら低評価とするものもあるようです。

でもそのほとんどは「ただの自伝だった」というような内容が多いようです。

 

勝手ながらたぶんそれって、若い人の感想なんじゃないかなーなんて思ったりします。

 

実際に近しい人が病気で亡くなる、といった経験をしていないと、本書の感動ポイントには刺さらないのかもしれません。

ある程度年齢を重ねないと、親のありがたみのようなものもなかなかわかりませんしね。

ましてや親元を離れて心機一転、自分の力で一旗揚げようと頑張っている最中の若い人にとっては、田舎で待つ親の心なんて想像しえないのかもしれません。

 

僕はここ数年で、親戚の死にも遭った事で、ようやく親のありがたみがわかる年齢になりつつあるのだと思います。だから、本書が刺さった。

 

人生100年時代と言われていますが、実際には80を前に亡くなる人も少なくはありません。

高齢者が起こす自動車事故も頻発し、社会問題化したりもしています。(←これってただ単にその世代のドライバー人口が多いからじゃねーの、なんて思ってたり。。。)

65歳以上だと7人に一人が認知症を発症だとか。

 

あれやこれやを鑑みると、親に残された時間って多いようで、意外に少ないのかもしれない、なんて思い始めたりします。

自分たちで旅行に行ける年齢の限界が仮に75歳だとして、一年に1回だけ旅行をプレゼントしてあげたとしても、旅行に行ける回数ってあと何回なのかなぁ、なんて数えてみたり。

 

 

どれだけ親孝行をしてあげたとしても、いずれ、きっと後悔するでしょう。あぁ、あれも、これも、してあげればよかったと。 

 

上記は非常に印象的な本書の中の一節です。

オカンが入院する日、著者の心情を描いた一文だと思うのですが。

 

でもきっと、オカンも同じ想いを著者に対して抱いているのだと思うのです。

 

どれだけ愛情を注いだとしても、いずれ、きっと後悔するでしょう。あぁ、あれも、これも、してあげればよかったと。

 

きっとそれこそが、親の心情なのだと思います。

 

看取る息子と、旅立つ母親。

そのどちらにも共感できてしまう僕にとって、本書は涙なくしては読めない物語でした。

https://www.instagram.com/p/BpyBARmlNI7/

#東京タワーオカンとボクと時々オトン #リリーフランキー #第3回本屋大賞 受賞作品。本を読んで感動しても泣く事はないのですが、本書はつい涙ぐんでしまいました。自堕落で刹那的な退廃した生活を送り続けてきた著者と、そんな息子を女手一つで育ててきたオカン。やがて二人は東京で暮らしはじめ、仲間たちに囲まれて楽しい日々を送るものの、オカンの体を病が蝕みつつあり…… まぁ、ベタです。ベタな親子愛です。でもどうしようもなく感情移入して、胸が詰まってしまった。 ..「どれだけ親孝行してあげたとしても、いずれ、きっと後悔するでしょう。あぁ、あれも、これもしてあげればよかったと。」. という一文があるのですが、共感する一方、それは親も一緒だよと言ってあげたくなります。. .「どんなに愛情を注いでも、きっと後悔するでしょう。あぁ、あれも、これもしてあげればよかったと。」. .#本が好き #活字中毒 #本がある暮らし #本のある生活 #読了 #どくしょ #読書好きな人と繋がりたい #本好きな人と繋がりたい..※ブログ更新しました。プロフィールのリンクよりご確認ください。

『会社再生ガール』田中伸治

私の代で、こんな、こんな……もしあの宿がこのまま潰れてしまうようなことがあれば……

先日読んだ『2代目はどこで失敗するか』の時にも書きましたが、最近はちょっと“事業承継”や中小零細企業に向けた“事業再生”的なものに興味を持って色々と勉強したりしています。

本書『会社再生ガール』についても、そんな中覗いた古本屋でたまたま見つけて、購入してしまった本です。

「再生の伝道師」と呼ばれる若き経営者が立ち上げたコンサルタント会社に勤務する若い女性が、老舗旅館を倒産の危機から救おうという小説仕立てのビジネス書です。

 

小説仕立て?ビジネス書?

簡単に言うと失敗作ですね。

先に小説仕立てのビジネス書と書きましたが、巷に溢れる同種の失敗作と同じです。

小説としては薄く、ビジネス書としては浅い。

そもそも小説だからとはいえ、全体的な設定が現実離れし過ぎているのです。

主人公が社長命令によって銀座の高級クラブで働いていたり、次から次へと漫画でもありえないような設定が出てきます。

そんな中で現実世界に沿った再生スキームを持ち出されても、しっくり来ませんよね。

 

会社再生について触れられている一例を下記に挙げますが――

 

DESとは、債務を株式に交換することです。収益と比較して債務が過剰となっている会社に対して実施される再生手法の一つなんです。DESを実施した場合の債務者(会社)のメリットは、有利子負債を削減することで金利負担がなくなり、同時に弁済義務がなくなることから財務内容の改善が図れるんです。一方で、債権者にとっては、貸倒引当金を設定してある債権であれば、株式を保有することで資金回収の可能性も残されている。単に債権放棄を行うよりも将来の点で収益期待が持てるってことなんです。

 

いかがでしょう?

すんなり頭に入ってきますか?

 

まるで教科書を抜き出したような文章ですよね

 

でも残念ながら会社再生に関わる内容については一事が万事こんな感じです。

読者に理解してもらおう、学んでもらおうというビジネス書としての役割を放棄してしまっている、と言っても過言ではないと言えます。

 

小説なので一応絵に描いたような敵対勢力が登場し、事ある度に窮地に陥るですが、突破の方法も「とある業界の有力者が登場人物の知り合いの知り合いで」という典型的なご都合主義。

主人公にせよ旅館経営者にせよ、実力と努力で窮地を乗り切ったという達成感は全く感じられません。

その割に主人公が「私は絶対に負けない」と決意を新たにするようなシーンが何度も繰り返されたり。

 

なんだかもう書くのも面倒なのでこの辺で切り上げてしまいますが←

とにかく小説としてもビジネス書としても薄味の本でした。

 

著者自身が「再生の伝道師」

著者である田中伸治氏はT&Tファイナンシャルグループ株式会社の代表取締役社長です。

大手自動車関連メーカー、新興上場会社を経て、環境系ベンチャー企業CFOとして入社。しかし1年後、会社は新規事業に失敗。多額の責務を抱え、資金繰りに行き詰まり法的再建を決断。わずか1ヶ月でスポンサー企業を探し、民事再生法を申請。上場企業への事業譲渡を成功させ、この時期では珍しいプレパッケージ型民事再生を実現する。

しかし、この時に再生できたのは「事業」のみ。オーナー経営者は膨大な債務を抱えて病に倒れる。真の意味で経営者の力になれなかったことを悔やみ、債務に苦しむ経営者を救いたいと、コンサルタントに転身することを決意(以下略)

上記は著者紹介からの引用ですが……ええと

 

こっちの方が面白そう(笑)

 

じゃないですか?

変に小説仕立てなんて気取らずに、真正面から当時の失敗や苦しみを書いて欲しいものですね。

 

実はあとがきに著者自身から「続編をご希望される方は、お気軽にご連絡下さい。」とメールアドレスまで書かれているにも関わらず、特に続編の話は出ていないようですし。

 

まぁ、売れなかったんでしょうね。

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#会社再生ガール #田中伸治 読了会社再生をテーマにした小説仕立てのビジネス書最近事業承継や事業再生に興味を持っている中でたまたま手に取った本。結論から言うと小説としては薄く、ビジネス書としては浅い。残念な本でしたねー。さ、次いこ次。#本が好き #活字中毒 #本がある暮らし #本のある生活 #読了 #どくしょ #読書好きな人と繋がりたい #本好きな人と繋がりたい..※(今回も一応)ブログ更新しました。プロフィールのリンクよりご確認ください。

『硫黄島に死す』城山三郎

玉砕するばかりが軍人の本分じゃない。お父さんは無駄死にしない。生きられるものなら、どこまでも生きていく。 

僕が好んで読む城山三郎作品の中において、『官僚たちの夏』と並ぶ代表作がこの『硫黄城に死す』。

城山三郎好きを公言しながらも、お恥ずかしながら今回初めて手にとりました。

表題作である『硫黄島に死す』をはじめ、『基地はるかなり』『草原の敵』『青春の記念の土地』『軍艦旗はためく丘に』『着陸復航せよ』『断崖』の計7作が収められた短編集です。

 

オリンピックメダリストから映し出す硫黄島の戦い

主人公は西竹一中佐。

日本の陸軍軍人でありながら華族(男爵)でもあり、1932年 ロサンゼルスオリンピック馬術障害飛越競技において優勝を勝ち取った金メダリストでもあります。

その経歴から外国人とも交流を持つ国際人である西は、だれが見ても勝ち目のない硫黄島決戦の地に中佐として赴任し、オリンピックやかの地での外国人との交流を思い出しながら、若い部下たちを率いて戦いの日へと進んで行きます。

城山三郎らしく、無駄な装飾を極力排した淡々とした文章で、戦争の悲惨さや勝ち目のない戦いに挑む悲壮感などが描かれるのです。

世界一になった馬術の技術が活かせるような戦いではありません。

そもそも硫黄島の戦いは太平洋戦争も末期。

日本軍の敗戦は誰の目から見ても明らかで、硫黄島を守る事について何の意義も見出せません。

それでも戦い続ける事は半ば集団自決にも近い選択であるにも関わらず、そこに向かわざるを得なかった時代性の空しさが感じられます。

 

……とはいえ、もし硫黄島の戦いや太平洋戦争について知りたいのであれば、もっと他に長く、詳しく書かれている本があるのでそちらを読むべきでしょう。

 

本書はあくまで戦時中における沢山の戦いや沢山の悲喜劇の中の一部分を描き出した文学作品と読むべきなのだと思います。

 

戦後70年を過ぎて――

この文章を書いている2018年現在、戦後73年になるそうです。

正直我々の世代には、当時の空気感というものは想像の世界のものでしかなくなっています。

蛍の墓』や『この世界の片隅に』、『はだしのゲン』などといった様々なアニメや漫画、そして本書のような小説、ドキュメンタリー等々でたくさんの情報を目にしているはずですが、やはり想像の域を出ませんよね。

 

本書においては、戦争のさまざまな側面が描かれています。

 

例えば『軍艦旗はためく丘に』では飛行予科訓練生として入隊する十六歳の千草、十四歳の雪谷という二人の少年が登場します。

彼らは入隊して早々に理不尽な暴力や意味不明なしごきに苦しめられます。

そんな中で、自ら電車に飛び込んで自殺する少年も現れます。

飛行機の訓練生と言っても、訓練に使用できるような飛行機は一つもなく、中身の伴わないただただ精神修養としてだけの訓練が続けられるのです。

 

やがて下される淡路島南端への転属命令。

千草たちが見守る中、先行して港を出た船はやってきた一機の戦闘機に狙われます。

何の防衛手段も持たず、ただただ掃射の餌食にされる船は文字通り蜂の巣にされ、意地悪な上官をはじめ、多数の犠牲者を出します。

その中には雪谷少年の姿も。

 

転属は取りやめとなり、その後すぐに終戦を迎えてます。

 

一体なんのための招集命令であり、なんのための地獄の日々だったのか。

戦う術を学ぶ事もできず、戦う事もできず、ただただ辛く苦しい日々を送っただけの毎日。

しかもそれは終戦の僅か前に起きた、ほんのちょっと日付がずれていれば無くなっていたかもしれない日々なのです。

 

少年達は一体誰のために、なんのために命を落としたのでしょう。

 

僕らにはもう、想像する事もできません。

 

 

幕末と世界対戦の差

常々自分でも不思議に思ってしまうのですが、幕末と世界対戦と、二つは同じく戦争であるはずなのに、自分の中では明確に差が生まれてしまいます。

幕末については、閉塞した日本の未来を憂い、世の中を変えようとした維新志士たちの戦いであり、賊軍として敗れ去った旧幕府軍の面々についても、世界を変える為の大義ある犠牲を感じる事ができるのです。

会津藩をはじめ、最後まで義を貫き通して散っていた姿にも、武士の魂すら感じられるものです。

 

対して明治から昭和初期にかけて行われた戦争って一体なんなんでしょうね?

日本が何のために、どんな大義を掲げて戦ったのか、全くわかりません。

単純に言うと世界中がより多くの国益を勝ち得ようと戦っていた時代なのかもしれませんけど。

 

だからかわかりませんが、明治維新までの話はとても心に響くのに、近代の戦争の話には悲壮感や虚無感しか感じられないんですよね。

最終的に負ける、という結果しかないからかもしれませんが。

もっと言うと、拒絶感に近い感情かもしれません。

 

例えば硫黄島の戦いで最高司令官を務めた栗林忠道陸軍大将についても、様々な文献でいかに素晴らしい人物だったか書かれていたりしますけれど、そこに尊敬や共感みたいなものは生まれないのです。

 

ただただ、ザラリとした肌触りの悪さみたいなものだけが残ってしまいます。

当時の悲劇を知る人には、怒られてしまうかもしれませんけど。

 

まぁ、今回はそんなところで。

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#硫黄島に死す #城山三郎 読了僕の好きな城山三郎本です。どちらかというと政治や経済人について題材にした作品が多いのですが、本作は太平洋戦争を舞台にした7つの短編が収められています。正直なところ、大義や信義を賭けて争った幕末までの戦いに比べると、どうも近代戦争は苦手です。一体何のために、誰のために戦ったんでしょうね?当時を知る人には怒られてしまうかもしれませんが、そう思わざるを得ません。幕末の志士に対する共感や尊敬のようなものは全くなく、むしろ絶対に受け入れられない拒絶感しかありません。#本が好き #活字中毒 #本がある暮らし #本のある生活 #読了 #どくしょ #読書好きな人と繋がりたい #本好きな人と繋がりたい..※ブログ更新しました。プロフィールのリンクよりご確認ください。