「僕は人間を研究してるんですよ」
名探偵の礎となったとも言える明智小五郎の台詞。
痺れますね。
『D坂の殺人事件』は名探偵明智小五郎が初めて登場した記念すべき作品にして、江戸川乱歩が初めて密室を手掛けた歴史的な一作。
喫茶店で会話していた明智小五郎たちの目の前で、向かいの古本屋の妻が首を絞められて殺されていた。
古書店の右は時計屋、菓子屋と続き、左側には足袋屋と蕎麦屋が並ぶ。
目撃者は誰も通っていないと証言。
完全な密室ではありませんが、状況的密室というやつです。
疑惑の目は明智小五郎自身にも向けられます。
状況的に第一発見者である明智小五郎がやったに違いない、というお決まりのパターンがここで登場します。
第一発見者=一番の容疑者という図式です。
正直、昨今の推理小説を読みなれた人には物足りなく感じるかもしれません。
それはそれとして、本作は古典です。
古典作品を下敷きにして、現代の名だたる作品が生まれていったのです。
オマージュやインスパイアの種を探して読んでみると、より楽しめるのではないでしょうか?
尚本作も2016年に江戸川乱歩の著作権が切れたのを機に、Kindleで無料で読むことができます。
無料で乱歩の世界に浸れるなんて、青空文庫ってつくづく素晴らしい。