「若し我に巨万の富を与えるならば」
「若し俺おれが使い切れぬ程の大金を手に入れることが出来たらばなあ。先まず広大な地所を買入れて、それはどこにすればいいだろう。数百数千の人を役えきして、日頃俺の考えている地上の楽園、美の国、夢の国を作り出して見せるのだがなあ」
自分と瓜二つの大学時代の友人、菰田源三郎が病死したと聞いた主人公人見廣介は、菰田に成りすます事を画策します。
大金持ちである菰田の富を全て手にした人見は、小さな島に自分の思い描く夢の国を作り出してしまう。
『パノラマ島奇譚』はそんな話。
元々は雑誌に連載されていた作品らしいですが、どうやら不評だったようですね。
よくわかります。
文章の大部分は幻想的なパノラマ島の描写に終始し、退屈なばかり。
イメージとしては手塚治虫の『火の鳥』や藤子不二雄の『ドラえもん』に近いかもしれません。
見た事のない夢の国が無残にも崩壊してしまうという儚さを描いた作品。
万人受けするキャラクターが登場しないことから、もしかしたら乱歩はこういう作品が書きたかったのかもしれませんね。