それにラブレターには、尾崎豊の『I LOVE YOU』の歌詞ばびっちりと書いてあったのだ。これがまたきつかった。
ああ、あるある(笑)なんて括弧付の笑を浮かべてしまった世代の方には一度読んでいただきたい作品です。
主人公和光妙子の中学一年生から三年生までを描いた本書『体育座りで空を見上げて』。
青春小説として異色だなぁと思うのは、妙子は三原順子が3年B組金八先生でツッパリ女子学生を演じていた時に、小学校6年生だったという時代設定。
今まさに青春真っ盛りの少年少女を描いたというよりは、その昔あった青春時代を思い返して書かれた作品、と言えるかもしれません。
アラフォー世代の中二病
我ながら酷い見出しをつけてしまいましたが、ひと言で言えばそんな内容になります。
妙子の三年間は、取り立てて大きな事件があるわけではありません。
日々送る日常の中から、妙子が自分を見つめなおし、自分を語り続ける内容です。
「恐ろしい場所」と聞いていた中学校に進学したものの特に校舎の裏に呼び出されるようなこともなく、テニス部に入りたいはずなのに姉のいる卓球部に入ってしまったり、衣替えになった途端ブラジャーをつけている子がいると噂になったり。
特に主人公は何か行動を起こすわけではありません。
誰かを好きになるわけでもないし、徹底して何かに反抗したりするわけでもない。
優等生でもなく、劣等性でもない。
ごく普通の女の子。
そんな普通の女の子の当時の思いや葛藤を瑞々しいまま物語に抜き出したという点で作者の筆力は卓越したものがあると思います。
ただやはり、共感できる年代に限りがあるのが正直なところ。
同じ年代の方が、作者の体験に共感しながら読むのが一番良いのだと思います。
母親へのDV
僕は世代とはズレているので本書に登場する歌手やエピソードにはあまり共感を持てなかったのですが……それにしてもと思うのが主人公である妙子の母親への暴力。
学校では普通の生徒である妙子が、事あるごとに母親に暴力を振るうんですね。
最近、タオルの端を固結びにし、反対側を持ってスナップをきかせ、固結びのところでお母さんのお尻や背中を打つ、という、やられるほうとしてはかなり痛いにもかかわらず、やるほうにしてみれば素手よりもはるかに罪悪感が薄れるという新手の攻撃法を発案したばかりだった。
ちょっとこれは……個人的にはドン引きでした。いろいろグロい描写の小説はありますが、母親に対してこんな酷い事をする中学生はなかなか見られません。
事あるたびに、妙子は母親に暴力を振るいます。
三者面談で母親の口から家庭内暴力の話が出たらどうしようと妙子自身がドキドキするほど、自覚症状があるんです。
当時の時代感のようなものがあるんでしょうか?
キラキラ輝いているばかりが青春じゃないと盛り込んだエピソードかもしれませんが、何よりも読後に尾を引く部分になってしまいました。
妙子と同じ年代の方に感想を聞いてみたいところです。