「この世には神も仏もない。
ただうさんくさい天使がいるだけだ」
「子供心に思ったよ。今日と明日はぜんぜんちがう。
明日っていうのは今日の続きじゃないんだ、って」
森絵都さんの代表作『カラフル』です。
「おめでとうございます! 抽選にあたりました! 」
というなんともうさんくさい天使の手により、
主人公の“ぼく”は再挑戦のチャンスを得る。
お題は自殺を図った中学三年生の身体にホームステイし、
自身の生前の罪を思い出す事。
非常にシンプルでわかりやすいストーリーです。
その為、最初からラストの種明かしがなんとなく察しが点いてしまうという難点も。
そのせいで「つまらない」呼ばわりされたりもするようですが。
本格推理小説ではないですからね。
あくまで冒頭に提示される“謎”は物語のスパイスでしかないのです。
その上で読めば……やっぱり名作ですよ。
子供向けの話と思いきや、それぞれの家族が抱える秘密や悩みは意外と深いものがありますし。
それを難しい言葉や言い回しを使わずさらりと描いてしまうあたりが森絵都さんの凄さ。
冒頭に二つの台詞を抜粋しましたが、漢字とかなの使い分けが絶妙ですよね。ひらがなを多用する事で文章に優しさや柔らかさがにじみ出ている気がします。難しい言葉を使わない分、一つ一つの言葉が持つ意味がシンプルでしかならないので、ごまかしが効かない。逆に読みにくい作者の場合、難しい言葉や言い回しを使いまくって文章に深みがあるように見せかけたりする。そこの違いがすごい。
いや、色々すげーなと思います。
とにかく上手い。
これも結構さらりと読めてしまうので、ぜひ一度お試し下さい。