「赤ちゃんができたらどうする?」
↑こんな引用でごめんなさい。
この作品には語るべき点が沢山あります。
特に有名なのはタイトルのダブルミーニング。「封印再度」と「Who inside」。
これだけでぞくぞくっとしてしまいます。
50年前に密室の中で謎の死を遂げた日本画家・香山風采。残されたのは息子・林水と家宝「天地の瓢(こひょう)」と「無我の匣」だけ。ところが今度は林水も殺されてしまいます。
二つの死と、二つの家宝。
犀川と萌絵が挑む謎です。
ちなみにトリックもなかなか面白いんですよ。本作は「S&Mシリーズ」の5作目となりますが、正直1作目である『すべてがFになる』以来は読み始めてすぐにオチがわかってしまうような小粒な作品が続いていましたが、ようやくおっと思える作品にたどり着いた感があります。
ところが本作には、本来の主題であるトリックが脇に追いやられ、ただのスパイス化してしまう事情があります。
犀川と萌絵のイチャイチャぶりです
これまでの「犀川大好き」な萌絵に対し「素っ気無い対応に終始」する犀川という二人の関係性が、本作で一気に動きを見せるのです。
冒頭の台詞とか、二人のファンであれば発狂しそうなものです。
それ以外にも国枝助手の「ごちそうさま」発言といい、本来の謎の裏側で犀川と萌絵の間にホワイダニットな謎がガンガン出まくります。
男と女のホワイダニット。
それって単なるいちゃいちゃじゃん。
……そんなわけで、本作は最高のタイトルと謎解きにも関わらず、それら全てがただの恋のスパイスと化してしまうという推理小説としては不遇の目に遭っています。S&Mシリーズが好きな方にとっては必読ですね。シリーズ序盤で離脱してしまったという方にも、二人の行く末を確認するためにも一度読んでいただきたいと思います。
もちろん、推理小説としても楽しめる事は保証しますよ。