ひとみの髪の毛が、並んで窓から見ている英治のほっぺたに触れた。どうしてこんなに、と思うほど、やわらかい髪だ
再び宗田理です。
今回読んだのは『ぼくらのC計画』。
ぼくらのシリーズの中では比較的地味な作品に入るかもしれませんが、僕の中では強い印象が残っていましたので、今回手に取りました。
僕に読書の面白さを教えてくれた宗田理については『ぼくらの天使ゲーム』に書きましたのでこちらをどうぞ。
C計画とは
ぼくらのメンバーがマスコミ各社に送った手紙には「環境をクリーンにする計画」とあります。そのために、
まず、人間をクリーンにすることから始めることにしました
とはなんとも彼ららしい理屈です。
その実、以前手に入れた政治家の数々の悪行が書かれている“黒い手帳”を餌に、ぼくらが考えた大人たちを弄んで楽しもうというゲームなのです。
ゲームと妨害
子供たちから怪文書とともに送られてきたクロスワードパズルに対抗するのは、ぼくらのシリーズの準レギュラーこと矢場さん。
多数のマスコミ関係者らとの争奪戦にも遅れを取る事無く、しっかりと第一、第二の謎を解いていきます。
ところが“黒い手帳”を狙うのはマスコミだけではありません。手帳を公開されれば困る連中からも妨害工作が始まり、矢場が襲われ暴行を受ける事態にまで発展します。
一方でぼくらの先輩の父親を騙したDO商会との戦いも始まり、銀鈴荘のさよやルミを誘拐されたりという事件も勃発。
やがてDO商会と矢場を襲ったやつらが同一人物という事実を掴み、最終的には相手を夢の島におびき出し、最終決戦へと挑みます。
夢の島=ゴミの島
最終決戦の場所を夢の島に選んだのも意味深いところです。
本書が発行されたのは1990年。
1978年には東京都立夢の島公園が開園され、物語の中でも既にグラウンドなどが整備された現在に近い姿となっていますが、そのほんの20年前まで夢の島は「ゴミの島」と呼ばれていたのです。
C計画は子どもの遊びでありながら、その実しっかりと社会問題や社会の闇を描き出す作品でもあるのです。これはぼくらのシリーズに共通しているテーマでもありますね。
子どもたちが好き勝手に大人を翻弄するけしからん物語として、一部の学校などでは図書室から撤廃される動きなどもあるようですが、宗田理という著者自身がぼくらという子どもの姿を借りて、大人という社会に対して疑問を投げかける社会派小説なのです。
だからこそぼくらのシリーズは今なお続く人気シリーズとして沢山の支持を集めたのだと思います。
ボス、カマキリ、リス、コアラ初登場
本作には「ぼくらのシリーズ」では珍しく明確な悪役が出てきます。
彼らには名前がなく、恐ろしいボスとその見た目からカマキリ、リス、コアラと呼ばれる三人組で構成されます。
のっぽ、ちび、デブという典型的な三人組キャラですね。
『C計画』を選んだのは彼らが登場するから、と言っても過言ではありません。
実はこの後、シリーズの中でも人気の高い『ぼくらの修学旅行』にも彼らは登場するのです。
『ぼくらの修学旅行』はシリーズ中でも異色作で、読んだ後の衝撃が強めです。子どもの頃はちょっとびっくりしてしまうぐらい、それまでのぼくらのシリーズのお約束を覆す出来事が起こります。
『ぼくらの修学旅行』を読むためには、まず前提としてこの『ぼくらのC計画』を読め、と言うべき作品なんですね。
まぁ、『ぼくらの天使ゲーム』の時にも書きましたが、基本的には子供向けです。できるだけ素直に楽しめる内に、読んでおくことをおすすめします。