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年間100冊前後の読書を楽しんでいます。推理小説・恋愛小説・歴史小説・ビジネス書・ラノベなんでもあり。

『ヒトリシズカ』誉田哲也

なんとも静かな、深夜の住宅街。
その闇間に消えた、一人の少女――。
俺はそのとき、まだ本当の闇の深さというものを、知らずにいたのかもしれない。

誉田哲也です。
警察ものです。
僕のブログやInstagramを見てくれている方の中にはひょっとしたらお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、特に好き嫌いなく何でも本を読むと言っておきながら、実は僕が避けがちなジャンルというのが一つだけあります。
それが警察もの。
僕の読書好きを加速度的に決定づけたのは綾辻行人をはじめとする新本格推理ブーム”というやつで、本格推理小説といえば「密室」「名探偵」という固定概念に縛られていた当時、「本格推理小説のバイブル」的な紹介文が目に入り、たまたま手に取った本が松本清張の『点と線』でした。
読んでみてびっくり。
「密室」「名探偵」も存在しなければ、最初から犯人らしき人物は特定されていて、刑事が足を使って手掛かりを集めて回り、最終的に容疑者のアリバイを看破するという火曜サスペンス劇場そのもののような展開
『点と線』がどれだけ名作で、その後の文壇にどれだけ大きな影響を与えたかなんて知りもせず、考えもしなかった当時、それ以降はいわゆる“社会派推理小説”や“警察もの”は徹底して避け続けたのでした。
現在もなお、その時の名残りが残っていて、なんとなく警察ものの小説は避けてしまう体質になってしまっているのです。

しかしながら本作ヒトリシズカはのっけから交番勤務の巡査部長が主人公を務める“警察もの”だったりします。
にも関わらず本書を選んだのはひとえに誉田哲也だったから」と言えるでしょう。
数々の映像化作品も生み出す人気作家である誉田哲也ですが、作風としては警察を舞台にしたものが多いようです。
ただし、その中で異色とも呼べる作品があるんですね。
それこそが僕の大好きな『武士道シリーズ』!!!

武士道シックスティーン』『武士道セブンティーン』『武士道エイティーン』『武士道ジェネレーション』と続く剣道女子二人を主人公とした青春小説です。
これが僕は大好きで、『武士道シックスティーン』を読み始めたのをきっかけに、翌日にはさっさと『武士道セブンティーン』『武士道エイティーン』を追加で購入して一気読みしてしまったぐらい嵌まった作品でした。
『武士道ジェネレーション』に関してはどうも評判がよろしくないようなので、未読のままだったりするのですが。

 

ともかく『武士道シリーズ』で自分好みの作品を書く作家さんだとは認識していましたので、なんとなく違う本も読んでみようとチャレンジしてみた次第です。
さて、その『ヒトリシズカ』の感想はというと……

 

一人の少女を軸とした6話の連作短編

第一話の『闇一重』は巡査部長の木崎の視点で始まります。
近所で起こった殺人事件の現場に駆け付けると、そこにはすでに先輩の大村の姿が。
事件を追う中で、13歳の伊藤静加という少女の存在が判明します。

続けて第二話『蛍蜘蛛』に移ると、主人公は同じ警察の中でも生活安全課の山岸に代わります。
突如起こった殺人事件の捜査に応援として駆り出される山岸。
捜査を進める中で、被疑者の知人として山岸の行きつけのコンビニエンスストアでアルバイトをする少女が上がってくる。
少女は少し前に、ストーカー被害を訴えに山岸の元を訪ねていたのだ。
彼女の名前は「澤田梢」。
しかし、やがて「澤田梢」は実在しない人物である事が判明する。

……といった具合に物語は進んでいきます。

問題なのは構造があまりにも複雑な事。

一話目と二話目では登場人物はほとんど重なりませんし、発生する事件も別であれば、事件同士のつながりも不明。
そもそも時系列が同時なのか、前後しているのかすらわからないままなのです。

続く第三話『腐屍蝶』では、第一話に登場した静加の父から娘の捜索を依頼された探偵の青木が主人公となります。
青木は静加の遺体にたどり着くものの、どうやらそれは静加とは別人のようだと悟る。
一方、同時に請け負っていた浮気調査で南原という男を追っていたところ、相手に勘づかれて捕まってしまう。
命の危機に晒され、薄れ行く意識の中で青木が最後に見たのは、南原と行動を共にする静加であった。

さらに第四話『罪時雨』では静加の父である伊東が主人公。
いきつけの床屋の店主から、姪が同姓している男から暴力を受けていると相談される。
その姪の子どもこそが、静加だった。

……冷静に見直してみると、第四話は時系列として一番最初のエピソードである事がわかります。
『蛍蜘蛛』の前の話なんですね。

つまり本来は第4話→第1話→第2話→第3話→第5話→第6話という時系列なわけです。
ここでの逆転が、全体を通しての作品通しのつながりや物事の時系列をよりわかりにくくしているように感じます。

第5話では南原宅で銃撃戦が発生。南原を含む5人が死傷したが、その場にいたはずのアキという女性と南原の娘のミオが行方をくらましてしまう。
アキはきっと、伊藤静加であり澤田梢であり……彼女にはいったいどれだけの数の名前があるのでしょう?

そして最終の第6話へと及び、物語は完結に至るわけですが……。


実験的、としか言いようのない作品

……という他ないわけです。
そもそも一体何が書きたいのかが伝わってきません。
伊東静加という少女が幼少から家庭環境に問題を抱えた結果、歪んだ人格が形成されてしまい、人を殺めたり貶めたりする事に一切の躊躇すら覚えない人間が出来上がってしまう。
中学時代に犯した殺人をきっかけに、名を変え、居を変えて点々としながらも他者を傷つけ続ける。
最終話では人道に外れたはずの伊藤静加に、唯一人間の情のようなものが垣間見られたりするわけですが……作者が書きたかったのは悪鬼のような伊藤静加の生きざまなのか、それとも最後に描かれた人としての情なのか。
はたまた時系列や登場人物を入り乱れさせる事で、読者のミスリードを誘うパズル的な手法だったのか。
僕の理解力が乏しいせいかもわかりませんが、本書に関しては誉田哲也の遊び心や探求心が詰まった極めて実験的な作品を言えるのかと思います。

ここしばらく仕事で立て込み、以前書いていた転職活動でも立て込んでしまいまして、すっかり読書どころではなくなってしまっていたのも作品に入り込めなかった一因だったりもします。
本を読むのは昼休みのほんの20~30分程度、という断片的な読書が続いていましたから。
一気通貫で読んでしまえばもう少し頭の中で整理しながら読めたのかもしれませんけど。

それにしても『武士道シリーズ』とはだいぶ趣の違う作品でした。
できれば『武士道シリーズ』的な青春ものも書いて欲しいところなんですけどねー。
次に誉田作品を読むとすれば、『疾風ガール』にでもチャレンジしてみたいと思います。

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#ヒトリシズカ #誉田哲也 読了一人の少女を中心とした全6話の #連作短篇集 とはいえ一話ごとに主人公も違えば事件の相関性もほとんどなく、時系列もバラバラとあって頭の中を整理するのが大変でした。特にここのところずっと一日せいぜい20〜30分しかとれないような断片的な読書が続いていましたので、余計に作中に入り込めず。刑事もの、警察もので有名な誉田哲也ですが、やはり僕的には #武士道シリーズ のような青春ものの方が合うようです。#本 #本好き #本が好き #活字中毒 #読書 #読書好き #本がある暮らし #本のある生活 #読了#どくしょ#読書好きな人と繋がりたい #本好きな人と繋がりたい ..※ブログも更新しました。プロフィールのリンクよりご確認下さい。