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年間100冊前後の読書を楽しんでいます。推理小説・恋愛小説・歴史小説・ビジネス書・ラノベなんでもあり。

『ぼくらの最終戦争』宗田理

つらいこともありました

楽しいこともありました

あっという間に三年過ぎて

すてきな仲間になりました

僕の住んでいる地方では、つい先日公立小・中学校の卒業式が行われました。

今年は梅の花が咲くのも早いし、どことなく春めいていて、いつになく卒業ムードが強く感じられる気がします。

 

そんなわけで、ふと思い出したのが本書『ぼくらの最終戦争』。

ぼくらの七日間戦争』から始まる宗田理のぼくらのシリーズにおいて、ぼくらの仲間たちが中学を卒業するという節目の作品です。

僕のぼくらのシリーズとの出会いについては下記『ぼくらの天使ゲーム』の記事に書きましたので、興味のある方はこちらを先にどうぞ。

 

……で上にも書いた通り、僕がぼくらのシリーズを読むようになったきっかけが、兄が買ってきたこの『ぼくらの最終戦争』だったわけです。

それ以前から子供たちが廃工場に立て籠もり、大人と争い、最後には戦車で街中を走り回るという『ぼくらの七日間戦争』の映画は何度か目にしていましたので、「あの映画に続編がある」というだけで僕にとっては衝撃だったんですよね。

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この「子どもたちだけでとんでもない事をしている」という映画の雰囲気は子供心に惹かれてやまない魅力に溢れていましたし

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ラストは確か、「次は国会議事堂だっ!」なんて飛び上がって終わりでしたから。

もしかして続編あるのかな?

続き見たいな。

なんて常々思っていたのです。

 

そんな僕が、七日間戦争が続編どころかシリーズ作品である知り、本屋にズラリと並んだそれらを目にした時の感激ったらありゃしません。

ぼくらの七日間戦争』の表紙なんて映画そのものでしたし。

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もう「これだこれだっ」ってわくわくしちゃいました。

 

 

終戦争のあらすじ

さて、だいぶ脱線しましたが本筋に戻りまして。

本書『ぼくらの最終戦争』はいつもの河川敷にぼくらが集まるところから始まります。

七日間戦争の舞台となった廃工場が対岸に見え、小説版ラストでは菊池英治が「おーい解放区ぅ、バイバイ!」と手を振ったあの場所。

しかし、あれから二年が経った現在、既に廃工場は取り壊され、代わりにマンションが建築されています。

 

中学三年生の12月、受験を控えたぼくら。沢山の思い出を一緒に残してきた彼らも、それぞれ別々の学校を受けようとしています。シリーズ読者にとっては気がかりとなるひとみも、カトリック系の女学校への進学をあっさりと決めてしまいます。

英治とひとみは、違う高校に通う事が決定的になってしまうんですね。

 

そんな彼らに対し、後輩たちは「卒業式になにかするんですよね?」と期待を膨らませます。受験を目の前にし、内申書という弱みのあるぼくらも最初は「何もしない」と及び腰ですが、やがて「やろうか」に変わり、「やろうぜ」となり、「待ってました」に変化します。これでこそぼくらの仲間たちです。

 

本書で英治たちが企てるのは「教師を全員丸刈りにする」という悪戯。

ルミの父・為朝が出所してきたもののすぐ失踪してしまうという事件も重なり、準レギュラー矢場により背景にはぼくらも過去に関係した事件・団体が見え隠れする事もわかって、誘拐やヤクザとの抗争も絡まり合っての事態へと発展します。

 

本作で一番の活躍を見せるのは瀬川。本書では、解放区以来の戦友である瀬川老人の独白が目につきます。瀬川は卒業を迎えるぼくらの成長に目を細め、一方で自身の身体の衰えも感じつつ、ぼくらとともに敵に向かっていきます。

 

 

ひとみ×英治

正直なところ、本作で繰り広げられる悪戯や戦いに関してはそう目立ったものではありません。シリーズ作品の中でも地味な内に入るのではないでしょうか。

ところが前出の瀬川目線の独白であったり、これまでのシリーズや今後に繋がるエピソードが多いのが特徴です。

 

特に、シリーズ中ずっと気がかりなのが菊池英治と中山ひとみとの関係性。

 

英治がひとみに対して好意を寄せているのは明らかである一方、ひとみの気持ちに関しては読者もまた、英治とともに煙に巻かれ続けてきました。少なからず好意があるように思えますが、かといって告白や恋人といった進展を望んでいるようには思えません。

中学生活も残りわずかとなり、別の高校へと進む事が決まった二人。二人の仲を進めるために残された時間もあと僅か。結局ひとみの気持ちはどこにあるのか。英治は何か行動を起こすのか。

……なんて、当時ハラハラしながら読み進めたのを鮮やかに思い出してしまいます。

 

本書は特にひとみに対する英治の心理描写が多いんですよね。

「ひとみ、好きな人がいるんです」

と西脇先生に告げる純子の言葉にドキッとしてしまったり、自分より先にひとみの進路を本人から聞いていた柿沼に嫉妬したり。

 

でも英治はひとみに直接電話したりしますから、当時の僕にとってはとてもうらやましく思ったのを覚えています。中学生ぐらいだと、同級生の女の子に電話をかけるなんて気軽にはできませんよねぇ。

 

そんな諸々の甘酸っぱい恋の話なんかを、現実の自分に置き換えながら思いを寄せるというのも少年少女が本書の虜になる理由だったりするんでしょうね。

 

本書のラストでは、あの河川敷で、「おーい解放区ぅ、バイバイ!」に代わる言葉を英治が叫びます。

英治君、事ある度に河原で叫ぶから、僕も一時期川に向かって叫びたい衝動に駆られていた時期がありました(笑) 僕の実家の近くの川は荒川ほど広くない上、人口も車通りも格段に少ないので、叫んだりしたら目立って仕方ないんですけどね。

 

英治の叫びは一番最初に引用した「つらいこともありました」の詩と合わせて、頭から離れない名言の一つなのでぜひ引用したいところなのですが、未読で楽しみにしている人がこの記事に触れる事もあるかもしれませんので自重しておきます。

実際、『ぼくらの天使ゲーム』『ぼくらのC計画』の記事は安定してアクセス数のあがる良記事だったりするんですよね。読書感想文目的の中学生あたりが検索したりしてくれるんでしょうか?

だったらなおさら、ネタバレは控えないといけませんね。

 

思い入れもあってついつい長くなってしまいましたが、最後に書いておくとすれば本書『ぼくらの最終戦争』はぼくらのシリーズを追いかけてきたファンにとってはターニングポイントとなる作品ではあるけれど、全く無関係な人が突然手を出すのはおすすめしないという事。

ましてや大の大人が予備知識もなく手を出す作品ではありません。

前出のように悪戯の内容も控えめですし、全体通してやはりご都合主義感は否めません。大人になってから改めて読むと、本書についてはシリーズ中でも余計にその傾向が強く感じられます。なんの思い入れもない大人がたまたま手に取って読んだとしたら、後悔しか生まないかもしれません。

 

ぼくらのシリーズそのものが、大人が手を出すべき本ではないのかもしれませんけどね。

 

でもやっぱり、映画版『ぼくらの七日間戦争』はもう一回見たいなぁ。

 

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#ぼくらの最終戦争 #宗田理 読了つらいこともありました楽しいこともありましたあっという間に三年過ぎてすてきな仲間になりました卒業シーズンに触発されてふと思い出して読んでみました。『ぼくらの七日間戦争』から始まる #ぼくらのシリーズ 中において、ぼくらの仲間たちが中学校の卒業式を迎えるというターニングポイントとなる作品。とはいえ他のシリーズ作品に比べると敵も悪戯も控え目で、むしろ受験や卒業による別れ、瀬川さんの老い、英治とひとみの関係などに重きが置かれているように感じます。シリーズファンはいいけど、そうでなければ取り残されるのは間違いなし。そもそも大人が読むような本でもない。とはいえ夢中になって読んでいた子どもの頃を思い出して妙にセンチメンタルな気持ちになりました。英治に影響されて妙に川原で好きな子の名前を叫びたくなったあの頃(笑)今となっては物足りないけど、僕に読書の楽しさを教えてくれたぼくらの仲間たちに改めて感謝です。#本が好き #活字中毒 #本がある暮らし #本のある生活 #読了 #どくしょ #読書好きな人と繋がりたい #本好きな人と繋がりたい.. ※ブログ更新しました。プロフィールのリンクよりご確認ください。