言い訳を
いちばん必要とするのは
家族です
森浩美『家族の言い訳』を読みました。
ライトノベル系の作品が続いていたので、一般文芸作品は久しぶりですね。
森浩美作品もまた、『夏を拾いに』以来二作目。
上に紹介した『夏を拾いに』は今から約三年前に読んだ作品で、今となっては昭和の匂いが強い和製(縮小版)スタンド・バイ・ミーという印象が残るのみです。
あとはなかなか悪くない作家さんだったな、と。
今回は短編集という事で、どのような持ち味が発揮されるのか、楽しみです。
家族をテーマにした短編集
収められているのは家族をテーマにした全八作。
とはいえいずれもどこかほろ苦く、家族をテーマにしつつも、逆に家族とは何か?を問うようなものとなっています。
『蛍の熱』
心中するためにやってきたはずが、幼い息子が急に発熱し見知らぬ民宿の世話になる母親の話。
『乾いた声でも』
急死した夫の弔いにやってきた同僚から、妻の知らない夫の意外な一面を知らせる。
『星空への寄り道』
会社を畳んだ男が乗り合わせたタクシードライバーとの会話の仲から大事なものを思い出す。
『カレーの匂い』
一人で生きる強い女を自認する主人公の心の葛藤を描く作品。これが一番好き。
『柿の代わり』
元教え子と結婚した高校教師。しかし彼女と関係したという同級生だった男の子から懺悔を受ける。
『おかあちゃんの口紅』
貧乏性の自分の母親に対して嫌悪感を抱く主人公だったが、母親の死に際して考えを改める。
『イブのクレヨン』
幼い頃に母親に捨てられた主人公と、母親が初めて誕生日プレゼントにくれたクレヨンにまつわる話。
『粉雪のキャッチボール』
地方のリゾートホテルの支配人として自ら赴任し、家族とも疎遠になった父が定年を迎えるからと、一人駆け付ける主人公。
以上、ざっくりとしたあらすじですが、どれもなかなか読み応えのある作品ばかりです。
読み終えた後も心がほっこりするというよりは、現実の世知辛さみたいなものを突き付けられるビターな読後感のものが多いように感じますが、だからこそ面白いと言えます。
このところライトノベルばかり読んでいたから余計にそう思うのでしょうか。
実は僕、小説と言うと長編ばかり好んで読んできて、短編はちょっと避けがちだったのです。
推理小説を読んでいた時期が多いせいでしょうか? 本格ミステリ的な作品は、辞書みたいに分厚い超長編の中で大掛かりなトリックを仕掛けるのが定番でしたからね。
短編集ってあまり読書意欲がないときに、ちょっとずつキリ良く読むもの……というネガティブなイメージを持ったりもしていまして。
けど今頃になって、短編の良さに目覚めてきた状態です。
なので今後しばらくは、今度は短編集が続くかもしれません。
それでは。