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『伝えることから始めよう』高田明

 

「伝える」と「伝わる」は違うんです。お客さまに、伝わるべきことがしっかり伝わっていなければ、お客さまの心は動かないと思います。


高田明――名前を聞いただけでピンと来る方は少ないと思います。
ですが「ジャパネットタカタの高田社長」と言えばおわかりいただけるでしょう。

2016年以来は番組MCの座からも退き露出は減っていますが、日本中に知らない人はいないというぐらい、依然として高い知名度を誇っています。

本書『伝えることから始めよう』はそんな高田社長が書いた本、ある意味自叙伝のような一冊となっています。


生い立ちとジャパネットの軌跡

長崎で家業であった写真館を手伝うところから始まります。

観光客向けに撮影した写真を売る仕事です。

団体客に帯同し撮った写真を翌朝の朝食会場に並べて即売する。

そんなところにジャパネットたかたであり、高田社長の話術の原点があります。

店で客を待つのではなく、当時は使い捨てカメラが世に出たばかりという時代背景もあり、自ら建設現場を回って撮影済みのフィルムを集配して回る。そこからフィルムやカメラを買ってもらえるという攻めの姿勢が始まります。

売り上げは伸び、二店舗目三店舗目と順調に店を増やしていく中で出会ったのがラジオショッピング。

ラジオCMを流していたのが縁で番組に出演することになる。

長崎ローカルだけでの放送だったものが西日本の他県にまで広がり、一気に会社は急成長します。

機を逃すことなくタイムリーに放送をお届けする為に、ハウスエージェンシーを設立。

そして遂にテレビショッピングに挑戦します。

急成長のイメージが強いジャパネットたかたですが、実家の写真館に戻ったのが1974年。

テレビショッピングが始まったのが1994年。

なんとここまで足掛け20年もの歳月がかかっているんですね。

我々の想像以上に地道に、コツコツと努力を重ねた結果、成長を続けてきたのです。

2001年には佐世保に自前のスタジオまで建設し、現在のスタイルとなる生放送での番組提供へとつながります。

本書の前半およそ半分は、こうしたジャパネットたかたの軌跡について書かれたものです。


スキルとパッション、そしてミッション

本題となる高田社長の「伝える」という事です。

氏はスキルパッション、そしてミッションが重要である、と言います。

何よりも重要なのはパッション。伝えたいと思う熱い思い。

例えば、お店には店員さんがいますよね。やる気が感じられない人が立っていることもあるでしょ。店員が無愛想だったら売れるわけがないですよ。お客さんが来たら一生懸命に商品を説明する。笑顔で接客するからお客さんは買ってくださる。それと同じです。テレビショッピングでも、視聴者は情熱を持った人が語っているかどうかを見ていると思います。演技でいくら取り繕っても、その人が本当に伝えたい情熱を持っているかどうかは見えてしまうんです。

確かに、高田社長の情熱に溢れるトークは誰しも耳に覚えのあるところです。

そしてミッション。

ミッションとは「何のために伝えるか」ということ。

私は自分が売った商品は必ず、お客さまに感動していただいたり、お客さまの生活を楽しくしたり、便利にしたり、豊かにしたり、ときには人生を変えてしまったりすることもあると信じています。反対に言えば、お客さまに喜んでいただけると確信の持てる商品しか販売してこなかったと断言できます。そういう商品だけを一生懸命に探して選んできました。そして、伝える前に「なぜ、何のために」売りたいのか、「なぜ、何のために」伝えたいのか、ということを徹底的に考えてきました。

だからジャパネットたかたでは機能や性能にはほとんど触れない。

「皆さん、42インチの大画面テレビがリビングに来たら、格好いいでしょう。お宅のリビングが一気に生まれ変わりますよ。素敵なリビングになるんです。それだけではないですよ。大きなテレビがあったら、自分の部屋にこもってゲームをしていたこどもたちがリビングに出てきて、大迫力のサッカーを観たりするようになりますよ。家族のコミュニケーションが変わるんです!」

生活がどんなふうに変わるか、お客さまにとってどんなよいことがあるのかを熱心に説明する。

これこそが高田社長のパッションとミッションに裏打ちされた、スキルであると言えます。

また、皆さんが気になっているこんな点についても述べられています。

声が裏返っているでしょ。うるさいって言われることもあるんですよ。取材を受ければ「どうしてあんな声になるんですか」と訊かれ続けてきました。

答えは簡単です。

伝えたい想いが強いときには、人は声が高くなるものなのではないでしょうか。

声が裏返る程のハイテンションは、パッションの表われなんですね。

信じていただけないかもしれませんけど、普段の私は声は低いですし大きくもありません。テンションも高くないですよ。初めてお会いする方には、「いつもと違いますね」って驚かれたりします。私は答えるんですよ。「あのテンションでずっと生活していたら、私はこの齢まで生きていません」って。

確かに普段からあの調子だったら周囲は大変ですね。

以前僕もNHKの未来塾という番組に出演した高田社長をたまたま観る機会がありました。

www.nhk.or.jp

非常に落ち着いた静かな語り口で、ジャパネットたかたのイメージが強い人にとっては逆に怖さを感じてしまうぐらいでした。


高田社長のこれから

最後の章では、顧客流出情報流出事件や東日本大震災といった事件にも負けずに戦ってきた今のジャパネットたかたが語られています。

売上も利益も落ちる中、敢えて攻めに転じた東京オフィスの開設。背水の陣と原点回帰による業績の回復。

高田社長の経営の中には、我々の常識外の部分も散見されます。

その代表的な一つが、「目標を持たない経営」

ジャパネットたかたの経営を振り返ってみると、「長期的なビジョンを持たない積み上げ経営」だったと思います。「長期計画のない経営」「目標を持たない経営」というテーマで講演したこともあります。計画性はほとんどなかったんです。

じゃあ、どうやって会社を動かしてきたのか。

目標を示さなければ船員は戸惑ってしまい、船は動かない。

実はこの部分が僕にとって、本書を手に取ったきっかけでした。

当時勤めていた会社がM&Aで譲渡されてしまい、経営が別会社の手に渡ってしまったのです。その新会社の経営手法こそが「目標を持たない経営」。

ジャパネットたかたを意識したわけではなかったと思うのですが、環境の変化に戸惑う中で同じような経営手法を打ち出す高田社長の考えを知りたかったのでした。

さて、その答えとは。

とにかく「今」です。今できることに最善を尽くす。そこから、次のステップが見えてくる。最善を尽くす中で次のステップが見えてきたら、スモールステップで次に進む。その繰り返しで成長を続けてきました。目標と呼べるようなものがあったとしたら、それは、とにかく昨日よりも今日、今日よりも明日、今年よりも来年と売上げを伸ばし、成長していくという強い想いでした。

目標を掲げること自体は悪いとは思いませんが、実力とかけ離れた目標を立ててしまうとよいことはありません。プレッシャーになるだけですよ。目標や数字ばかり気を取られ、身の丈に合わないことをしようとしたり、事業のミッションを忘れてしまいます。それでは、事業をやること自体の意味を失ってしまうと思うんです。 

ジャパネットたかたは、創業以来、先にお話しした一度の例外を除き、基本的に数値目標を設定したことがありません。来年の目標は常に「前年を下回らない」ことだけでした。

とにかく「今」を精一杯頑張る事

……正直、よくある話ですね。

残念ながら、取り立ててヒントとなるようなものではありませんでした。

でも個人的な意見を述べると、基本的にこのような経営は強いリーダーシップがあってこその手法だと思います。

または、社長直下の経営陣から末端に至るまで、よっぽど強い結束と意思疎通の仕組みが出来上がっているか。

上に書いた通り、目標が示されない中では船は動きません。どこへ向かっていいかわからない為、身動きが取れなくなってしまうんです。ですので、都度船長なりが「今はこうすべき」と舵をとる必要に迫られます。

前年比だけで経営を続けるのも危険です。

自動的に前年数値=予算になってしまいますから。

予算は外的要因も鑑みた上で組み上げますが、基本的には前年数値を上回る形で組まれる事がほとんどでしょう。

背伸びするわけではありませんが、去年より高い山に登る心づもりで翌年にあたる訳です。

ところがどうでしょう。少なくとも去年と同じ山に登れれば良い、という考え方だとしたら。

きっとほとんどの人間は同じ山に登った事で安心し、満足してしまう事でしょう。

また、「予算は外的要因も鑑みた上」という点も重要です。

前年数値だけを見ていると、事業を取り巻く外的要因を度外視して前年数値に拘る人間も出てきます。

結果的には前年の数値こそが高田社長のおっしゃる「実力とかけ離れた目標」と同じ事になる恐れがあるのです。

前年比のみ、という考え方は個人的には非常に危険に思います。

もちろんジャパネットたかたはその中で成長を続けてきたのですから一概に断じることはできませんが、現在は息子さんに経営権を譲られたジャパネットたかたが、どのように変容していくのか気になるところです。


Jリーグへの参戦 J1昇格の奇跡

本書以後の話ですが、高田社長はジャパネットたかた退任後、2017年に長崎のクラブ「V・ファーレン長崎」の社長に就任しています。

www.nikkei.com

元々ジャパネットはスポンサーとして同チームを応援していたのですが、2016年の2部リーグ(J2)で15位と成績が落ち込み、経営危機が叫ばれた同チームをジャパネット傘下に収め、債権に乗り出しました。

そしてなんと、2017年にはリーグ2位までV字回復を遂げた上、自力でのJ1昇格まで決めてしまったのです。

diamond.jp

生まれ変わったチームはファンやサポーターの復活にも繋がり、チームとしても経営としても大きな盛り上がりを見せているようです。

www.nishinippon.co.jp

 


ジャパネットたかたに関するおすすめの本

一冊、ぜひご紹介したい本があります。

linus.hatenablog.jp

人気ブロガーちきりんさんの本ですが、この中でちきりんさんは持ち前の鋭い観察眼でジャパネットたかたは何を売っているのか?」という文章を載せています。


ここでちょっと考えてみてください。彼らが売っている「価値」とは、何なのでしょう?
それは本当に「家電」なのでしょうか?

ジャパネットたかたが売っているのは「孫のアドバイスという価値」だと思っています。実際の孫は、祖父母の買い物に、毎回つきあってくれたりはしません。自分たちの生活やニーズも、そこまで把握してくれていません。でも、「孫のように、全幅の信頼を寄せられる売り手」を求めている消費者は、たくさんいるのです。

面白いですね。

祖父母が孫と一緒に家電量販店を訪れているイメージだというのです。

タブレットが欲しいという祖父母に孫は大きさや重さを見ながら、二人にどんなタブレットが良いかと問いかけます。

両者の間には、値段に関する会話もありません。なぜなら孫は、祖父母が自分にくれるお小遣いの額や、日々の生活ぶりから判断し、彼らの懐具合をよく理解しているからです。

孫は、祖父母がエクセルやワードを使わないことも知っているし、祖母は庭の花を熱心に育てているので、写真をとって保存できたら喜ぶだろうとも想像しています。

つまり孫は、祖父母のニーズを最初から理解しており、店頭では、残されたいくつかの項目について確認しただけです。

そして何より重要なことは、祖父母には孫に対する全幅の信頼があるということです。細かいことはわからないし、店頭には、孫が勧める商品より1万円以上安い商品もある。それでも孫が「これがいいよ」という商品が、自分たちに一番よいはずだ、と彼らは無条件に信じます。

引用抜粋してみると、なるほど、と思いませんか?

ジャパネットたかたは「孫のアドバイスという価値」を売っているのです。

『マーケット感覚を身につけよう』では上記を一例に、現在の世の中では「選んでもらうという価値」が生まれていると言います。

「本」よりも「本を選ぶセンス」だったり。

非常に興味深い内容ですので、読んでみて下さいね。


■『マーケット感覚を身に着けよう』ちきりん

 

https://www.instagram.com/p/BVCkFubDB8Y/

#伝えることから始めよう #高田明 読了言わずと知れた #ジャパネットたかた の創業者長期目標を持たない経営という点に惹かれて購入したものの、内容はほぼ高田氏の自叙伝と言っていいもの。当初期待した内容とは違ったものの、前身となる株式会社たかたを設立したのが37歳。ラジオショッピングを始めたのは40過ぎ、お馴染みのテレビショッピングに至っては45歳でのスタートだったという。なかなか勇気を与えてくれるエピソードでした。#本 #本好き #本が好き #活字中毒 #読書 #読書好き #本がある暮らし #本のある生活 #読了#どくしょ

『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』森岡毅

USJは「マーケティング」を重視する企業になって劇的に変わったのです。

一時は破綻寸前まで追い込まれたUSJことユニバーサル・スタジオ・ジャパン

現在では東京ディズニーリゾートと人気を二分する程のV時回復を遂げましたが、その立役者と言われるのが著者である森岡毅氏。

P&Gでブランドマネージャー等を務めた後、2010年にUSJに入社。2012年からはCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)に就任し、USJの建て直しに奔走しました。

現在ではマーケティングと言えば森岡毅の名前が出てくる程、日本におけるマーケッターの第一人者としての地位を築いた方です。

本書USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』は、そんな森岡氏が高校生の娘さんからマーケティングについて聞かれたのを期に、マーケティングを知らない人に向けて書かれた、マーケティングの根本を理解してもらうためのわかりやすい本です。

現在ではマネジメントと並び、ビジネスマンにとっては重要なスキルの一つであるマーケティングの入門書として、業務上マーケティングに関わりのある人にも、ない人にも、一度は読んでいただきたいおすすめの本になります。


USJが低迷した原因分析と森岡氏の対策

USJに入社直後、森岡氏はまず集客低迷の原因について調査します。

現場のスタッフから出てくるのは、

  1. 開業翌年から続いた不祥事
  2. 「映画のテーマパーク」というブランドの軸がぶれたせい

という主に二つが原因と言われました。

しかし森岡氏はそうではないと分析します。

  1. 不祥事によって集客が低迷したのではなく、集客が低迷したから不祥事を招いた。
  2. 「映画のテーマパーク」というコンセプトはニッチ過ぎる。

というのです。

そこで、森岡氏は再建へ向けた「ビジネスのドライバー(衝くべき焦点)」を下記三つに絞ります。

 ①ターゲット客層の幅
   →映画にこだわらないブランドの投入
    ファミリーエリアの投入
    客層の地域的な拡大

 ②TVCMの質
   →ブランドイメージを強固にしていく仕掛け
    来場意向調査を元にしたTVCMの改札
    「世界最高をお届けしたい」というブランドキャンペーンの立ち上げ

 ③チケット価格の値上げ
   →日本のテーマパークは世界標準の約半額で安売りされている
    ブランド価値を高め、価格弾力性を最小化

そして本書の題名ともなっているUSJを劇的に変えた、たった一つの考え方」を下記のように表しています。

USJが消費者視点の会社に変わったということが、V字回復の最大の原動力

 

集中ではなく、開放する事の衝撃!

個人的には上記の「①ターゲット客層の幅」という部分にかなり衝撃を受けました。

だって「戦略」という言葉には「選択と集中」とセットというイメージがありますから。

多くの企業は大きくしすぎた会社、広げすぎた事業を「選択と集中」する事で多様化する現代にフィットさせようと試行錯誤しているイメージがあります。

百貨店から専門店化の動き、ですよね。

なんでもかんでも浅く広くやるより、狭く深く転換させることで自社の強みを生かそうという。

ところが森岡氏はむしろ、「集中」ではなく「開放」したんです。

ハリウッド映画の専門店から、アニメやキャラクター、様々なエンターテインメントを揃えたテーマパークへ。

映画好きのマニアから一般的なファミリー層へ。

そうして間口を広げる事で、実際にV字回復を成し遂げてしまったんですから。

本当に頭を殴られたような衝撃を受けました。

「なんでもかんでも集中させれば良いってもんじゃないよ」

と軽く鼻で笑われた気分です。

もちろん「集中」を否定しているわけではなくて、強みを生かしてターゲットを絞り込むのは良いけれど、そもそも経営が成り立たない程絞り過ぎちゃ駄目だよ、という事なんですが。

それってマーケティング初心者が陥りやすい罠らしいです。

自分にも心当たりがあるだけに、大いに反省させられしました。

USJは絞りすぎてしまっていた為、間口を広げる事で利用者を増やし、経営を安定させた。

僕にとってこれは、本当に目から鱗の話でした。


マーケティングの入門書として

実は上記までは第1章に書かれている内容をほんの少しさらっただけに過ぎません。

第1章では実際にUSJで行った内容や考え方、方法を説明しています。

以下の第2章~第9章では、元となった「マーケティングとは」という基本について解説してくれています。

簡単にタイトルだけ抜粋します。

 第2章 日本のほとんどの企業はマーケティングができていない

 第3章 マーケティングの本質とは何か

 第4章 「戦略」を学ぼう

 第5章 マーケティングフレームワークを学ぼう

 第6章 マーケティングが日本を救う

 第7章 私はどうやってマーケターになったのか?

 第8章 マーケターに向いている人、いない人

 第9章 キャリアはどうやって作るのか?

以上9章ですが、これだけ読めば森岡氏の意図する通り、マーケティングの基本については掴めるのではないでしょうか。

以下、エッセンスだけでも抜粋してご紹介します。


マーケティングの本質>

 = 売れる仕組みを作ること
  →消費者と商品の背低を制する(コントロールする)ことで売れるようになる

<コントロールすべき消費者との接点>

 消費者の頭の中、店頭、商品の使用体験

<戦略的思考が起こす2つの大きな変化>

  1. 仕事の成果が抜群に上がる
  2. 説得力が激増する。

<戦略の定義>

 戦略とは目的を達成するために資源(リソース)を配分する「選択」のこと。

 

<戦略が必要な理由>

  1.  達成すべき目的があるから
  2.  資源は常に不足しているから

およそ経営資源は達成したい目的に対し、常に圧倒的に足りないのであって、それは創業時代も今も変わらないチャレンジである

<6大経営資源

 カネ、ヒト、モノ、情報、時間、知的財産

とりあえず全部やろうとすることは、無意味に資源を分散させているだけの「戦略なき愚か者」のすることです

<目的と目標の違い>

 目的:達成すべき使命。戦略思考の中では最上位の概念
 目標:目的を達成するために経営資源を投入する具体的な的

目的はパリ占領、目標はフランス軍

目標は資源集中投下の的であるターゲットを意味する

<戦略用語の基礎知識>

 目的:命題、最上位概念
     →objective
 目標:資源集中投下の具体的な的
     →who(ターゲットは誰か)
 戦略:資源配分の選択
     →what(何を売るのか)
 戦術:実現するための具体的なプラン
     →how(どうやって売るのか)

例)
 目的:嫁さんと仲直り
 目標:嫁さん
 戦略:弱点の甘いものから攻める
 戦術:お土産に豪華なロールケーキを買う

企業にとって「どう戦うか(戦術)」の前に「どこで戦うか(戦略)」を正しく見極めることが何よりも重要

<戦略(Strategy)の4Sチェック>

 Selective(セレクティブ):選択的かどうか
  →やることとやらないことを明確に区別できているか

 Sufficient(サフィシエント):十分かどうか
  →戦略によって投入されることが決まった経営資源
   その戦局での勝利に十分であるかどうか

 Sustainable(サスティナブル):持続可能かどうか
  →立てた戦略が短期ではなく中長期で意地継続できるか

 Synchronized(シンクロナイズド):自社の特徴との整合性は
  →自社の特徴(強みと弱み、あるいは経営資源の特徴)
   を有利に活用できているか

<5C分析(戦況分析の視点)>

 Company(自社の理解)
  →自社の全体戦略、使ううる経営資源、特徴(強み、弱み)

 Consumer(消費者の理解)
  →消費者を量的(数値データ)・質的(深層心理)を理解

 Customer(流通など中間顧客の理解)
  →自社と消費者の間にいる存在

 Competitor(競合他社の理解)
  →ライバル者だけでなく、広義においての競合理解

 Community(ビジネスをとりまく地域社会の理解)
  →外的要因(法律などの規制、世論、税率、景気、為替レート等)

私は成功のカギというものはわからないが、失敗のカギは知っている。それは全ての人を喜ばせようとすることだ

<マーケターに向いている4つの適正>

 1.リーダーシップの強い人
    →人を動かすことで結果を出す統率力

 2.考える力(戦略的思考の素養)が強い人
    →子供の時から要領の良い人

 3.EQ(心の知能)の高い人
    →物事を感覚的に捉えてその真相を洞察する力に長けている。

 4.精神的にタフな人
    →様々な経験から学んで自分を変化させるため


マーケティングについて書かれたおすすめの本

本書の他にもマーケティングに書かれた中で個人的におすすめの本をご紹介します。
一番はコトラーやポーターの専門書を読むのが良いのかもしれませんが、
より入り口に近い本としてどうぞ


■『ドリルを売るには穴を売れ』佐藤義典


本書と並んでマーケティングの入門書として知られる本です。
理論とストーリー仕立ての実践が交互に展開されるので、
非常に読みやすいのが特徴。

USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』森岡毅


本書と同じ著者の本です。
USJの再建についてより深く掘り下げて書かれています。

星野リゾートの教科書』中沢康彦


「教科書通りの経営」を信条とする星野リゾート社長が、
実際に参考にしている戦略やマーケティングのネタ本と実践事例を紹介しています。
より実践的に学ぶためのハブ本としてもおすすめです。

 

https://www.instagram.com/p/BWSH3yeDTXH/

#USJを劇的に変えたたった1つの考え方 #森岡毅 読了オープン当初は今の #レゴランド 並に不評だったはずのUSJがいつの間にか #TDL と肩を並べるレジャー施設になっていたのは気になっていましたが、その根底にマーケティングが作用していたとは全く知りませんでした。本書はマーケティングの入門書としても素晴らしい。また時間をおいて読み返したくなる良書でした。#本 #本好き #本が好き #活字中毒 #読書 #読書好き #本がある暮らし #本のある生活 #読了#どくしょ

『体育座りで空を見上げて』椰月美智子

それにラブレターには、尾崎豊の『I LOVE YOU』の歌詞ばびっちりと書いてあったのだ。これがまたきつかった。

ああ、あるある(笑)なんて括弧付の笑を浮かべてしまった世代の方には一度読んでいただきたい作品です。

主人公和光妙子の中学一年生から三年生までを描いた本書『体育座りで空を見上げて』

青春小説として異色だなぁと思うのは、妙子は三原順子3年B組金八先生でツッパリ女子学生を演じていた時に、小学校6年生だったという時代設定。

今まさに青春真っ盛りの少年少女を描いたというよりは、その昔あった青春時代を思い返して書かれた作品、と言えるかもしれません。

 

アラフォー世代の中二病

我ながら酷い見出しをつけてしまいましたが、ひと言で言えばそんな内容になります。

妙子の三年間は、取り立てて大きな事件があるわけではありません。

日々送る日常の中から、妙子が自分を見つめなおし、自分を語り続ける内容です。

「恐ろしい場所」と聞いていた中学校に進学したものの特に校舎の裏に呼び出されるようなこともなく、テニス部に入りたいはずなのに姉のいる卓球部に入ってしまったり、衣替えになった途端ブラジャーをつけている子がいると噂になったり。

特に主人公は何か行動を起こすわけではありません。

誰かを好きになるわけでもないし、徹底して何かに反抗したりするわけでもない。

優等生でもなく、劣等性でもない。

ごく普通の女の子。

そんな普通の女の子の当時の思いや葛藤を瑞々しいまま物語に抜き出したという点で作者の筆力は卓越したものがあると思います。

ただやはり、共感できる年代に限りがあるのが正直なところ。

同じ年代の方が、作者の体験に共感しながら読むのが一番良いのだと思います。

 

母親へのDV

僕は世代とはズレているので本書に登場する歌手やエピソードにはあまり共感を持てなかったのですが……それにしてもと思うのが主人公である妙子の母親への暴力。

学校では普通の生徒である妙子が、事あるごとに母親に暴力を振るうんですね。

最近、タオルの端を固結びにし、反対側を持ってスナップをきかせ、固結びのところでお母さんのお尻や背中を打つ、という、やられるほうとしてはかなり痛いにもかかわらず、やるほうにしてみれば素手よりもはるかに罪悪感が薄れるという新手の攻撃法を発案したばかりだった。

ちょっとこれは……個人的にはドン引きでした。いろいろグロい描写の小説はありますが、母親に対してこんな酷い事をする中学生はなかなか見られません。

事あるたびに、妙子は母親に暴力を振るいます。

三者面談で母親の口から家庭内暴力の話が出たらどうしようと妙子自身がドキドキするほど、自覚症状があるんです。

当時の時代感のようなものがあるんでしょうか?

キラキラ輝いているばかりが青春じゃないと盛り込んだエピソードかもしれませんが、何よりも読後に尾を引く部分になってしまいました。

妙子と同じ年代の方に感想を聞いてみたいところです。

https://www.instagram.com/p/BV18YlxDjoy/

#体育座りで空を見上げて #椰月美智子 読了積読消化。主人公和光妙子の中学一年から卒業までの三年間を描いた作品。取り立てて変わったギミックがあるわけでもなく、等身大の中学生をリアリティ重視で書いた感じ。中学三年間のあるある集的な。ジュニア小説の作家さんらしく非常に読みやすくてあっという間に読み終えてしまいました。ただ、時折挿入される妙子のお母さんに対する仕打ちがヒドい。ちょっとやり過ぎじゃない?でも中学生女子ってこんなもんなの?今は違うのかな?#本 #本好き #本が好き #活字中毒 #読書 #読書好き #本がある暮らし #本のある生活 #読了#どくしょ

『99%の誘拐』岡嶋二人

数々の名作を排出しながら、今ではもう解散してしまった岡嶋二人さん。

徳山諄一さんと井上夢人さんという二人一組の作家であったというのは周知の事実です。

かの有名なエラリイ・クイーンと同じですね。

基本的には徳山さんがプロットを書き、井上さんが執筆するというスタイルだったと聞いています。

そんな岡嶋二人という作家に対し、「誘拐の岡嶋」という呼び名があった事はご存知でしょうか?

当時人気を博した島田荘司の作品に死体をバラバラに解体するものが多かった事から、「バラバラの島田」という呼び名に対してつけられたものですが。

彼らの作品の中でも特に誘拐を扱ったものに名作が多かった事からつけられた呼び名です。

本作『99%の誘拐』第十回吉川英治文学新人賞受賞作品であり、「誘拐の岡嶋」を代表する作品の一つでもあります。


倒叙推理

新本格推理の旗手としても名高い岡嶋二人さんだけに、探偵や密室といったものを求められる方も多いかとは思いますが、本書は俗に言う倒叙推理です。

あらかじめ犯人が分かった上で、楽しむストーリーというやつですね。

サスペンスもの、と言い換えた方が伝わりやすいかもしれません。

岡嶋二人という作家はとにかく作風が幅広いので、気をつけないと全く意趣違いの作品を手に取る事になりかねません。

直、ブログ最下部に作者の他のおすすめ作品も載せていますが、いずれも『本格推理小説』というやつとは異なるのはご愛嬌という事で。


繰り返される誘拐事件

主人公である生駒慎吾は幼稚園の頃に誘拐されてしまいます。

昭和四十三年九月九日。

父親の生駒洋一郎は当時米国のコープランドという半導体製造会社と提携した日本支店として半導体製造会社イコマ電子を経営していました。

ところがコープランドが欠陥チップに市場に流通させてしまい、イコマ電子も窮地へ。

日本からの撤退を決めるコープランドに対し、社長であった洋一郎は威信をかけて五千万円を用意します。

慎吾が誘拐されたのはまさにその時。

要求された五千万円は海の藻屑と消え、洋一郎は再建を断念し、大手カメラメーカーリカードに吸収合併される道を選びました。

失意の内に洋一郎がこの世を去り、残された手記から慎吾は上記のような経緯を知ります。

慎吾は現在リカードのスタッフの一員。

事件の真相に気づいた慎吾は復讐を決意します。

その復讐劇こそが本書のテーマなのですが、特筆すべきは慎吾がたった一人で復讐を試みるところです。

非常に入り組み、巧妙に仕掛けられた事件の数々。その裏にあるのはパソコンです。


当時のパソコンを取り巻く環境

本書が出版されたのは1988年。

当時はまだインターネットも携帯電話もなく、黎明期と言える時代の中です。

その年の11月にマイクロソフトからMS-DOS Ver4.01が発売になったそうで、Windowsすら登場していません。

スティーブ・ジョブスが追われるようにアップル社を退社した頃。

ファミコンが登場したのが1983年。PCエンジンの登場が1987年。スーパーファミコンが1990年。

まぁとにかく今のスマートフォンと比べてもゴミみたいな性能しかなかった時代です。

そんな時代の中、慎吾はパソコンを使って完全犯罪を試みたのでした。

いや、言い換えましょう。

岡嶋二人はパソコンを使った完全犯罪の小説を書いたのです。

それがどんなに衝撃的だった事か。

今となってみれば、古いテクノロジーの中で四苦八苦する慎吾をどこか傍観者的な気持ちで眺めてしまいます。

今だったらこんな風にできるのにな、もっと簡単になるのにな、なんて思えてしまいます。

ですが当時はパソコンなんてほとんどの民間人は触れた事もないような時代ですから。

とてつもない作品を書いた事は間違いありません。

書き下ろしの段階で本書を手にした人はあまりの先駆的な試みに震えが止まらなかったか、もしくはさっぱり理解ができずにちんぷんかんぷんのまま「ああ、そういうもんなのね」なんて読み終えてしまったか、どちらかでしょう。

 

岡嶋二人のその他のおすすめ

僕が読んだ中で岡嶋二人さんのその他のおすすめをご紹介します。

興味があればこちらもどうぞ。

クラインの壷

岡嶋二人名義最後の作品であり、最高傑作。
バーチャル・リアリティーを駆使した先進的な作品です。
推理小説とは言えないかもしれませんが、非常に読み応えのある作品です。

■そして扉は閉ざされた

ある日突然、男女四人が地下シェルターに閉ざされる。
起きるのは誰が生き残るかのデスゲームではなく、
どうしてこうなったかを探る極限状態での推理。

https://www.instagram.com/p/BV172woDQbb/

#99%の誘拐 #岡嶋二人 読了久しぶりのミステリ。岡嶋二人は嫌いじゃないんだけど、なんかちょっと淡々として盛り上がりに欠けるイメージ。本書はまさにそんな感じ。パソコンを駆使して誘拐からアリバイ作りまで行うアイディアは面白いけど、惜しむらくは前時代的だったかな?書き下ろしてすぐだったらもうちょっと楽しめたかも。#本 #本好き #本が好き #活字中毒 #読書 #読書好き #本がある暮らし #本のある生活 #読了#どくしょ

 

『幸福な食卓』瀬尾まいこ

父さんは今日で、父さんをやめようと思う。

冒頭の衝撃的な告白から始まる本書幸福な食卓第26回吉川英治文学賞新人賞受賞作品。

コミック化、映画化もされた人気作品です。


不幸の塊のような家族

主人公となるのは長女佐和子。

中学校の教師だった父親が教師を辞め、さらに父であることすら辞めると言います。
父は以前自殺をしようとしたこともある。

母親は父が自殺未遂した後、自殺を防げなかったことと父の苦しみを共有できなかった自分を責めて、家を出ています。

残る一人の家族である兄の直は、勉強もスポーツも優秀。怒りも興奮もしないスマートな人間です。しかし、才能を何かに注ぐこともなく、ただそれだけの人間であり続けようとします。

なんとも混沌とした家族です。

佐和子もまた、以前父の自殺未遂現場に居合わせ、血塗れの父や茫然自失とした母の姿がトラウマとして胸に残っています。
露になると決まって体調を崩す。

そんな不幸の塊のような家族ですが、びっくりする程穏やかに、まるで何事も無かったかのように生活をしています。

それぞれがそれぞれの苦しみを理解しつつ、各々がごく普通の生活をしているのです。

父も第二の人生を模索し、離れて暮らす母親も普通です。家族関係は至って良好に見えます。

佐和子には意中の相手すらいます。


幸福とは、不幸とは

物語が大きく動き出すのは後半。

とある事件が佐和子を襲うところから始まります。

湖に小石を投げるように、ちょっとしたきっかけで大きく揺れ動いてしまうのです。

まぁただ、個人的には映画『ペイ・フォワード』のように何の脈略もなく物語に感動を与える為だけに起きる悲劇は嫌いなんですけど。

本作が書こうとしている事を書くためには、仕方なかったのかな?

この作品を貫いているのは「幸福とは」という一貫したテーマです。

色々な問題や悩みを抱えながらも日々平穏に過ごす家庭は幸福といえるのか。

それは見せかけなのか。

実はすごく重たいテーマを扱ってると思うんですが、瀬尾まいこさんの筆致によりどちらかというとほのぼのとしたムードで読む事ができます。

はっとするような言い回しがあるのも面白みの一つ

真剣さえ捨てることができたら、困難は軽減できたのに

だけど、違うんだ。そんな利用は存在しない。最初はみんなありがたがってたけど、だんだん俺がやることが当たり前になってくる。すると、助け合うどころかすごくバランスの悪い職場になるんだ。俺はみんなの何倍も仕事する。みんなはそのうち、何もしなくなってしまう。

同じ年代の奴を動かすのって、心底愛すべきお調子者か、尊敬せざるをえないカリスマ的能力を持つか、本気で強いか、バックに何か付いてるか。じゃなきゃ、無理だって。

「子供はいいなあ」

「どうして?」

「次の日が楽しみになるなんて、大人になるとそうそうないからな」

読んだ後に勧めたくなるような傑作ではないかもしれませんが、地味ながらも共感を集め、良作とされる所以がよくわかります。

https://www.instagram.com/p/BVj9PIjjLAW/

#幸福な食卓 #瀬尾まいこ 読了短編4編が連作となる連作短編集。映画化もされた人気作らしく、Amazonのレビューも良いんですが。四話目の急展開で個人的には興醒めでした。映画 #ペイフォワード にも通じる脈絡のない後々の感動の為だけの悲劇がとにかく苦手。一気に萎えてしまいました。残念。とにかく残念。#本 #本好き #本が好き #活字中毒 #読書 #読書好き #本がある暮らし #本のある生活 #読了#どくしょ

『九月が永遠に続けば』沼田まほかる

 

18歳の息子は突然、消えた

ある日ゴミを捨てに行っただけのはずの息子が、失踪してしまう。
全ての時間がそこから始まります。
本作『九月が永遠に続けば』は第5回ホラーサスペンス大賞を受賞した作品。
沼田まほかるさんが本作でデビューをしたのは56歳の時だそうで、なんとも遅咲きの作家さんです。

ユリゴコロ大藪春彦賞を受賞し、本屋大賞にもノミネートされた事から最近では安定した人気を見せていますが、当初はなかなかヒットに繋がらなかったのだそうとか。

なにせ沼田まほかる湊かなえとともにイヤミスの一人に挙げられています。

イヤミス」といえば読んだ後にイヤな後味が残るミステリー。

本書もまた、そういった趣向の作品です。


入り乱れる人間関係

主人公である佐知子は41歳。8年前に精神科医の夫雄一郎と離婚。
失踪した息子文彦と二人で暮らしていましたが、九月の最終日に通っていた自動車教習所の15歳年下の教官犀田と肉体関係を結びます。
6週間後、文彦が失踪。
さらに翌日の朝刊で、犀田が駅のホームから転落し、電車に轢かれて死んだと知ります。
自ら飛び降りたのか、それとも誰かに突き落とされたのか。
もしかしたら文彦はそのために姿を消したのか。

調べを進める内に、文彦には誰か好きな人がいたことを知る。
「殺してやる」「絶対好きになっちゃだめだ」
それはもしかしたら、雄一郎の再婚相手の連れ子であり、犀田が恋をしていたという冬子ではないか。
雄一郎と会い、相手が冬子である事に確信を抱く佐知子。
しかしその冬子も大量の薬を飲んで自殺。

その他にも雄一郎の現在の嫁である阿沙美、その兄弓男、犀田の同僚である音山、文彦のガールフレンドナズナ、文彦に想いを寄せる同級生のカンザキミチコ、等々沢山の人物が繋がり、混沌と入り乱れる人間関係の中で、絡まりあった糸を解くように事件の全容を解明していきます。

まぁとにかく登場人物が多い上、ごちゃごちゃと結びついている。

これはやはりメモでもとりながら整理に努めないと、物語に振り落とされてしまいます。


卓越した文章力、ただし無理やり感も

沼田まほかるさん、年齢のおかげもあるかもしれないですがとにかく文章力すごいです。
文章だけでもグイグイ読ませる力があります。
一方で、ストーリーはちょっと今ひとつだったのかな、と。
何せ男女の結びつきが恋愛、特に一目ぼれっぽい唐突さで恋愛感情を持つシーンが散見されるんですよね。
上記のように人間関係が本書のキモだったりするために、その関係のベースがちょっと弱いかなぁ、と。
もちろん血の呪縛のように濃い関係性もあるんですけどね。


イヤミス

当然のごとく、後味は悪いです。
後味というか、読み始めてからずっと悪いです。
ドロドロしたへどろの中を一歩ずつ進むような、暗くねっとりとした物語です。
なにせ登場人物ほぼ全員に救いがありません。
基本的に悪い奴と不幸な奴しか出てこないんじゃないかという気にすらなります。
そういえばイヤミスってそういう風潮ありますよね。
登場人物全員嫌な奴か悪い奴。
良い人間はそいつらに嵌められるか、陥れられるか。
もしくは良いと思わせていた奴が実は一番悪い奴でした、みたいな。
正直あんまり好きではありません。
一つの手法としてアリだとは思いますけど、この作者は「イヤミス」みたいな作風にまでなってしまうと、手に取るまでが重くなってしまいます。
一方で有川浩さんみたいに「ベタ甘」「ハッピーエンド」の作者もいらっしゃるので、光と影みたいなものだとも言えますが。
やはりせっかく感情移入して登場人物たちを見守る以上、救いが欲しいと思ってしまいます。

 

『日乃出が走る』中島久枝

傍から見ると、あんたの背中にはとげが生えているみたいだった。あたしに触るな、関わるな。あたしは怒っているんだ。それじゃあ誰も怖くて近寄れない。あんたが自分でみんなを遠ざけていたんだよ


昨今スイーツをテーマにした小説を目にする機会が増えてきたように感じています。

そんな中でも異彩を放つのが『日乃出が走る』

明治の菓子屋を舞台とした作品です。

さらにこちら、第3回ポプラ社小説新人賞で特別賞を受賞した作品でもあります。

ここしばらくポプラ社の賞絡みの読書が続いてきましたが、4作目となるこちらでとりあえずの一区切り。

興味のある方は他の3作についてもご覧になって下さい。

linus.hatenablog.jp

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ひとり娘日乃出の老舗菓子店再建物語

父親の謎の急死により老舗菓子店橘屋は悪の商人善次郎の手に渡り、店を閉めることになります。

形見にしていた掛け軸だけは取り戻そうと橘屋に忍び込むものの、叔父に見つかり、善次郎の下へ引き出されてしまう。

善次郎は日乃出に一つの提案をします。

それは「菓子を作って百日で百両稼げば掛け軸を返す」というものでした。

 

手がかりは幻のお菓子「薄紅」

日乃出は浜風屋という菓子屋に奉公しながら善次郎との約束を果たすべく精進します。

しかしこの浜風屋というのも、大した職人もいない上、日々材料費の捻出にも事欠くような有様。

日乃出の苛立ちは周囲にも伝わり、かえって協力も得られません。

日々の仕事の通してようやく自分が周囲の協力の下で成り立っていると気づき、みんなの協力を得ながら、様々な試行錯誤を繰り返し、失敗と成功を重ねて行きます。

しかしあっという間に日々は過ぎ、約束の百日に迫ろうとします。

やはり鍵を握るのは「薄紅」

あのお菓子を再現できれば……。

もちろん、最後の最後に薄紅の正体は明かされます。

多分皆さんもご存知の“アレ”です。

なるほどなー、と思う反面、“アレ”ってそんなに美味しかったかな? なんて首を捻ったりはしてしまいましたが。

 


ポプラ社小説大賞はやはり小粒!?

正直なところ、あまり文章が進みません。

著者の中島久枝さんはプロのフードライターでもあり、登場するお菓子の描写や歴史は流石のものです。

反面、ストーリーの粗さや軽さは否めないかな……。

上の方にポプラ社新人賞絡みの作品のリンクを載せましたが、それぞれ悪くはないんですけれど、どこか完成度に欠けるというか、また読みたいと思わせるような要素に欠けているんですよね。

本作はその後三巻目まで刊行されているシリーズ作品となっていますので、機会があれば読み進めてみたいところですが。

 

https://www.instagram.com/p/BVV2FHsDWko/

#日乃出が走る #中島久枝 読了まとめ買いしたポプラ社4作の最後。Amazonのレビューは微妙なんですけどね、なかなか面白かったですよ。中島久枝さんは和菓子に関する著書も多いフードライターだけあって菓子の描写が秀逸でした。内容的にも勝海舟や松下村塾、松平慶喜の名や白河の関、函館も登場し、幕末好きならなるほど、と思えるかも。それにしても薄紅の正体が○○○○だったなんて。着想が素晴らしいなと思いました。#本 #本好き #本が好き #活字中毒 #読書 #読書好き #本がある暮らし #本のある生活 #読了#どくしょ