おすすめ読書・書評・感想・ブックレビューブログ

年間100冊前後の読書を楽しんでいます。推理小説・恋愛小説・歴史小説・ビジネス書・ラノベなんでもあり。

『封神演義』安能務

――歴史とは現実に何が起こったかではない。何が起きたか、と人々が信ずることだ―― 『封神演義』を読みました。 読むのはかれこれ十年以上ぶり。 その昔、一度だけ読んだことがありますので一応再読という形になります。 一度だけ読んだというのも、男性の方…

『スロウハイツの神様』辻村深月

漫画の神様と呼ばれる手塚治虫氏の住んでいたところに、彼を慕って若い漫画家が集まり、住み始める。藤子不二雄や、石ノ森章太郎や、赤塚不二夫や、今では信じられないくらい豪華な顔ぶれの漫画家たちが、一つ屋根の下に住んで、そろって漫画を描いていた。…

『人魚の眠る家』東野圭吾

「他の多くの国では、脳死を人の死だと認めています。したがって脳死していると確認された段階で、たとえ心臓が動いていたとしても、すべての治療は打ち切られます。延命治療が施されるのは、臓器の提供を表明した場合のみです。ところが我が国の場合まだそ…

『i(アイ)』西加奈子

「この世界にアイは存在しません。」 西加奈子さんの『i(アイ)』を読みました。 本当は年末年始かけてじっくり『サラバ!』を読んでみたいと思っていたんですが、計画と読みが狂ってしまい、年が明けた今になって『i(アイ)』の方から手をつける事に。 ち…

『絶望ノート』歌野晶午

オイネプギプト様、是永雄一郎を殺してください。 最近妙に『密室殺人ゲーム』の記事へのアクセスが増えていたりするのですが、何かあったのでしょうか? 特に心当たりはないのですが。 linus.hatenablog.jp linus.hatenablog.jp linus.hatenablog.jp ……だか…

『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』七月隆文

「ぼくたちはすれ違ってない。端と端を結んだ輪になって、ひとつにつながっているんだ」 年明け早々にアップした『みかづき』は2018年内から読み始めた本だったので、厳密に言うと本作が今年初めて読んだ本、という事になります。 『ぼくは明日、昨日のきみ…

『みかづき』森絵都

「私、学校教育が太陽だとしたら、塾は月のような存在になると思うんです」 2018年最後の締め括りとして選んだのは、森絵都さんの『みかづき』でした。 2017年本屋大賞では『蜜蜂と遠雷』に次ぐ二位にランクイン。 www.kinokuniya.co.jp 更に来春からはNHKで…

『崩れる脳を抱きしめて』知念実希人

ダイヤの鳥籠に入った小鳥と、大空を自由に飛べる小鳥、どっちの方が幸せだと思う? 『崩れる脳を抱きしめて』を読みました。 こちらも先日読んだ『星の子』と同じ第15回2018年本屋大賞ノミネート作品で、その時大賞を受賞したのは辻村深月さんの『かがみの…

『星の子』今村夏子

その日、帰宅してから、父は早速落合さんのまねをしはじめた。寝る直前まで頭の上に水に浸したタオルをのせて、夕飯を食べたりテレビを観たりした。翌朝は「落合さんのおっしゃったとおりだ。羽根が生えたみたいに体が軽いぞお」といい、母にも実践するよう…

『チーム・バチスタの栄光』海堂尊

バチスタ手術は、学術的な正式名称を「左心室縮小形成術」という。一般的には正式名称よりも、創始者R・バチスタ博士の名を冠した俗称の方が通りがよい。拡張型心筋症に対する手術術式の一つである。 『チーム・バチスタの栄光』を読みました。 第4回『この…

『屍人荘の殺人』今村昌弘

「国名シリーズはクイーン。館シリーズは綾辻行人。では火葬シリーズは?」 最初にこういう薀蓄を小説内に入れ始めたのは誰だったんでしょうね? もちろん昔の文豪たちの小説にはそれこそ西洋の王道と呼ばれるような文学作品の名前が度々登場したりしていま…

『ファーストラヴ』島本理生

「正直に言えば、私、嘘つきなんです。自分に都合が悪いことがあると、頭がぼうっとなって、意識が飛んだり、嘘ついたりしてしまうことがあって。だから、そのときもとっさに自分が殺したことを隠そうとしたんだと……」 第159回直木賞受賞作『ファーストラブ…

『マスカレード・ホテル』東野圭吾

「ルールはお客様が決めるものです。昔のプロ野球に、自分がルールブックだと宣言した審判がいたそうですが、まさにそれです。お客様がルールブックなのです。だからお客様がルール違反を犯すことなどありえないし、私たちはそのルールに従わなければなりま…

『死のロングウォーク』スティーブン・キング

「死ぬってどんなものか、わかってるつもりだ」ピアソンがだしぬけにいった。「どっちにしろ、今はわかった。死そのものは、まだ理解できてない。だが死ぬことはわかった。歩くのをやめれば、一巻の終わりだ」 翻訳書が当ブログに登場するのは珍しいですね。…

『夏のバスプール』畑野智美

真っ赤に熟したトマトが飛んできて、僕の右肩に直撃する。 畑野智美『夏のバスプール』を読みました。 第23回小説すばる新人賞を受賞したデビュー作、『国道沿いのファミレス』に続く二作目。 僕にとっての畑野作品に触れるのも、『国道沿いのファミレス』に…

『星やどりの声』朝井リョウ

雨から身を守ることを雨宿りっていうだろう。ここは満天の星が落ちてこないようにする「星やどり」だ。 2018年も12月に入りましたねー。 毎年今ぐらいの時期に入ると、「今年はあと何冊読めるかな?」なんて考えてしまいます。 同時に考えてしまうのが間違い…

『天皇の料理番』杉森久英

「ものを食うのは、せんじつめてゆくと、口や舌でなく、魂が食うのだ。口や舌はごまかせても、魂はごまかせない。真心のこもった食べ物は、だから何ともいえぬ味がある」 今回読んだのは杉森久英の『天皇の料理番』。 集英社文庫版で上下巻の二冊組です。 少…

『密室殺人ゲーム・マニアックス』歌野晶午

「ただし、ここにいる四人は真相解明を放棄したわけだけど、そっちいるおたくたちは意思表示をしていませんよね。ワタクシのアリバイ崩しに興味がありますか? 傍観するだけでは物足りませんか? それではどうぞ、かかってらっしゃい。」 第10回本格ミステリ…

『本のエンドロール』安藤祐介

「印刷会社は……豊澄印刷は、メーカーなんです」 最近年のせいか、涙もろくなってきたんですかねぇ。 常々「本を読んで泣く事はない」と公言しているのですが、先日読んだ『東京タワー オカンとボクと、 時々、オトン』に続き、本作は胸にぐっと迫るものがあ…

『空飛ぶタイヤ』池井戸潤

「その事故で、トラックを運転していたドライバーは両脚切断の大怪我を負った。カーブでタイヤが外れたそうだ。そんなにタイヤってのは外れるものかな、沢田さんよ。お宅のタイヤは空でも飛ぶのか」 現在放送中の『下町ロケット』が好評な池井戸作品から、『…

『容疑者Xの献身』東野圭吾

「最後に石神と会ったとき、彼から数学の問題を出された。N≠NP問題というものだ。自分で考えて答えを出すのと、他人から聞いた答えが正しいかどうか確かめるのとは、どちらが簡単か――有名な難問だ」 今更感もあるかもしれませんが、今回読んだのは東野圭吾の…

『ネバーランド』恩田陸

「お互い自分の身を守れるように一つだけルールを考えたから、それに従ってもらえないかな」 「ルール?」 統が素早く反応した。 「うん、一つだけ嘘を混ぜてほしいんだ」 冬休みに帰省せず寮に残る事を決めた四人の男子高校生。 迎えたイブの夜、彼らだけの…

『知ろうとすること。』早野龍五・糸井重里

よく思うのです。事実はひとつしかありません。事実はひとつしかないけれど、その事実をどう見るのか、どう読むのかについては幾通りもの視点があります。 今回はまた、先日読んだ『はじめての福島学』に続き東日本大震災・原発事故関連書籍となります。 lin…

『イン・ザ・プール』奥田英朗

「言っとくけど、聞かないから」伊良部が言った。 「はい?」 「ストレスの原因を探るとか、それを排除する工夫を練るとか、そういうの、ぼくはやんないから」 「はあ」 実は、初の奥田英朗作品です。 常々名前を目にする機会は少なくなかったはずなのですが…

『はじめての福島学』開沼博

「福島を応援したい」「福島の農業の今後が心配だ」「福島をどうしたらいいんですか」 こういう問いを福島の外に暮らす人から何度も投げかけられてきました。 本書はそういう問いに対して、「とりあえず、このぐらいは知っておいてもらいたい」ということを…

『小さな建設業の脱!どんぶり勘定』服部正雄

会社は、赤字では倒産しません。お金が不足したときに倒産するのです。 服部正雄著『小さな建設業の脱!どんぶり勘定』。 アマゾンの中小企業経営部門においてランクインしていた事から、最近続いている事業承継・企業再生に関連するものとしてチョイスした本…

『東京タワー オカンとボクと、 時々、オトン』リリー・フランキー

鏡に映った東京タワーを見ながら微笑んでいるオカン。窓から直接それを見ているオトン。そして、そのふたりと、ふたつの東京タワーを一緒に見ているボク。 なぜか、ボクたちは今、ここにいる。バラバラに暮らした三人が、まるで東京タワーに引き寄せられたか…

『会社再生ガール』田中伸治

私の代で、こんな、こんな……もしあの宿がこのまま潰れてしまうようなことがあれば…… 先日読んだ『2代目はどこで失敗するか』の時にも書きましたが、最近はちょっと“事業承継”や中小零細企業に向けた“事業再生”的なものに興味を持って色々と勉強したりしてい…

『硫黄島に死す』城山三郎

玉砕するばかりが軍人の本分じゃない。お父さんは無駄死にしない。生きられるものなら、どこまでも生きていく。 僕が好んで読む城山三郎作品の中において、『官僚たちの夏』と並ぶ代表作がこの『硫黄城に死す』。 城山三郎好きを公言しながらも、お恥ずかし…

『2代目はどこで失敗するか』高橋幹

別に2代目を嫌う必要はないのです。2代目でござる、2代目は楽でござる、2代目は裕福でござる、それでいいじゃないかと思っています。 久しぶりのビジネス書です。 昨今、巷で話題となっているのが事業承継。 特に中小企業においては跡継ぎがおらず、後継者不…